2011-06-06

年に一度の「歓喜天」特別開扉『常光寺』@奈良市押熊

年に一度の「歓喜天」特別開扉『常光寺』@奈良市押熊

奈良市押熊にある『常光寺』で、6月6日のみ特別開扉となる「歓喜天像」を拝見してきました。頭部が「象(ガネーシャ)」、男性神と女性神が抱き合ったお姿の仏さまで、素朴な美しさがありました。その他にも、素晴らしい仏さまが多数いらっしゃって、濃密な仏像空間になっていました!


6月6日は「歓喜天特別開扉」が催されます

奈良市押熊にある『常光寺』(山号:篠尾山)。一般的にはあまり有名なお寺ではありませんが、「毎年6月6日に歓喜天像のご開帳がある」と、ディープな仏像ファンの方からTwitterで教えていただいたため、お詣りさせていただきました。

常光寺の場所は、奈良大学に近く、ならやま大通りから押熊町の52号線へ入ります(細いのに路線バスが通ります!)。道幅は細めなので、運転に自信がない方はバスを利用した方が無難でしょう。

なお、常光寺で「歓喜天特別開扉」が行われる6月6日は、比較的近い位置にある、秋篠寺・大元帥明王像(6月6日のみ)、唐招提寺・鑑真和上像(6月5日・6日・7日)の公開日にもなっているため、仏像好きな方はこの日に各お寺を回ってみるといいでしょう。


常光寺(特別公開)@奈良市-01

奈良市押熊にある『常光寺』(山号:篠尾山)。観光寺院ではありませんし、細い道を進んだ先にあるやや行きづらい立地のため、それほど有名ではないでしょう。毎年6月6日は「歓喜天特別開扉」が催され、道路に沿って赤い「南無大聖歓喜天」ののぼりが立ちます

常光寺(特別公開)@奈良市-02
6月6日の歓喜天像の特別開扉の内容。仏像ファンには有名のようで、他府県ナンバーの車が何台も参拝に来ていました。この日は、比較的近い距離にある、秋篠寺・大元帥明王像、唐招提寺・鑑真和上像の公開日とも重なっているため、合わせてお参りするといいでしょう


静かな庵や「隠れ寺」の風情があります

常光寺は、明治時代の廃仏毀釈の折に廃寺となり、多くの建造物や寺宝が散逸してしまったそうです(一時は私学の学舎だったとか)。しかし、お堂の裏手には大きめの池があったり、決して小さなお寺ではありません。

お庭もちゃんと手入れされていて、お寺というよりは、まるで静かな庵のような、または「隠れ寺」といった雰囲気でした。


常光寺(特別公開)@奈良市-03

常光寺の境内。山門をくぐったところです。明治時代の廃仏毀釈の折に廃寺となり、建造物や寺宝も散逸してしまったのだとか。その際に、このお堂などは私学・常光寺学舎(現在の平城小学校の前身)となっていたのだそうです

常光寺(特別公開)@奈良市-04
常光寺の手水

常光寺(特別公開)@奈良市-06
壁の前には、陶器製の象が並んでいました

常光寺(特別公開)@奈良市-07
向かって左手が仏さまをお祀りしている部分になります。座敷のような作りで、その奥に仏堂が設けられていました。向かって右手の和室では、寺宝の掛け軸などが展示されていました。お庭庫裡は元禄年間の建立とのこと

常光寺(特別公開)@奈良市-08
それほど広くはありませんが、お庭もきれいに手入れされていて美しかったです


小さなお堂に宝山湛海作の美仏がズラリ!

諸仏が祀られている小さなお堂(6畳ほどの広さです)は、正面にご本尊の「大聖不動明王三尊像(県指定文化財)」が、そして壁面に沿って素晴らしい仏さまたちがズラリと並んでいました。お堂の中心部には、小さな厨子入りの、この日特別開扉された「大聖歓喜双身天尊像及厨子(県指定文化財)」が。ご住職の説明を伺いながら、じっくりと拝見できました。

とても仏像濃度が高めの空間でしたので、私がメモしたポイントだけ箇条書きにしておきます。


●常光寺には、「生駒の聖天さん」として歓喜天像を祀ることで知られる「宝山寺」を17世紀に中興した宝山湛海(湛海律師)作の像が遺されています。ご本尊の不動明王三尊像、秘仏の歓喜天像、西大寺の方に似た雰囲気の愛染明王像、美しい鬼子母神像などが宝山湛海の作品です

●湛海律師作の歓喜天像(正式には「大聖歓喜双身天尊像及厨子」)は、高さ30cmほど。お堂の中央の小さなお厨子に入っています。もちろん頭部は「象(ガネーシャ)」で、左向きの女性神と、右向きの男性神がしっかりと抱き合った形に描かれています。女性神が男性神の足を踏みつけていたり、ちょっとユニークですね。お供物も、大根・油の揚げ菓子・お酒など、歓喜天さまならではでした。

●ご本尊の「大聖不動明王三尊像(県指定文化財)」も、湛海律師の作。とても凛々しくて力強く、そして美しい仏さまです。たれ目の矜羯羅童子(こんがらどうじ)像の表情が可愛いかったです。

●その他にも、珍しい半伽の毘沙門天像(伝運慶作!)、色鮮やかな弁財天像、横座りの普賢菩薩像(延命菩薩)、大黒天像、弥勒菩薩、、十一面観音像などがいらっしゃいます。奈良の仏さまとしてはそれほど古いものではありませんが、いずれも非常に美しい方々でした。

●小さな厨子入りの「摩利支天(まりしてん)像」も。猪に乗った6臂(腕が6本)の小像で、とても愛らしいお姿でした。摩利支天とは、陽炎(かげろう)を神格化したもので、常に太陽に対して真っ直ぐ突き進むとされています。その隣には、同じく小さなお厨子に入った狐に乗った「荼枳尼天(だきにてん)」も。いずれの像も、奈良でお会いできるのは珍しいでしょう。

●横の広間では曼荼羅絵が2幅、お軸が10幅ほど飾られていました。珍しい荼吉尼天や春日赤童子、五大力明王など、この品々を拝見するだけでも価値があると思います。

●廊下には、みうらじゅん氏のサインが2枚飾られていました。仏像好きなみうらさんのお気に入りのお寺さんなのだそうです。


なお、寺務が立て込んでいない時であれば、お堂にお詣りさせていただけます(必ず事前に電話確認してください)。歓喜天像にお会いできるのは6月6日のみですが、仏像好きな方はぜひお参りしてみてください。


常光寺(特別公開)@奈良市-09

常光寺でいただいたパンフレットより。向かって右手が、ご本尊の「大聖不動明王三尊像(県指定文化財)」。中央の閉じられたお厨子が「大聖歓喜双身天尊像及厨子(県指定文化財)」、左手が堂々とした「鬼子母神像」。いずれも江戸時代に多数の造像を行った僧・宝山湛海作です

常光寺(特別公開)@奈良市-10
常光寺のお堂の脇には、広々とした池がありました

常光寺(特別公開)@奈良市-12
一緒にお詣りに行った知人が、ダルマ型のおみくじを引いていました

常光寺-ご朱印
常光寺でいただいたご朱印です。「大聖歓喜天尊」の文字と、そこに重ねて押してある大根の印がいいですね!さらに、ご朱印代は「100円」をお納めすれば良いとのこと(大多数のお寺さんは300円)。ちょっと嬉しいですね!



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■常光寺

HP: なし
住所: 奈良県奈良市押熊町212
電話: 0742-45-3272
宗派: 真言宗
本尊: 不動明王
創建: 不明(延宝元年(1673年)?)
開基: 不明
拝観料: 300円
拝観時間: 9:30 - 4:30
駐車場: 無料(少なめです)
アクセス: 近鉄「西大寺駅」より、バスで15分

※「歓喜天特別開扉」は毎年6月6日に行われます。
※通常時の拝観は要事前予約。寺務が立て込んでいなければ対応していただけるそうです(ただし、歓喜天さまにはお会いできません)。






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