2008-01-28

『飛鳥寺』へ飛鳥大仏に会いに行く

飛鳥寺

奈良県明日香村は、有名な古刹が点在する地域ですが、その中でも最も広く知られているのは、間違いなく『飛鳥寺』でしょう。「飛鳥寺が有名」というよりも、ここのご本尊「釈迦如来像(通称:飛鳥大仏)」が有名ですね。

これまでにも何度かお邪魔していますが、そのたびに飛鳥大仏の素朴な魅力に惹かれています。正直なところ、飛鳥大仏以外は見どころが少ない小さなお寺なのですが、のどかな畑ばかりの今の風景に、全盛期の大伽藍の姿を思い浮かべたりすると、そのギャップの大きさが面白かったりします。


過去の大伽藍の面影も無く・・・

飛鳥寺は、蘇我馬子が596年に創立した蘇我氏の氏寺で、日本最古のお寺とされています。「法興寺」「元興寺(がんごうじ)」「安居院(あんごいん)」などの呼び名もあり、平城遷都の際に奈良に移され、奈良市の南都七大寺の1つにも数えられる、世界遺産の「元興寺」になりました。

全盛期には、中心に五重塔と3棟の金堂が建ち、その周囲をグルリと回廊が取り囲む、とても壮大な大伽藍だったそうです。しかし次第に衰退し、今では本堂といくつかの遺物を残すのみ。明日香村には「昔はすごい大寺院だった」系のお寺も数ありますが、その代表的なものかもしれません。

飛鳥寺-門
飛鳥寺の正面の門。蘇我氏の氏寺として、過去には大伽藍を誇った時代もあったそうですが、今はほとんど講堂のみのこじんまりとした陣容になっています

飛鳥寺-発掘画像
昭和30年代に行われた発掘調査時の空撮。今もなかなかの田舎ですが、それに輪を掛けてすごいことになってますね

飛鳥寺-金堂の礎石
講堂前にある、過去の「金堂」の礎石。過去の見事な姿が想像できますね


間近に感じられる「飛鳥大仏」

そして、飛鳥寺のご本尊で、日本でも有数の有名な仏像が「飛鳥大仏」です。こちらは、飛鳥時代に活躍した帰化人の「鞍作止利(くらつくりのとり。または止利仏師とも)」の作。法隆寺金堂の「釈迦三尊像」も作った仏師として知られています。アーモンド形(杏仁形)の目が特徴的な、代表的な飛鳥仏ですね。

二度にわたる火災にあい、一時は野ざらし状態にされていた(!)という歴史があるため、仏像は後補の部分がほとんどで、開眼当時のものは頭部の上半分・左耳・指の一部のみしか残されていません。このため、国宝にも指定されていません。そう考えると、逆説的な言い方ですが、法隆寺というお寺の偉大さが実感されるようにも思えます。

この飛鳥大仏は、西暦605年に日本最古の金銅丈六釈迦如来像として発願され、609年に開眼されました。このため、2008年は「飛鳥大仏開眼1400年」の節目の年になるのだそうです。ちなみに、東大寺の奈良の大仏の開眼が752年ですので、1世紀半近くも年上なんですね。

そんな歴史的な背景を考えなくとも、飛鳥大仏は何度見ても素晴しい飛鳥仏です。頬の部分などに修復の跡が見えたりしますし、光背も脇仏も残されていません。しかし、飛鳥仏独特のアーモンド形の目は、仏様が人を超えた存在であることが実感できるようにも思えますし、比較的シンプルな作りであるため、人に近い存在であるような気もしてきます。国宝に指定されていないだけに、仏像との距離も近く、本当に手を伸ばせば触れられそうな距離でじっくりと観賞できるのもいいんですよね。

飛鳥寺-飛鳥大仏1
本堂の「釈迦如来像」。通称の「飛鳥大仏」といった方が分かりやすいでしょう。7世紀初頭の仏師「鞍作鳥」の作と言われていますが、その大部分が火災などで焼け落ちているため、当初から残っている部分はほんの一部なのだそうです

飛鳥寺-飛鳥大仏2
飛鳥大仏。アーモンド形の目が、飛鳥の仏さまの特徴です。頬の辺りには修復の跡が生々しく残っています

飛鳥寺-飛鳥大仏3
飛鳥大仏。携帯電話のカメラで撮影したら、偶然見やすい一枚が撮れました

飛鳥寺-復元図
仏像前にある、開眼当初の姿を表した図。見事な光背と脇侍2体があったそうです。ちなみに、脇侍は仏座に曲がったパイプ状のものを指して、そこから持ち上げられていたのだそうです


「写真撮影OK」なのも嬉しい!

また、飛鳥寺は、奈良の観光化されたお寺の中では数少ない「写真撮影OK」のお寺です。お寺経営の面から考えると、絵葉書などの販売も大きな収入源となっているはずです。写真撮影を許可してしまえばこの売上げは明らかに落ちると思われますので、このシステムはお寺側からすれば勇気がいることなのかもしれません。「仏像を撮影するなんて、信仰心の無いもののすることだ!」という意見もあるのかもしれませんし。

でも、私などはこうして美しい飛鳥大仏の写真が手元に残っていることで、(信仰心はともあれ)より仏様を身近に感じていますし、何度もその姿を眺めているうちにもっともっと好きになっていくものです。お寺を周っているうちに「あれ?あそこの仏さんはどんな姿だっけ?」と忘れてしまうことも多いのですが、画像が残っていないと「もう一度会いに行きたい!」という気にもなれなかったりするのです。

さらに、こうしてわざわざ長文を書いて飛鳥大仏の魅力を多くの方に伝えようとしているのも、大仏さま自体の魅力だけではなく、手元に紹介できるだけの画像が残されているという点も大きいんですよね。大袈裟な言い方をすれば「せっかく写真を撮らせてくらたんだから、ブロガーの端くれとして少しでも営業に貢献したい!」という思いすらありますから(笑)

・・・ということですので、皆さん、ぜひ飛鳥大仏さんへ会いに行ってあげてください!


蘇我入鹿の「首塚」の周りは・・・

また、飛鳥寺へ行った際には、すぐ近くにある蘇我入鹿の「首塚」も(一応)見ておくといいかもしれません。飛鳥寺は元々、蘇我氏の氏寺ですし、大化の改新の以前には、目の前にある「甘樫丘」に大邸宅を構えていたそうです。そんなことを考えながら畑の真ん中にポツリとある首塚を見てみると、何やら凄みがあるような、淋しいような・・・。

正直なところ、それ単体では全く面白味の無いものなんですが、古代史のロマンを感じてみるのも楽しいかもしれませんね。

飛鳥寺-蘇我入鹿の首塚
蘇我入鹿の「首塚」。入鹿の首は斬首された後にフラフラと飛んできて、ここでついに力尽きたのだとか。正面に見える丘が、大化の改新の舞台ともなった「甘樫丘」です

飛鳥寺-首塚から飛鳥寺を
首塚から飛鳥寺を眺めたところ。今は周りは全て畑になっていますが、ここもあそこも、昔は飛鳥寺の敷地内。そう考えると、ここで採れるのは贅沢な野菜ですよね(笑)

飛鳥寺-ご朱印画像
飛鳥寺でいただいたご朱印です。シンプルなんですがかなりカッコイイですね!「大仏」とか「寺」の部分の処理とか、いい味を出してます


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■画像の一覧は【Flickr】でどうぞ。



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■飛鳥寺(安居院・法興寺・元興寺など)

HP: なし
住所: 奈良県高市郡明日香村飛鳥682
電話: 0744-54-3091
宗派: 真言宗豊山派
本尊: 釈迦如来像(通称:飛鳥大仏)(重要文化財)
創建: 596年
開基: 蘇我馬子
拝観料: 境内は無料。本堂は300円
拝観時間: 9:00 - 17:15(10-3月は16:45まで)
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄「橿原神宮駅」より、岡寺前行バス「飛鳥大仏」下車

※「新西国霊場」の第9番札所






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