倒壊寸前!?荒れたお寺「称念寺」がスゴイ!
順番は前後してしまいますが、今井町へ行くたびに毎回もっとも衝撃を受けてしまうのが、この『称念寺』です。
私たちは、普段からそこら中のお寺巡りをしている人間ですが、この称念寺ほど荒れたお寺は他に見たことがありません。まるで小説「羅生門」に登場しそうな・・・というと明らかに大げさですが、21世紀の日本で、しかも観光地のド真ん中ではなかなかお目にかかれない光景だと思います。
しかも、ただ単に寂れているだけではなく、元々はとても由緒正しいお寺であることが見て取れるだけに、余計に物悲しい雰囲気があるんですよね。
(※今井町を歩いた記録その1「古い街並みが残る「今井町」散策」、その3「今井町散策の〆は『町屋茶屋 古伊』へ」も合わせてお読みください)
今井町はここの寺内町でした
江戸時代には「大和の金は今井に七分」と言われるほどに栄えた今井町も、元々はこの称念寺の寺内町でした。一時は大阪の堺と並ぶほどの自治都市として栄えて今井町の中心だったのですから、その歴史はとても華やかなものだったそうです。
重要文化財に指定されている「本堂」は、後に大規模な改修などがあったものの、初期の浄土真宗の建築様式をよく残している貴重な建物です。隣接する住居部分には、「丸に三つ葉葵」という徳川家の御紋を印してあり、こんなことが許されたのはごく一部の寺院のみなのだそうです。
また、過去には明治天皇がここに立ち寄られており、それを示す石碑も建てられています。建築物や歴史を見ていくと、その歴史の重さがヒシヒシと感じられるでしょう。
今井町の中心部にある「称念寺」。元々、今井町はこの称念寺の寺内町として栄えた町でしたので、まさに今井町の中心的な存在であることは間違いありません
称念寺の本堂。過去の栄華が偲ばれる・・・というと大げさですが、さすがは今井町の中心だけあって、かなりの意匠と規模です。入母屋造、本瓦葺の江戸時代初期頃の建築です
本堂脇にある住居部分。過去には明治天皇が立ち寄られたこともあり、それを示す石碑が建てられています。ちなみに、その際に西郷隆盛が挙兵(西南戦争)の一報が届き、急いで後にされたのだとか
建物の屋根部分には「丸に三つ葉葵」の御紋が!言うまでも無く徳川家のもので、これを刻むことを許された寺社は数少ないのだそうです
見事な龍の彫り物。今の荒れた姿からは想像しにくいですが、過去の威容が伺えますね
称念寺本堂前の灯籠の龍。これもかなりの造形で、相当カッコイイんです!
称念寺の表門と、その脇には「太鼓楼」が。それほど広いワケではありませんが、どの建物もいいんです。ちなみに門は明治天皇が立ち寄られた際に談山神社から移築されたものだそうです
荒れた称念寺の現状は・・・
ところが・・・、現在の称念寺はかなりの荒れたお寺となってしまっています。実際に目の前に立ってみると、崩壊寸前という表現が相応しいほどの荒れ方で、そこら中につっかい棒などがしてある有り様なのです。
門のところには2006年の朝日新聞の記事が貼ってありましたので、それを要約してみると、、、、、
修復費用は20億円前後と見積もられたが、戦後の農地解放で田畑を手放した称念寺にはその資金は無い。2002年に重文指定を受け補助金はあるが、それでも修復には1億円以上の負担が発生。檀家の積み立てだけではどうにもならず、昭和8年の絵葉書(8枚組:500円)を復刻して販売することで修繕費を捻出しようとしている。2011年に修理を行う予定。
絵葉書には、往年の称念寺の姿が残されており、それと今の姿を比較してみるのもいいのかもしれませんね。ぜひ絵葉書を購入して協力してあげたい(そして絵葉書と現在の姿を対比してここに掲載したい!)と思ったのですが・・・、お寺にはひと気が無いし、どこに絵葉書が売っているのかもよく分からないし・・・。結局、そのままスルーしてきちゃいました。
本当にこんな立派なお寺はぜひ復興して欲しいと思いますし、その前に(動機は不純かもしれませんが)今の荒れた姿もぜひ見ておいて欲しいと思います。拝観料が取られたりするワケでもありませんので、その分はぜひ絵葉書を買ってあげてください!
称念寺を門の外から見たところ。かなりの大きさの本堂なんですが、屋根を支えるつっかえ棒のようなものが見えます・・・
2006年10月31日の朝日新聞の記事が貼られていました。何と修繕費は20億円(!)で、重要文化財のため修繕に補助金は出るものの、明らかに不足しているそうです。そこで絵葉書を修復費に充てようということなんですが・・・
称念寺本堂の向かって左側。画像が歪んだのではなく、実際に歪んでます。そしてつっかえ棒で必死に支えられています!奥の部分もなかなかの荒れ方ですね
称念寺の外壁を後ろから見たところ。ここも倒れないように補強されてます。多分、近所の小学生には「あのお寺で遊んじゃいけません!」というお達しが出ていることでしょう
本堂の屋根の部分も、必死の補強策が。よく見ると、下を歩くのも怖いくらいのイヤ~なたわみ方をしているんですよ・・・
裏側は荒れた民家も沢山あって・・・
この流れの中で書くのもどーかと思いますが、今井町の中を散策していると、古い建物が朽ちていく様子を目の当たりにできて、驚かされてしまいます。
これは、今井町全体が「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている関係もあるのだと思いますが、建物を修繕したり建て直したりするのに補助金が出るそうですが、それには細かい規則を守らなくてはならず、手軽にチャチャっと補修します、というワケにもいかないようなんですね。
元々が古い木造建築なんですから、いくら今でも人が住んでいるとは言っても、次第に傾いたり腐ってきたり、、、ということになってしまうのでしょう。観光地の中でそんな建物が突然現れるところは、妙にリアルな感じがしてしまいますね。
また、ここの最後に掲載した端壮薬品工業さん画像は、荒れ果てているワケでも何でもありませんので、誤解の無いように。。。。看板などが少ない今井町で、突然かぜ薬「おにみみ」の看板が登場して、しかも「みみづ配合」なんてことを書かれたら、そりゃ興味深いですよ(笑)!
今井町のある町屋さん。画像が歪んでいるのではなく、明らかに家自体が歪んでいます。格子窓の角度とか、屋根の角度とか、見ていて不安な気分になりますね
ここまでくると完全な廃墟です。2階部分などを見るといい雰囲気のものだったこと
道端に取り残された自動販売機。多分、森永乳業さんのもの。イラストもスゴイですが、「B.V.C」「アルギンZ」「Maxwell Coffee」「Ben Kar」など、読み取れる文字の全てが知らないものばかり!
端壮薬品工業さんのかぜ薬「おにみみ」の看板。コチラは現役の薬品メーカーさんです。注目すべきは鬼のイラストではなく、「みみづ配合」の文字。話によると、本当にあのミミズを配合しているんだそうです!
■称念寺
HP: http://www.nara-shonenji.com/
住所: 奈良県橿原市今井町3-2-29
電話: 0744-22-5509
宗派: 浄土真宗本願寺派
本尊: 阿弥陀如来
創建: 16世紀中ごろ
拝観料: 無料
駐車場: ナシ
アクセス: 近鉄橿原線「八木西口駅」-徒歩10分