2016-03-07

智慧の秘仏本尊・虚空蔵菩薩を祀る『弘仁寺』@奈良市

智慧の秘仏本尊・虚空蔵菩薩を祀る『弘仁寺』@奈良市

弘法大師の創建とも伝わる、奈良市の古刹『弘仁寺(こうにんじ)』。知恵を授ける虚空蔵菩薩を祀るお寺として信仰され、13歳の年にお詣りする「十三詣り」、奉納された「算額」などでも有名です。本堂には、秘仏本尊・虚空蔵菩薩像が祀られ、力強い四天王像などが脇を固めます。静かな虚空蔵山の中腹に立ち、山の辺の道の北側のハイキングコースになりますので、のんびりと参拝できます。


嵯峨天皇の勅願寺、空海の創建の説も

奈良市虚空蔵町の『弘仁寺(こうにんじ)』(山号:虚空蔵山)は、知恵を授ける虚空蔵菩薩を祀るお寺として、篤く信仰されてきた古社です。

弘仁寺の創建には、二つの伝承があります。

●嵯峨天皇の夢に「奈良の南の霊山に寺を建てなさい」という老人からのお告げがあり、時の宰相・小野篁(おののたかむら)に命じてその地を探したところ、現在の虚空蔵山にあたる場所だとわかった。そこで嵯峨天皇の勅命により弘仁六年(815年)に建立された

●大同二年(807年)、大和から高野山へ向かっていた弘法大師空海が、虚空蔵山に流星が落ちるのを見て、ここに明星天子の本地仏・虚空蔵菩薩を祀るお堂を建てた

山の辺の道の一帯は、古代の氏族たち、和邇氏や小野氏、柿本氏などの本拠であり、小野氏の氏寺だったという説もあるそうです。

中世には、東大寺の末寺として、多くの堂宇が立ち並ぶ修業道場として栄えましたが、戦国時代の1572年、松永久秀の兵火にあい、伽藍の大部分を焼失。現在の堂宇は、江戸時代(1629年)に宗全によって再興されたものです。毎年4月13日の「十三詣り」、奉納された「算額」などで知られています。


山の辺の道の北側コースにあります

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-01
『弘仁寺』は、国道169号線の東側、虚空蔵山の中腹に位置します。周りは民家も少なくとてものどか。道の分岐点ごとに案内が出ていますので、車であれば道案内に従って進むと駐車場(無料)が見つかります。もしくは、コミュニティーバスの「高樋町」下車して徒歩5分ほどです

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-02
駐車場から3分ほど歩くと、弘仁寺の山門が見えてきます。門前に多少の駐車スペースはあるようですが、車がすれ違えないような細い道なのでお気をつけください。冬のこの日はとても静かで、ちょっとした「隠れ寺」の雰囲気がありました

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-03
門前にあるお賽銭箱に「入山志納料200円」を収めて入山します。お寺の縁起などを記した説明書きもセルフ式でいただけます。なお、本堂の拝観をお願いする場合は、別途400円をお納めします

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-17
この付近の案内図。円照寺・正暦寺などとともに山の辺の道のハイキングコースに組み込めるため、この日も歩いてお詣りしてきている方の姿が見られました。コースは以下のサイトなどをご参考にどうぞ。

悲恋の影姫伝説が残る、北・山の辺の道を歩く|歩く・なら
山の辺の道(北)コース
奈良ウォーキングマップ 7.山の辺の道 北コース


薄暗い堂内で古仏と対面できます

弘仁寺の本堂には、空海作と伝わる秘仏本尊「虚空蔵菩薩像」が祀られています。厨子内に安置されていてお姿は拝見できませんでしたが、いただいたパンフレットによると「金色身」なのだとか。毎年4月13日の「十三詣り(じゅうさんまいり)」の日にご開扉となりますので、ぜひその日にお会いしたいと思います。

その両脇には力強い「四天王像」が。持国天・増長天が平安時代作で重文。他の2体は鎌倉時代ごろの作です。堂内がかなり薄暗いので細部まではわかりませんが、足元の邪鬼までを一木で掘り出しているそうです。

その他、子安観音像(室町時代)、弘法大師作と伝わる「天部立像」なども拝見できます。

なお、事前予約は不要ですが、お寺の方がご不在の場合もあるとのことですので、事前に問い合わせておくと安心かもしれません。

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-04
弘仁寺の「本堂」。寛永6年(1629年)に再建されたものです。二階建てに見えますが、東大寺・大仏殿や「喜光寺」(紹介記事)本堂と同様に、天井が高い単層になっています。重厚で堂々たる建物です

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-09
智慧の仏さま・虚空蔵菩薩を祀る弘仁寺では、毎年4月13日に「十三詣り」が催されます(詳細)。「十三歳の厄を払い、知恵を授けていただけるように虚空蔵菩薩にお参りする」というもので、中学生や中学受験前の小学生の方がお詣りするものなのだとか。この日だけではなく、日曜・祭日にご祈願していただけます


本堂前に掲げられた2つの「算額」

智慧のお寺として知られていた弘仁寺には、奉納された「算額(さんがく)」(詳細)が残されています。

算額とは江戸時代に数学の問題や解法を記して奉納された額のこと。映画などで話題になった「天地明察」にも登場していました。本堂の前に2つの算額が掲げられていますので、ぜひ注目してみてください。


弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-06

本堂の真ん中正面に掲げられている算額。安政5年(1858年)、石田算楽軒という方が奉納したものだとか。図形問題とその解が書かれていて、これを奉納することでさらなる智慧を得るご利益がありました

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-07
もう一つの算額はやや見づらく、本堂に向かって左側、虎の額と対面した位置にあります。こちらは文政10年(1827年)、奥田政八という方が奉納したものだとか

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-08
本堂前には、弘仁寺の算額の問題などが解説された印刷物が掲示してあります。数学が得意な方はぜひ挑んでみてください。私にはまったく理解できませんでした(笑)


明星堂の「明星天子像」は奈良博に寄託中

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-10
本堂のお隣に建つ「明星堂」。ご本尊の「明星天子像」(重文)は、奈良国立博物館に寄託されているため、ここでは拝見できません。展示された機会を見逃さずにお会いしたいと思います

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-11
明星堂の中には、大仏師・運慶の作と伝わる「大日如来像」、江戸時代の南都宿院仏師・源次の作「不動明像像」などが祀られていますが、中に立ち入ることはできません。外から薄暗い堂内に目を凝らしてみると、おぼろげに姿が見えます

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-12
弘仁寺「木造明星菩薩立像」を紹介した、読売新聞さんの2001年の記事の切り抜きが貼ってありました。平安時代の作で、内刳(うちぐり。軽くするために像内を削ること)のない古式の一木造り。地蔵菩薩として造像されたものだと思われますが、後の時代の親しみやすいお姿ではなく、呪術性を感じます。この当時のお地蔵さまは現世利益的な性格が強く、虚空蔵菩薩とペアで造像されることも多かったのだとか


おみくじの自動授与マシーンも

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-13
本堂と向かい合って建つ庫裏。宿坊としても利用できるそうです(詳細

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-14
本堂の正面には護摩行のための木組みが。この日はお詣りしませんでしたが、山門の脇から「奥の院」への道も続いているそうです。弘法大師が三鈷杵で掘ったと伝わる閼伽井戸があり、お不動さまがいらっしゃるそうです

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-15
本堂前にあった、自動販売機型のおみくじマシーン

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-16
咲きかけの梅の花と本堂

弘仁寺 @奈良市虚空蔵町-18
弘仁寺でいただいた御朱印。最初の一文字は梵字でしょうか。とても味がありますね



■弘仁寺(虚空蔵山)

HP: http://www.kouninji.org/
住所: 奈良県奈良市虚空蔵町46
電話: 0742-62-9303
宗派: 高野山真言宗
本尊: 虚空蔵菩薩立像
創建: 伝814年、伝807年
開基: 伝嵯峨天皇勅願、伝空海
拝観料: 入山料 200円、本堂拝観 400円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 無料
アクセス: JR・近鉄奈良駅から、米谷町行きバス「高樋町」下車、徒歩約5分

※実際にお詣りしたのは「2016年2月27日」でした


■参考にさせていただきました

弘仁寺 - Wikipedia
弘仁寺│巡る奈良
弘仁寺 - butsuzoutanbou ページ!
算額 - Wikipedia






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ