華やかで見所多めの特別札所『中山寺』@兵庫県宝塚市
西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、兵庫県宝塚市にある『中山寺』へお邪魔してきました。奈良のお寺とは明らかに雰囲気が違っていて、とにかくまばゆいばかりの極彩色が見事!五百羅漢像や閻魔大王など、いろんな面で面白いお寺でした。
昔は西国三十三所の一番札所でした
兵庫県宝塚市にある『紫雲山 中山寺』は、聖徳太子の創建と伝わる日本最初の観音霊場です。
特に「安産祈願」の霊場として、皇室や源頼朝など武家、庶民からの信仰を集めてきました。豊臣秀吉が中山寺に祈願して秀頼を授かったり、幕末に中山一位局が出産する際に安産の腹帯「鐘の緒」を授かって、無事に明治天皇を出産したことから「明治天皇勅願所」となりました。
西国三十三所巡礼にまつわる言い伝えとしては、718年に巡礼の旅に出た徳道上人は、閻魔大王から授かった宝印を中山寺の土地に埋めたのだそうです。およそ200年後、それを掘り起こした花山法王が廃れていた西国三十三所巡礼を再興したとされていることから、中山寺は特別な札所として考えられており、過去には一番札所となっていた時代もあったのだそうです。
堂々とした山門は駅からわずか1分!
兵庫県宝塚市にある西国三十三所観音霊場の24番札所『中山寺』。阪急宝塚線の中山寺駅からすぐの位置にあります。
入口にあるのは、堂々とした「山門」。1646年、徳川家光の寄進により再建されたもので、その周りには巡礼の安全を願って奉納された草履がたくさん吊るされています。過去には中山寺が最初の札所だったという時代もあったそうですし、こんな光景を見ると、西国三十三所らしさを感じます。
また、山門の裏側には、ちょっと変わった「漆塗り」の狛犬と獅子もいますので、そちらもお見逃し無く!
西国三十三所巡りの二十四番札所『紫雲寺 中山寺』。阪急宝塚線の中山寺駅から歩いてすぐの位置にあり、安産祈願のお寺としても有名です。この日も、お子さん連れの方や、西国三十三所巡礼の方で賑わっていました
中山寺の入口に建つ「山門」。1646年に徳川家光の寄進により再建されたもので、堂々とした雰囲気のある楼門です。仁王像の周りには、巡礼の安全を(または自身の健康を)祈願して奉納された草鞋がいっぱいでした
力強さの象徴である仁王様に、巡礼者が自らの足腰が耐え切れるように・・・という願いを込めて草鞋を奉納したことが始まりだったそうです。仁王像は最近になって彩色され、本来の姿に戻ったのだとか。中山寺は全般的にビビッドなお寺でした
仁王像の裏側には獅子と狛犬が。どちらも木製で、弁柄漆によって仕上げられていたことが判明したため、現在の漆職人の手によって当時の姿に復元されたそうです。漆塗りの狛犬というのも、なかなか他では見られませんね
古くから信仰を集める「安産のお寺」
この日は平日でしたが、安産祈願のお寺らしく妊婦さんの姿も多く、さらに西国三十三所巡礼の方も数多くいらっしゃっていて、とても賑やかでした。境内には、エスカレーターやエレベーターが付いていたりして、かなり近代化されています。観光寺院でもあり、ちゃんと地元の方の法要も行われているようですし、今どきの「経営が上手くいっているお寺」という雰囲気が伝わってきました。
中山寺の境内は、少しずつ山を上る形になりますが、しっかりエスカレーターやエレベーターが設置されていますので、参拝もかなり楽です
中山寺の寺務所や法要会場などが入っている「紫雲閣」の建物。まぁとにかく近代的で、今どきの経営がしっかりとしたお寺・・・という雰囲気が感じられます
「五百羅漢堂」には七百体以上の羅漢さん
中山寺には、小さめなお堂や別院も多く存在しているため、全部を見て周ろうと思うと相当な時間がかかってしまいます。ある程度は選択しながら参拝することになると思いますが、特に「五百羅漢堂」は面白かったのでオススメです。
1997年に建てられた新しいお堂ですが、その内部はご本尊の釈迦如来像を中心に、七百体以上の羅漢さんたちが取り囲む、ある意味では異様な空間になっています。天井の鮮やかな青と梵字など、とても見事ですので、ぜひじっくりと見てみてください。
紫雲閣の前から。目の前に見えるのは「五百羅漢堂」で、本堂はさらにもう一段上の敷地にあります
中山寺の「五百羅漢堂」の内部の様子。五百羅漢は他のお寺でも見かけることはありますが、中山寺のものはかなり壮観です!1997年の建立で、ご本尊の釈迦如来像の周りには、お弟子さんである羅漢さんが七百体以上も祀られているのだそうです!
五百羅漢堂の天井には、こんな梵字がありました。意味は全く分かりませんが、無条件でカッコイイですね。天井全体が鮮やかな青で塗られているのも、とても見事です!
五百体の像は、それぞれ顔立ちが違います。最前列にいらっしゃる方しか名前の看板はありませんが、じっくりと見ていくと、かなり個性的な方もいらっしゃって面白いですね
鮮やかな「閻魔堂」も面白いです
そして、奈良ではあまり見かけないような、立派な「閻魔堂」も見事でした。まばゆいくらいのオレンジ色のお堂ですが、中を拝見すると中央には閻魔大王がいらっしゃって、脇侍には司命(しみょう)さんと司録(しろく)さん。その周囲をお仲間が取り囲むようにいらっしゃいます。
地獄という恐ろしいところを管轄されている方のお堂なんですが、極彩色の装飾と合わせてみると、本当に別世界のように思えてきます。年代の違いもあり、奈良ではここまでの閻魔堂はなかなか見られませんので、かなり新鮮に楽しめました。
まばゆいばかりの朱色が鮮やかな「閻魔堂」。密教の十二天である閻魔天が、中国道教の冥界思想の影響を受けて変化したのが閻魔大王。日本では浄土教の信仰とともに、その存在が知られるようになりました
ごく最近塗りなおされたものでしょうか。とにかくまばゆいくらいに鮮やかで、独特の紋様につい見入ってしまいます
お堂の内部も華やかです。中央にいらっしゃるのが閻魔大王で、その脇を固めるのが司命・司録さん。毎年、二月と八月には「地獄の釜が開く日」があり、法要が行われるのだそうです
十一面観音様とご縁を結びました
中山寺の本堂は、1603年、豊臣秀頼の命で再建されたもの。こちらも鮮やかな彩色が残っている、華やかなお堂でした。
ご本尊は、平安時代の木造「十一面観音立像(重文)」。像高は151.3cmで、遠めにしか見えないため、あまりよく拝見できないのが残念ですが、かなり素朴な雰囲気のある、落ち着いた仏様でした。古くから「安産・求子の観音」として信仰され、その姿はインドの勝鬘夫人(インドのアユジャ国の王妃。シューリー・マーラー)に似せて作られたとされているそうです。
今回は、特別ご開帳の時期とされていましたので、ご本尊とご縁を結ぶことができましたが、普段から毎月18日にご開帳されているようです。
五百羅漢堂の脇からは、またエスカレーターが。その先にようやく見えてくるのが「本堂」です。山門から本堂までは、それほど距離はありませんが、見どころが多いのでかなり時間が掛かりました
中山寺の「本堂」。1603年に豊臣秀頼の命を受けた片桐且元が再建したものです。コチラもなかなかの極彩色。平日でしたが、たくさんの方がお参りに来ていらっしゃいました
本堂前にいらっしゃる「賓頭盧尊者(びんずるそんじゃ)」さん。普通は、自分の体の悪いところをさすると病気が治る・・・という像として扱われるものですが、安産祈願の中山寺では、大量のよだれかけが奉納されていました。面白いですね
中山寺の本堂前。ご本尊は像高151.3cmの十一面観音立像で、カヤを使った一木造りのシンプルな仏様でした。この日はご縁を結ばせていただきましたが、秘仏というワケではなく、毎月18日にご開帳されているようです
本堂の文様も、とにかく華やかです。奈良のお寺を見慣れている私から見ると、まばゆいほどの装飾ですね
高台から本堂を見下ろしたところ。寄棟造りの堂々とした建物です
お堂や別院が多く、なかなか大変です
この他、見事な多宝塔「大願塔」や、「大師堂」「開山堂」などのお堂、そして「中山寺古墳」という古墳まであり、見どころは豊富です。見方によってはかなり面白いお寺ですので、ぜひ時間をかけてじっくりと見て周ってください。
本堂の脇に並ぶ二つのお堂。手前が「開山堂」で、奥が「護摩堂」になります。とにかく、中山寺では小さなお堂や別院も多く、全部をじっくり見て周ろうとすると、かなり大変かもしれません
本堂からまた一段だけ高いところに建つ「大願塔」。いわゆる多宝塔ですが、下から見上げる様子もなかなか凛々しいですね。ちなみに、中山寺のHPでは、この大願塔の様子がライブカメラで中継されています!
大願塔の横に建つ「鎮守社」。簡素なお社ですが、妙に風情がありました
中山寺の手水舎。蓮の花のつぼみでしょうか。葉っぱの部分が柄杓置き場になっているのがいいですね
手水舎の隣に建つ「鐘楼堂」。入口の山門とほぼ同じ作りに見えますが、軒の裏の板にまで細かい紋様が掘り込まれた、かなり凝ったものでした
中山寺の境内にある「中山寺古墳」(または白鳥塚古墳)。14代仲哀天皇の后「大仲姫」の墳墓とされており、内部には石棺が残されています。頭上の岩が崩れてこないかというスリルも味わえます!
■中山寺(紫雲山)
HP: http://www.nakayamadera.or.jp/top.html
住所: 兵庫県宝塚市中山寺2丁目 11-1
電話: 0797-87-0024
宗派: 真言宗中山寺派
本尊: 十一面観音立像(重要文化財)
創建: 6世紀後半-7世紀前半ごろ
開基: 聖徳太子(伝)
拝観料: 境内無料
拝観時間: 9:00-16:00
駐車場: なし(中山寺駅前の私営駐車場を利用)
アクセス: 阪急宝塚線「中山寺駅」からすぐ
※西国三十三所の第24番札所
※お寺の駐車場はありませんが、駅前のコインパーキングを利用すればかなり安上がりです