2010-10-18

聖徳太子の生誕地に建つ縁のお寺『橘寺』@明日香村

聖徳太子の生誕地に建つ縁のお寺『橘寺』@明日香村

聖徳太子の生誕地に建つ『橘寺』へお参りしてきました。この日は、収蔵庫で「日羅立像」などが特別公開されており、観音堂の「六臂如意輪観音像」や護摩堂の五大明王像など、様々な仏さまにお会いできました。境内いっぱいに酔芙蓉(すいふよう)の花も咲いていましたし、とても落ち着くいいお寺さんですね。


「聖徳太子建立七ヶ大寺」の一つです

明日香村橘に建つ『橘寺』は、正式には「仏頭山上宮皇院菩提寺」と称する、天台宗寺院です。この土地は「橘の宮」という欽明天皇の別宮があり、572年に聖徳太子が生誕なさった場所とされています。

606年、推古天皇の命を受けた聖徳太子は、この地で勝鬘経(しょうまんきょう)を三日間にわたって読んだところ、大きな蓮の花が庭に1mも降り積もるなど、不思議な現象が起こり、これの驚いた天皇の命によって、この地に創建されたのが橘寺となります。

「聖徳太子建立七ヶ大寺」の一つに数えられ、東西870m・南北650mの寺地に、金堂・講堂・五重塔など66の堂宇が立ち並び、四天王寺式の伽藍を構える大寺院でした。現在は法隆寺に移されている「玉虫厨子」も当初は橘寺にあったとされるそうです。

しかし、1148年には落雷で五重塔が焼失(60年後に再建)、1506年には多武峰の僧兵の焼き討ちにあうなどして次第に衰退し、江戸時代には僧舎が一棟残るのみだったとか。現在の堂は、1864年に再建されたものです。


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明日香村にある聖徳太子ゆかりのお寺『橘寺』。正門となる「東門」の前には、一対の狛犬が建っています

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時代は分かりませんが、丸みを帯びていながらも、凛々しい表情の狛犬です。手足の甲の部分がぷっくりとしているのがいいですね

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橘寺の境内にある看板。年表・伽藍配置・宝物が記してあります。572年の聖徳太子の生誕から、606年の伽藍設営などとともに、「1506年 多武峰僧兵橘寺に放火す」という文字が見えたりします。歴史を感じますね

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東門をくぐってすぐにある「鐘楼」。すぐ隣には「五重の塔跡」が。飛鳥時代には、ここに約40mの五重塔が建っていたそうです。創建当初は四天王寺式の大伽藍を構えていたとのことですので、ぜひその姿を想像してみてください


本堂に「田道間守」像も祀られています

橘寺の「本堂(太子殿)」は、1864年に再建された重厚な建物です。御本尊は室町時代作、聖徳太子が35歳の時のお姿を写したとされる「聖徳太子勝鬘経講讃像(重文)」。本堂の最奥の御厨子の中にいらっしゃるのを遠目から拝見するのですが、その姿はまるで仏さまのよう。太子像は人間らしい造形になるのが常ですが、人間を超えた存在として描かれているように思えます。

また、天台宗寺院らしく(江戸中期から)、「伝教大師像(最澄像)」なども祀られていました。不動明王像や釈迦誕生仏、聖徳太子十六歳像などもいらっしゃいます。

橘寺らしいのは、手に笹のようなものを持った「田道間守(たじまもり)」の像があることでしょう。日本書紀によると、垂仁天皇の命を受け、中国へ不老不死の薬を求めてわたった人物で、彼が日本に持ち帰った「橘(ミカンの原種)」が植えられたことから、この土地は橘と呼ばれ、橘寺の名前の由来にもなりました。その際に黒砂糖も持ち帰ったため、お菓子や果物の神として祀られています。


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橘寺の「本堂(太子殿)」。1864年に再建されたもので、奈良のお寺の中では比較的新しいものとなります。御本尊は室町時代に作られた「聖徳太子勝鬘経講讃像(重文)」。聖徳太子の35歳の時の姿とのことですが、見た目はほぼ仏像です。太子像の中でも珍しいタイプかもしれません

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橘寺は、新西国霊場の札所となっていますので、参拝者の数も多めです。また聖徳太子の姿を写した掛け軸なども販売されているのがさすがですね

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橘寺の本堂前に建つ「黒駒像」。聖徳太子の愛馬の像で、黒駒にまたがって各地に説法へ出かけたとされているのだとか

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往生院の前には柑橘類が実っていました。日本書紀によると、中国へ不老不死の薬を求めてわたった田道間守(たじまもり)が、日本に持ち帰った「橘(ミカンの原種)」が植えられたことから、この土地を橘と呼ぶようになったのだそうです。田道間守は、同時に黒砂糖も持ち帰ったため、今でも「お菓子の祖神」として崇められています


観音堂の大きな如意輪さまも見事!

橘寺の本堂前にはいくつかのお堂が並びますが、中でももうお一方の御本尊となる「観音堂」の「六臂如意輪観音像(重文)」は、ぜひじっくりとお会いしてみてください。

藤原時代の作で、如意輪観音像としてはかなり大きめのお姿です。腕は6本で、やや猫背で体が傾いて見えるのも、リラックスした雰囲気でいいですね。素晴らしく美しいというタイプの方ではありませんが、その大きさといい、個人的に大好きなお方です。お堂の内部にガラスケースの展示などもあって、ややガチャッとした印象があるのが残念ですが、とても素敵な仏さまです。


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本堂に向かって右手に建つ「観音堂」。御本尊は「六臂如意輪観音像(重文)」。藤原時代の作で(台座・光背などは江戸時代のもの)、如意輪観音像としてはかなり大きめの部類に入るでしょう。やや猫背でリラックスした感じがいいですね。個人的に大好きなお姿の仏さまです!

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観音堂の前にいらっしゃる賓頭盧尊者像。いかついお顔ですが、表情は穏やか。お賓頭盧さんに対して、自分の体の悪い部分と同じところをさすると治してくれますので、ぜひ撫でてみてください

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観音堂の隣に立つ「護摩堂」。いつでも開扉しているかは分かりませんが、私はこの日初めてお参りできました。お堂の中は護摩行のすすで真っ黒です。中央には、奈良では珍しい五大明王像がいらっしゃって、半跏の大黒天や、文殊菩薩の三尊像など、ちょっと面白い仏さまがいらっしゃいました

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橘寺の本堂に向かって左手に建つ「経堂」。御本尊は阿弥陀如来像です。お堂の外観は地味めですが、何故かこの内部だけ中国風を感じさせるような面白い雰囲気になっています


小さな収蔵庫に重要文化財が並びます

また、この日は通常は非公開の「聖倉殿(収蔵庫)」も拝観させていただきました。

それほど広い建物ではなく、主な展示物は5つのみ。中央には、貞観時代(平安時代前期)の作とされる「日羅立像(重文)」がいらっしゃいます。この方は、聖徳太子に仏教を教えられた方で、外観はほぼ地蔵尊のよう。切れ長の目が理知的で、それでいてとても力強い印象を受けました。その隣には、藤原時代(平安時代後期)の作の「地蔵菩薩立像(重文)」が。こちらは穏やかなお地蔵さまらしい作風です。

また、土佐光信の筆と伝わる「絹本聖徳太子八幅絵伝(重文)」もじっくりと拝見していると面白かったですね。さらに、巨大な鎌倉時代の「だ太鼓の縁(重文)」、室町時代前期の「石灯篭(重文)」と、大きな文化財も展示されていました。

収蔵庫の真向かいには、真新しい「往生院」という建物があります。こちらは多目的道場として作られたもので、見事な260枚のお花の天井画が有名です。いつでも拝観できますので、お忘れなくどうぞ!


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橘寺の本堂前の石畳。この日は、平城遷都1300年祭の一環として「聖倉殿(収蔵庫)」の特別公開を行っていました

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橘寺の「聖倉殿(収蔵庫)」。定期的に公開されています。内部はそれほど広いものではなく、入ってすぐに平安時代前期の「日羅立像(重文)」がいらっしゃるほか、平安時代後期の「地蔵菩薩立像(重文)」や、土佐光信の筆と伝わる「絹本聖徳太子八幅絵伝(重文)」なども。小さいながらも濃密な空間になっています!

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収蔵庫の向かいに建つ「往生院」。1997年に作られた多目的道場で、まだ真新しいものです。見事な天井画が見られます

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橘寺の「往生院」の内部。御本尊は阿弥陀三尊ですが、向かって左手にいらっしゃる巨大な聖徳太子像が異彩を放っています。折上になっている天井には天井画が描かれています

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往生院の天井画。著名な画家の方たちから奉納された260点の花の絵が飾られています。往生院はいつでも拝観できますのでお見逃しなく

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橘寺の金堂跡。境内には、たくさんの酔芙蓉(すいふよう)が植えられています。この日はやや盛りを過ぎていましたが、ピーク時には見事な眺めになるでしょう


飛鳥らしい石造物、不思議な「二面石」も

橘寺の境内には、明日香村に遺された奇妙な石造物の一つ「二面石」があります。2つの人間の顔が掘られたもので、「右善面、左悪面」となっており、私たちの心の持ちようを示したものとされているそうです。しかし、飛鳥時代に作られたものですから、その真意は分かるはずもありません。笑っているようにも見えますし、怒っているように見えたりしますので、色々と想像してみると楽しいですね。


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橘寺の境内にある「二面石」。明日香村には、たくさんの飛鳥時代の石造物が遺されていますが、二面石もその一つです

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二面石は、「右善面、左悪面」とされており、私たちの心の持ち方を現したものなんだとか。この角度から見えるのは「左悪面」でしょう

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こちらが二面石の「右善面」側か。明らかに表情は違いますが、善悪の判断は難しいですね(笑)

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こちらも橘寺の境内にある「三光石」。聖徳太子が勝鬘経(しょうまんきょう)を読んだときに、その冠から日・月・星の光を放っなどの不思議な出来事が起こり、それに驚いた推古天皇がこの地にお寺の建立を命じたという言い伝えがあります

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三光石のすぐ隣には、聖徳太子が作ったと伝わる「阿字池」が遺されています



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■橘寺

HP: 参考サイト(Wikipedia)
住所: 奈良県高市郡明日香村橘532
電話: 0744-54-2026
宗派: 天台宗
本尊: 如意輪観音坐像・聖徳太子勝鬘経講讃像(ともに重文)
創建: 7世紀前半
開基: 聖徳太子(伝)
拝観料: 350円
拝観時間: 9:00 - 16:30
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄「橿原神宮駅」より 岡寺前行バス「岡橋本」下車、徒歩5分

※「新西国三十三箇所観音霊場」の第10番札所






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