2010-04-11

日本最古の虚空蔵菩薩像のお寺『額安寺』@大和郡山市

日本最古の虚空蔵菩薩像のお寺『額安寺』@大和郡山市

大和郡山市にある、聖徳太子ゆかりのお寺『額安寺』へ行ってきました。それほど大きなお寺ではありませんが、日本最古の虚空蔵菩薩像がいらっしゃることで有名です。また、仏さまの写真撮影を許可してくださっていますので、楽しく拝観させていただきました!


聖徳太子の「熊凝精舎」跡地とも

『額安寺』は、大和郡山市の南部に建つ、聖徳太子ゆかりのお寺です。この地は初瀬川と佐保川が合流する古代水路の交通の要所であり、聖徳太子が建立した道場「熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)」の跡地と言われています。

熊凝精舎は移転を繰り返し、後に「大安寺」となりました(諸説あります)。その土地に、この地の豪族・額田部氏の氏寺「額田寺」が建てられ、それが後の額安寺となりました。

全盛期には南北約200m、東西300mに及ぶ広大な寺域に、金堂・講堂・塔・中門・南大門・池・回廊・などが立ち並ぶ大寺院でしたが、その後次第に衰退。鎌倉時代には、叡尊・忍性らによって再興されましたが、近世にはほぼ廃寺のような状態になっていました。1975年から大規模な改修工事が行われ、現在の姿まで復興してきています。

ちなみに、額安寺は「がくあんじ」ではなく、正式には「かくあんじ」と読みます。


通常の拝観は事前予約が必要です

額安寺は、奈良市内や斑鳩からやや距離があるため、普段は参拝客もそれほど多くないと思われますが、この日だけは話が別でした。

平城遷都1300年祭の「祈りの回廊」の企画として、「忍性菩薩骨臓器(重文)」が特別公開されているだけではなく(2010年4月30日まで)、奈良国立博物館の西山厚先生の特別講話が行われていたため、それほど広くない境内は大混雑でした。


額安寺@大和郡山市-01

大和郡山市の南部にある『額安寺』。この日は平城遷都1300年祭のイベントの一環として、「忍性菩薩骨臓器」といった寺宝が特別公開されていました(2010年4月30日まで)

額安寺@大和郡山市-03
この日は、本堂脇の「客殿」で、平城遷都1300年祭の特別講話「忍性菩薩」が行われていました。講師は奈良博の西山厚先生でしたので、ぜひ拝聴したかったのですが、もう終了寸前で残念ながら伺えず・・・

額安寺@大和郡山市-04
額安寺の境内は、本堂と収蔵庫が2箇所ある程度で、それほど広くありません。この日はイベントも行われていたため、観光バスも何台も到着するなど、かなりの賑わいでした

額安寺@大和郡山市-02
額安寺の「本堂」。大和郡山市指定の文化財です。1606年の建築で造りは簡素。奈良のお寺らしいシンプルさです。で桜の木が1本だけ植わっていて、とてもきれいでした

額安寺@大和郡山市-05
額安寺の境内の一角。宝篋印塔(ほうきょういんとう)などが立っています


仏様を撮影させていただけるのが嬉しい!

額安寺の本堂は、とてもシンプルな造りです。御本尊は彩色も鮮やかな、とても美しい「十一面観音像」で、嬉しいことに写真撮影も許可していただけます(フラッシュや三脚の使用は遠慮しましょう)。

団体さんに混ざってご住職のお話を伺ったのですが、「今の額安寺はまだ小さなお寺ですので、写真撮影もご遠慮なく。お寺がもっと大きくなったらもう撮影できなくなるかもしれませんよ(笑)」とおっしゃられていましたので、仏像写真がお好きな方はぜひどうぞ!

御本尊の十一面観音様は、室町時代の作と、奈良の仏さまにしてはやや時代が下りますが、彩色が見事に残った鮮やかな方でした。脇侍の吉祥天・梵天像も美しい方たちでしたし、この本堂だけでも十分に楽しい時間が過ごせました。


>額安寺@大和郡山市-07

額安寺の本堂内の様子。お堂自体は簡素ですが、華やかな法具が目を惹きます。額安寺では、今のところ「写真撮影OK」となっています(フラッシュはオフにすること)。仏像好きとしては嬉しい限りですね

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額安寺の御本尊「十一面観音菩薩像」。室町時代の作で、彩色が鮮やかに残った美しい仏さまです!額安寺の寺勢が衰えている時期は、ほぼ秘仏のような扱いとなっていたため、このような素晴らしい保存状態なのだそうです

額安寺@大和郡山市-14
少し角度を変えて。ゆったりと腰をひねった雰囲気など、とても美しいですね。頭上はよく見えませんでしたが、穏やかな表情が素晴らしい仏さまでした

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御本尊の脇侍「吉祥天」さん。本来は梵天・帝釈天のコンビになることが多いものですが、額安寺のものは吉祥天・梵天の組み合わせだと考えられているのだとか。金箔が美しく残されている、たおやかな雰囲気の仏さまでした

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吉祥天さんをもう一枚。制作年代などは不明ですが、全体的に丸みを帯びた体型で、お腹のぽっこり具合がいいですね

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御本尊の脇侍「梵天」さん。吉祥天さんとよく似た雰囲気ですが、ややクールな表情が特徴です

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帝釈天さんのアップ

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額安寺の本堂内、向かって左手にいらっしゃる仏さまたち。聖徳太子さまの掛け軸を中心に、愛染明王像、弘法大師像などがいらっしゃいました

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額安寺の愛染明王像。制作年代などは不明です。赤の彩色がまだ鮮やかに残っていますが、持物が失われているのが残念ですね

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額安寺の本堂内、向かって右手にいらっしゃる不動明王像。ギョロッと目を向いた憤怒の表情がいいですね。台座もお不動さんらしいもので(瑟瑟座・しつしつざ)、荒々しさが増しています!

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本堂の壁面には、有名な洋画家「織田廣喜」さんの「天の川」という大きな作品が展示されていました。三百号の大作で迫力がありました


奈良時代の虚空蔵菩薩像は色鮮やか!

本堂の脇にある収蔵庫「虚空蔵堂」には、以前からぜひお会いしたいと思っていた日本最古の虚空蔵菩薩像である「乾漆虚空蔵菩薩半跏像(重文)」がいらっしゃいます!



頭・体部の心木を前後で合わせ、表面に漆の布を貼り合わせた木心乾漆造りの虚空蔵菩薩像です。虚空蔵菩薩は、智恵と福を授ける仏様で、額安寺の根本本尊です。現存する虚空蔵菩薩像の作例としては日本最古のものであり、奈良時代末頃(757年頃:天平末期)の制作と推定されています。額安寺開基の道慈律師が晩年、虚空蔵求聞持法の主尊として虚空蔵菩薩像を安置し、宗法の興隆に努めたと言われています。鎌倉時代後期(1282年)には、損傷が進んだため西大寺律僧の叡尊が、仏師の善春や絵師の明澄に補修させ、開眼供養を行ったことが台座に記されています。
額安寺ホームページより


像高は50cmほどと大きくはありませんが、知恵の仏さまらしく、凛とした涼しげな表情が特徴的です。また、奈良時代末期の作にも関わらず、彩色が見事に残っており、蓮弁の一枚一枚が美しい絵画のよう。今から1200年以上前に作られたとはとても信じられないような鮮やかさでした。

ガラス越しの拝見というのがやや残念ですが、正面や横から、立ったり座ったりと、色んな角度から向き合える、とても雰囲気のある仏さまですね。お会いできて良かったと思います!


額安寺@大和郡山市-18

額安寺には二つの収蔵庫があり、その一つが「虚空蔵堂」です。鉄筋コンクリート製の小さな建物で、中にはガラスケースに安置された、日本最古の虚空蔵菩薩像である「乾漆虚空蔵菩薩半跏像」がいらっしゃいます

額安寺@大和郡山市-21

額安寺@大和郡山市-22

額安寺@大和郡山市-19

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額安寺近くの「鎌倉五輪塔」もお忘れなく

そして、この時期だけの特別公開が行われていたのが「忍性菩薩骨臓器(重文)」です。

1982年に五輪塔の修復工事を行った際に出土したもので、忍性の銅製骨蔵器、善願の骨蔵器など計11点が重要文化財に指定されているのだとか。やや地味な展示になりますので、私などにはその価値がよく分かりませんでしたが・・・。

なお、私たちは見てくるのを忘れてしまいましたが、額安寺から徒歩5分ほどの距離には、「鎌倉五輪塔」があります。忍性菩薩と善願上人の供養塔で、重要文化財にも指定されていますので、忘れずにお立ち寄りください。

額安寺@大和郡山市-23
もう一つの収蔵庫には「忍性菩薩骨臓器(重文)」があります。このような厨子の収められていますが、すぐ間近で拝見できました

額安寺@大和郡山市-24
奥の右手の壺が「忍性菩薩骨臓器」です。1982年に五輪塔の修復工事を行った際に出土したもので、忍性の銅製骨蔵器、善願の骨蔵器など計11点が重要文化財に指定されています。壺に刻まれた銘文は、資料的にも貴重なものなのだそうです

額安寺@大和郡山市-25
収蔵庫内に置いてあった図録の表紙。こんな重要なものが今から約30年前に見つかったというのですから驚きですね

額安寺-ご朱印
額安寺でいただいたご朱印です。御朱印には3パターンありますが(御本尊の十一面観音、聖徳太子、虚空蔵菩薩)、今回は虚空蔵菩薩のものをいただきました



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■額安寺(熊凝山)

HP: http://kakuanji.jp/index.html
住所: 奈良県大和郡山市額田部寺町36
電話: 0743-59-1128
宗派: 単立
本尊: 十一面観音
創建: 621年(伝)
開基: 聖徳太子(伝)
拝観料: 400円(特別公開の期間中は500円)
拝観時間: 9:30 - 16:30
駐車場: 無料駐車場あり(6台分)
アクセス: 近鉄橿原線「平端駅」下車、徒歩15分

※ネット上では情報があやふやだったため、お電話で確認したところ、宗派は「真言律宗」ではなく「単立」です。「拝観は要事前予約」という書き方をしてあるページもありますが、これは団体の拝観のみで、個人拝観であれば事前予約は不要とのことでした。






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