2016-12-16

纏足?ミイラのチンコ?『東洋民俗博物館』@奈良市

纏足?ミイラのチンコ?『東洋民俗博物館』@奈良市

奈良市あやめ池の『東洋民俗博物館』。初代館長・九十九黄人氏が蒐集した、世界の民俗資料を展示する施設です。その対象は、全国の絵馬・パラオの石貨・ミイラのチンコ・纏足・踏絵など多種多彩。もっとも力を入れた「性」関係のコレクションなども圧巻です!不思議で濃密な時間が過ごせますよ!


奈良を代表する珍スポット?

奈良市あやめ池のほとりに位置する『東洋民俗博物館』は、初代館長「九十九黄人(つくもおうじん)」さんが蒐集した、世界の民俗資料約1万点を展示する施設です。

コレクションの中心は、初代館長・九十九黄人氏が、日本全国を調査して歩いた人類学者フレデリック・スタール博士の通訳兼助手として同行した17年間に集めた日本国内のもの。さらには、個人で世界中への調査旅行を行って集めたものなど、多岐に及びます。

その特徴は「性」に関するコレクションが豊富なこと。世界の性風俗に並々ならぬ興味を抱き続けた黄人氏は、女性の陰毛コレクター(その数なんと4,000本!)などとしても知られ、テレビ番組にもたびたび登場。それのご加護か、活力源となったのか、103歳まで矍鑠としていらっしゃったとか。

とにかく、九十九黄人氏という名前からして、「エロい人→エロマン→イエローマン→黄人」というダジャレで名乗り始めたというのですから筋金入りですね。

まるで秘宝館のように「奈良の珍スポット」「奈良のB級スポット」として紹介されたりもしますが、それは一部に過ぎません。それほど広い施設ではありませんが、とにかくいろんなものが次々に登場し、現館長(初代館長の息子さん)がそのエピソードなどを語ってくれますので、かなり不思議で濃密な時間が過ごせます!


東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-01

あやめ池のほとりにある『東洋民俗博物館』のスロープ。私はすっかり失念していましたが、この一帯は今はなき「近鉄あやめ池遊園地」(2004年閉園。Wikipedia)があった場所で、東洋民俗博物館もその一部として1928年に開館していたのだとか。マップを見ると独特の町の形が見られて面白いです

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-02
『東洋民俗博物館』の建物は1928年(昭和3年)に建てられたもの。旧帝国ホテル本館の影響も見られるルネサンス風です。戦後には九十九家が運営する財団法人へと経営が移っていて、現在は息子さんが館長となって運営なさっています

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-03
正面玄関の上部の装飾など。細部まで独特なこだわりが感じられて、とても楽しいです。こんなハイカラな建物が遊園地内にあったなんて、不思議なものですね

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-04
建物の前には、すでに何やら不思議な収集物たちが。向かって左から、こけし?・法輪・石敢当・蘇民将来など。右の看板は、京都・龍安寺のつくばいの「吾唯足知(われただたるをしる)」をもじったもの。「舌吸足知(したをすってたるをしる)」下ネタです(笑)

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-05
入口脇に建つ胸像「御礼博士像」は、九十九黄人氏の恩師ともいえる人類学者フレデリック・スタール博士(全国の御札を集めたので「おふだはかせ」と呼ばれた)のもの。20世紀初頭に日本の民俗研究のために15回も来日された方で、その際に通訳として全国に同行したのがコレクションの原点となっています


ユニークな絵馬など圧巻のコレクション

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-06
『東洋民俗博物館』に入館してすぐの一角。もうすでにレトロでカオスな雰囲気が漂っています。椅子の上に置いてあるお写真が、九十九黄人氏のお姿を写したもの。百歳を超えてからの姿ということですが、とにかくおしゃれです!お隣には、晩年にお気に入りだったという車付き椅子も。座って記念撮影できますよ

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-07
これは入って左手の展示室。さらに右手にも同規模の一室があり、奥の部屋(※ここは撮影禁止)にはエロ関連のコレクションが拝見できます。世界のさまざまな民俗学的な物がコレクションしてあって、目移りしますね。簡単に説明書きもありますし、見どころについては館長からご説明もしていただけるので、「へー!」の連発でした

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-08
展示物を手短に。棚の上にあるのは、各国各時代の兜と帽子。その下にはパラオ島で使われていた食器など

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-09
パラオで使われていた、大理石製のお金「石貨」。懐かしのアニメ『はじめ人間ギャートルズ』の世界のよう!わざわざ島の間を船で運んでいたそうです。触らせていただきましたが、気軽に支払いに使えるような重さではありませんでした(笑)

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-10
「潜伏切支丹」(いわゆる隠れキリシタン)のコーナー。中段には実際に使われていた「踏絵」の展示があったり、仏さまの姿に模して造られた像があったり

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-11
朝鮮コーナーには、村の入口に魔除けとして立てられた「天下大将軍」のコレクションなど

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-12
中国の魔除けの護符など(※詳細は失念しました…)。デザインが素晴らしいですね

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-14
中国の漢民族が行っていた「纏足(てんそく)」の靴。わずか10センチくらいのサイズです。かつては「足が小さいこと=貞淑、美しい」とされていたため、女性の足を成長させないように矯正する風習があったのです。実物を見るのは初めてかも!

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-15
壁一面に展示された、日本全国の「絵馬」のコレクション。眼病の治癒を祈願した「め」、学業成就を祈願した「菅公(菅原道真公)」のものなど分かりやすいものから、性病の治癒を祈願した下半身を描いた絵馬や、ムカデ・たこ・なまずなど、一見なにを願っているのか分からないものまで。見ていてまったく飽きません。判じ絵のような面白さがあります

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-16
男女が背を向けあったデザインの絵馬は「離婚祈願」のもの。昔は女性側からは簡単に離婚を申し出ることもできなかったため、こうした絵馬に託してその成就を祈ったのだとか。いろんなデザインがありますが、かつては大きな神社などには絵馬を描く絵師さんが常駐していて、悩み事に応じて描いていたのだそうです


民俗関連から戦争遺物まで幅広く

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-17
こちらは入って右手の一室。天井が高くて、とても明るいです。昭和初期の1928年の建物ですが、多少の修繕はしたもののとても状態もいいまま使用できているとか。レトロな外見と館内の雰囲気が合っています

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-22
東洋民俗博物館の中でも「ネットなどで一番人気」という展示物が、この5000年前の「ミイラのチンコ」です。ペルーのリマ市の古代遺跡からは見つかった多数のミイラの一部だとか。その昔のいろいろと緩かった時代のこと、現地の博物館の職員から「ミイラを1体あげるよ」と言われたのですが、日本に持ち帰ることができないため、男性器の部分だけ切り取ったのだとか!いろいろと思うところはありますね(笑)

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-21
ブラジルの原住民が制作した魔除け「マノフィク」。握りこぶしの人差し指と中指の間に親指を突き出しています。これは世界の広い地域で女性器を意味するポーズとされ、卑猥であったり侮蔑的なニュアンスとなります。小さな像ですが、この色と形は現代アートのよう。美しいです

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-23
こちらは「天津泥人形」。博多人形の原型となったものとされるとか。一見すると普通の古びた人形のようですが、じつは人形の下側は陰部が露出しています。鏡が貼ってあってそれが見られるようになっています。この手のちょっと卑猥な土産物的なものもコレクション対象だったため、いろんな種類のものが見られました

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-18
東北地方で今も盛んな「蘇民将来」の信仰のあれこれ。ちなみに、この戸棚のような什器もずっと使い続けているものだとか。かっこいいです!

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-20
「禁厭」と題したコーナー。眼病や性病、婦人病などの治癒を祈願して、藁や石などを用いて奉納されたものです

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-24
また、皇室関連のコーナーも。菊の御紋入りのアイテムなどもいろいろと並んでいます

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-25
第二次世界大戦の遺品たち。広島に落とされた原爆で焼けただれた瓦と瓶。さらに、大阪空襲で用いられた小型焼夷弾と焼けた瓦なども

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-26
アメリカ軍の爆撃機「B29」の木製の模型。戦時中の学校で「上空にこんな飛行機が飛んできます。警報が鳴ったらすぐに隠れなさい」というような授業で使われていたものだとか。よく現存してますね!

東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-27
手にとって体感できるコーナー。一見したところ用途がさっぱり分からないものもありますが、館長さんからクイズ形式で教えてもらえます


奥の「森羅萬象窟」はエロワールド

展示室の奥には「森羅萬象窟」と名付けられた、初代館長・九十九黄人氏の元書斎があり、そちらも拝見できます。ここには(主にエロ関連の)コレクションが並んでおり、残念ながら写真撮影は禁止。

お土産物のエログッズから、発禁になったエロ小説のコレクション、春画などがきれいに整理されて並んでいて、なかなかの不思議スポットです。安直に消費されるエロ(駄エロ?)への執念が伝わってくるようで、毒気に当てられそうですが、あっけらかんとしていて嫌な感じはありません。みうらじゅん氏ともまた方向性がちょっと違うのかも。

とくに、創刊号からずらりと並ぶ雑誌『あまとりあ』(※戦後に発刊されたエロ成分多めの大衆誌を代表するもの)は貴重で、よく研究者などからも連絡があるのだとか。また、かつてスタール博士が開催した企画展のパンフレットなども拝見しましたが、これがすべて判じ絵になっていたりして、とても面白かったです

この不思議な世界観は、決して「誰でも楽しめる」ようなものではありませんが、好事家の皆さんはぜひ!


東洋民俗博物館 @奈良市あやめ池-28

石碑に刻まれた九十九黄人氏の言葉「無限の宇宙を有限の人間が知ろうとしている」。貪欲な知の巨人だった方らしい、深みのある言葉ですね!



■東洋民俗博物館

住所: 奈良県奈良市あやめ池北1-5-26
電話: 0742-51-3618
開館日: 無休(※要事前予約)
開館時間: 10:30 - 16:30
駐車場: あり(無料)
アクセス: 近鉄奈良線「菖蒲池駅」から徒歩7分ほど

※実際に拝見したのは「2016年12月6日」でした


■参考にさせていただきました

驚異の性のコレクター・九十九黄人氏「東洋民族博物館」【奈良】 | 日本珍スポット100景
朝日新聞デジタル:【東洋民俗博物館】ウフフ わしゃピンクや - 関西
東洋民俗博物館 | ええ古都なら
なら歳時記:東洋民俗博物館(奈良市) 「早過ぎた奇才」再評価 /奈良 - 毎日新聞






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