涼やかな表情の十一面観音像『慶田寺』@桜井市芝
奈良の渋めの仏さま巡りの初日最後は、桜井市芝の禅寺『慶田寺(けいでんじ)』です。芝村藩織田家の菩提寺として知られるお寺ですが、本堂裏手の小堂にいらっしゃる、平安時代の十一面観音像がお目当てでした。凛々しくも不思議な微笑みをたたえた、とても印象的な仏さまでした。
織田信長の弟・織田長益ゆかりのお寺
桜井市芝にある、曹洞宗に属する禅寺『慶田寺(けいでんじ)』。卑弥呼の墓とも目される「箸墓古墳」(Wikipedia)からほど近い位置にあります。1470年の開基で、芝村藩織田家の菩提寺として知られています。
織田信長の弟・織田長益(有楽斎)は、関が原の戦いの戦功を認められ、徳川家康から大和国城上・山辺二郡から三万石を与えられました。しかし、大坂夏の陣に加わらなかったことから、その所領を三分割し、息子の長政・尚長にそれぞれ一万石を与え、残りを本人の隠居料としました。後に、長政の所領は戒重藩(後の芝村藩)となったそうです。慶田寺は織田家の菩提寺となり、境内には墓があります。
桜井市芝の曹洞宗『慶田寺(けいでんじ)』。奈良には珍しい禅宗寺院です。織田家の菩提寺として知られており、この山門も織田陣屋門を移築したものだとか。なお、拝観には事前予約が必要ですのでお気をつけください
慶田寺の本堂内。ご本尊は「十一面観世音菩薩立像」です。また、他の廃寺から移された十一面観音像などは、本堂裏手に続く納骨堂にいらっしゃいます
像高2m。印象的な微笑みの十一面観音さま
本堂裏手の小さなお堂には、平安時代の「十一面観音菩薩立像」と、鎌倉時代の「阿弥陀如来坐像」がいらっしゃいます。もとは、近隣にあった融通念仏宗の寺院・広読寺に祀られていた仏さまで、廃寺になったのにともない、こちらへ移されたのだそうです。
お堂自体はそれほど広いものではありません。その分だけ仏さまとの距離も近く、至近距離からしっかりと拝見できました。
有名なのは、やはり十一面観音像です。像高203.0cmの欅(ケヤキ)の一木造。表情は穏やかで、スラリと涼やかな印象を受けます。独特の雰囲気のある仏さまですね。
しかし驚いたことに、お寺の方のお話によると、この像は当初は「木芯乾漆像」であり、今の上体を芯として、この上に漆を塗って形作っていたのだそうです!それほど漆が厚塗りされていたとは思えませんが、今の漆をはがした状態とはまた違った表情だったでしょう。さらに、十一面観音像ならではの頭部の化仏も外されていますし、肩から先は後の時代に修復されたものだとか。以前はどのようなお姿だったのか、想像してみるのも面白いですね。
この仏さまの特徴は、顔のパーツがはっきりとしていることでしょう。目は細いのですが力強く、厚めの唇は微笑みをたたえているかのよう。穏やかに浮かんだ木目も美しいですね。頭部や耳など、傷んだ部分も目立ちますが、とても印象的なお姿の仏さまでした。
お堂の内部。阿弥陀如来坐像を中心として、達磨像などの小さな仏さまが合わせて祀られています。堂内は明るく、間近でしっかりと拝見できます
慶田寺の「十一面観音菩薩立像」。2メートルのスラリとしたお姿です。複雑なニュアンスのある表情がいいですね
慶田寺の「阿弥陀如来坐像」。鎌倉時代の作で、像高は138.0cm。いい表情をなさっていますね
不動明王像のアップ。普通は、左手は体の前に来て羂索(5色の縄)を持つものですが、何故か後ろ手になっています。修理の際に間違えてしまったのでしょうか…?
■慶田寺
住所: 奈良県桜井市大字芝753
電話: 0744-42-6209
宗派: 曹洞宗
本尊: 十一面観音
創建: 1470年
開基: 海門興徳和尚
拝観料: 志納
拝観日: 要事前予約
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR巻向駅・三輪駅から徒歩約15分
■拝観料について
拝観料金は決められておらず、「志納」となっています。迷うところですが、一人500円程度を目安とするといいでしょう。なお、お釣りの用意などは無いことが多いので、事前に小銭を用意しておくようにしましょう。
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