白鳳時代の巨大な国宝金銅仏!『蟹満寺』@木津川市
京都南部の南山城にある『蟹満寺』へお詣りしてきました。2010年に建て替えられた真新しい本堂には、白鳳時代の丈六サイズの金銅仏「釈迦如来坐像(国宝)」がいらっしゃいます。また、「蟹の恩返し」説話で有名なお寺だけに、蟹の紋様探しも楽しめました!
2010年に落慶法要が営まれた本堂
京都府木津川市にある『蟹満寺(かにまんじ)』は、白鳳時代に秦氏の一族によって創建された考えられている古刹です。
創建について詳しい資料もなく、現在は真新しい本堂が建つのみですが、1990年の発掘調査では、7世紀末の大規模な寺院建築の遺構が発掘されました。創建当時の本堂は、現在の奈良・薬師寺の金堂に匹敵するほどの規模であったことが判明しています。
現在の蟹満寺は、木津川沿いを走っている国道24号線を標識にそって東に折れ、細い道路を1kmほど進むと現れます。境内は決して広くなく、真新しい本堂が建っています。
本堂は、1759年に建て替えられて以来、250年ぶりの改築が終わり、2010年4月に落慶法要が営まれたそうです。しかし、この日は本堂前の地面を掘り返しての工事が行われていましたので、ちょっと騒々しい雰囲気でした。
木津川市の古刹『蟹満寺(かにまんじ)』。本堂は新しく建てなおされ、2010年に落慶法要が営まれたばかりでピカピカです。境内にはほぼ本堂が建つのみ。この中に国宝の御本尊「釈迦如来像」がいらっしゃいます
今昔物語集の「蟹の恩返し」で有名です
蟹満寺といえば、平安時代以降は「今昔物語集」に見える「蟹の恩返し」の説話で有名になったお寺です。
昔、慈悲深い夫婦と、信仰心に篤い娘が住んでいました。ある日、娘は村人に捕まった蟹を買い取って逃がしてやりました。また、娘の父は蛇が蛙を飲み込もうとしているのを見て、蛙を助けたい一心で、蛇に対して「もしその蛙を放してくれたら娘の婿にしよう」と言ってしまいます。すると蛇は蛙を放し、姿を消します。
父は大変後悔しましたが、その夜、衣冠をつけた紳士が門前に現れ、昼間の約束を迫ってきました。嫁入り支度を言い訳に、三日後に改めて来るようにと男を帰しましたが、その日が来ても約束を守れません。蛇は本性を現して暴れ始めました。娘がひたすら観音経を唱えていると、観音さまが現れ、「決して恐れることなかれ」と告げ姿を消しました。
夜が明けて戸外へ出てみると、ハサミで寸々に切られた大蛇と、無数の蟹の死骸が残されていたのです。
親子は観音さまのご守護に感謝し、娘の身代わりとなったたくさんの蟹と蛇の霊を弔うためにお堂を建て、観音さまを祀りました。
この説話から蟹満寺と名付けられとか。また、毎年4月18日は珍しい「蟹供養放生会」が営まれ、全国からカニを扱う料理店や旅館関係者が参列し、泉にサワガニを放流しているそうです。何ともユニークなお寺ですね。
蟹満寺の本堂内にも、ガラスケースに蟹グッズ(竹細工・おりがみ・鉄器・器・灰皿など)が飾られていましたし、いたるところに蟹モチーフの紋様が見られます。気づいたものだけ写真に収めておきました。
白鳳時代の御本尊と静かに対面できます
蟹満寺の御本尊「釈迦如来坐像(国宝)」。像高2.4メートル、重さ2.2トンの金銅製の巨大仏で、この時代の丈六サイズの金銅仏となると、飛鳥寺の飛鳥大仏、興福寺の仏頭、薬師寺の薬師如来坐像などが残るのみというのですから、本当に貴重なものです。
この時代のここまで立派な仏さまが、当時の中央だった奈良の都から離れた土地に祀られていたというのは、とても不思議な話です。このため、以前より他で祀られていたものが、いつからか蟹満寺に移されたという説も出されていたとか。しかし。本堂の改修に伴う調査から、創建以来ずっと不動だったことが判明したそうです。
こんな大きく重い仏像は、何かあっても外へ持ち出せません。よく見れば修復跡も見られますが、白鳳時代から大きな戦禍に巻き込まれたりせずに、この時代まで残ってくれたものだと感心してしまいました。
そのお姿は初期の金銅仏らしく、目は杏仁型に近く、全体的にのっぺりと感じます。薄い衣を身にまとい、堂々とした体躯ながらも、ウエストのくびれが目立ちました。ゆったりとした結跏趺坐で、本当に堂々としていらっしゃいます。また、螺髪(らほつ)も白毫(びゃくごう)も見られず、より人間に近いお姿ですが、指の間の縵網相(まんもうそう。水かき)が立派なのが目立ちます。
雰囲気としては、やはり飛鳥寺の飛鳥大仏に近いでしょうか。同じ金銅仏でも薬師寺の薬師如来像よりもふくよかで、素朴さを感じます。飛鳥大仏は、修復を重ねてそれほど原型をとどめていないとされるのに対して、蟹満寺の御本尊は修復も目立たず、白鳳時代のほぼそのままです。
観光地から遠く離れた場所にあるため、観光客も多くありませんから、そんな方とほぼ一対一で対座できるチャンスも多いでしょう。お会いしておきたい仏さまですね!
本堂前の案内看板。本尊「国宝 釈迦如来 白鳳時代名作 丈六金銅仏」。何やら漢字だらけで素っ気ない書き方ですが、こんな土地にこんな巨大な金銅仏がいらっしゃるのはすごいことです!
蟹満寺の御本尊で国宝に指定されている「釈迦如来像」(ガイドブック「南山城の古寺」より)。像高2.4mの堂々としたお姿。螺髪と白毫がなく、指の間の縵網相(まんもうそう。水かき)が立派なのが特徴的です。修復の後も見られますが、この時代のこのサイズの仏さまが、ほぼ原型どおりに残されているのはすごいことですね!
蟹満寺でいただいた御朱印です。達筆!もちろんここにも蟹の印があります
■蟹満寺
HP: 参考サイト(木津川市観光ガイド)
住所: 京都府木津川市山城町綺田浜36
電話: 0774-86-2577
宗派: 真言宗智山派
本尊: 釈迦如来(国宝)
創建: 白鳳時代(680年前後)
開基: 不明
拝観料: 500円
拝観時間: 8:00 - 16:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR「棚倉駅」から、徒歩約20分
■参考にさせていただきました!
蟹満寺(かにまんじ) - 京都府木津川市のホームページ
蟹満寺 - Wikipedia
asahi.com:蟹満寺(木津川市)-マイタウン京都