4体の円空仏が祀られた小さなお堂『栃尾観音堂』@天川村
天川村栃尾にある『栃尾観音堂』。江戸時代の僧侶であり、12万体もの仏を彫ったとされる「円空(えんくう)」作の4体の仏像が祀られています。荒々しいノミ跡を残しながら、円空仏らしい穏やかな表情が愛らしく、デザイン的にも優れています。この日は、お堂の管理を行う瀬上さんのお話も伺えて、楽しくお詣りさせていただきました。
大峰山で修行中の円空が彫った4体の仏像
天川村和田の『永豊寺』をお詣りしてから、比較的近い栃尾地区にある『栃尾観音堂』(紹介記事)へ伺いました。
以前にお詣りした際に詳しく書いていますが、江戸時代前期の僧侶であり、生涯で12万体もの仏を彫ったとされる「円空(えんくう)」(Wikipedia)作の4体の仏像が祀られています。
円空は岐阜出身で、関東から北海道まで行脚してたくさんの仏像を遺しましたが、西日本でその像が見られるところは多くありません。まだ修行を始めて間もないころ、天川村の山上ケ岳などで荒行を行い、その際に像を彫ったとされています。
天川村栃尾地区にある『栃尾観音堂』。天河大弁財天社などのさらに奥にあり、道沿いに看板などが出ているので迷うこともないでしょう。小さな集落の無住のお堂ですが、ちゃんと公衆トイレも完備されています。日中はお堂の鍵が開けられており、普段から(ガラス越しですが)間近で拝見できます
堂守の瀬上さんのお話も伺えました
また、この日は私たちの車が駐車場に入ってくるのを見つけた、お堂の管理を行う堂守役の瀬上さんが声をかけてくださいました。
「内陣のガラスを開けてお詣りもできます。ただし、その際には維持協力金として、お念珠を500円で購入していただくことになります」というような内容のことを説明してくれました(※「ガラス越しで結構です」とお断りすることもできます)。
私たちにとっては好都合です。拝観料をお納めするつもりでお念珠をいただき、わずかばかりですが収めさせていただきました。
これは、堂守の瀬上さんに事前に電話予約しておくが、ちょうどご在宅で参拝客の姿を見つけられたときに限ると思われます。
瀬上さんからいろんなお話を伺いましたが、「もうすぐ膝と心臓の手術がある」というような大変なことを事も無げにおっしゃっていて驚きました!入院期間もあるでしょうし、家を空ける日も増えそうですから、日によってシステムが変動になっている可能性もあります。
一般的な観光寺院とは勝手が違って面食らうかもしれませんが、地方の小さなお堂を回る際にはよくあることです。臨機応変に対応してください(笑)
内陣のガラス扉を開けてくれる堂守の瀬上さん。4月中旬(おそらく第3日曜日)観音堂の前で法要とお祭りが催されるのだとか。ちょうど堂前の桜が咲く頃で、地元のお料理が振る舞われたりするそうです。瀬上さんから熱心にご説明いただきましたし、ぜひ行ってみたくなりました!
(過去のニュース「観音会式:ほほ笑みの「円空仏」拝観 天川・栃尾観音堂で21日 /奈良 - 毎日新聞」)
優しい表情の中尊「聖観音菩薩立像」
栃尾観音堂に祀られている円空作の仏さまは、中尊が「聖観音菩薩立像」、脇に「大弁財天女立像」「金剛童子像」「護法神像」の4体です。
いずれも杉材が用いられ、円空が法隆寺に住んでいた1670年~1671年ごろ、大峯山に入山した際に刻んだものとされています。
「聖観音菩薩立像」(像高137.0cm)の背面には、梵字と花押らしき墨書が見られるとか。肩の近くに開けられた孔からは、小さな胎内仏(大日如来)と硬玉の仏舎利、「金剛界五仏」「寛文」などが書かれた紙片が見つかっており、合わせて展示してありました
円空仏としては初期に近い作のためか、荒々しいノミ跡を残しながら、円空仏らしい穏やかな表情を生み出していながらも、比較的大きめで手の込んだ作りになっています。お顔のところに木材のひび割れが来てしまっているのも、円空らしいですね。
中尊の「聖観音菩薩立像」と「金剛童子像」。ガラス越しでもよく見えるようになっていますが、やはり開けてもらえるとより近づける気がしますね!
聖観音像の肩のところに埋め込まれていた大日如来像。その隣にある白い玉は、硬玉の仏舎利だとか。当然ですがかなり小さいです
ふくよかで素朴な「大弁財天女立像」
向かって左手に立つ「大弁財天女立像」(像高85.7cm)。とてもふくよかで、優しい表情の仏さまです。胸の前に宝珠をかかげ、素朴ながらすっきりと美しい造形ですね。
弁財天社(天河大弁財天社)が有名な天川村ですから、円空もそれをイメージしたりしたのでしょうか?
三尊像の一体となる「金剛童子像」
中尊の右手に立つ「金剛童子像」(像高84.3cm)。左側の弁財天像とほぼ像高も同じですし、胸の前で手を重ねる様子も、衣紋の表現も似ています。はっきりとした意図は分かりませんが、聖観音菩薩立像をご本尊に、大弁財天女立像と金剛童子像を脇侍とする、三尊像として造像したのでしょう。
残念なのは、弁財天像だけがやや離れた場所に立っているため、三尊の位置のバランスがよろしくないことですね。いずれもとても美しい仏さまですから、いつか並んだお姿を拝見してみたいです!
最初期の作となる円空らしい「護法神像」
右端におわすのが、もっとも小さな「護法神像」(像高49.7cm)です。
円空は護法神像を好んで刻んでおり、生涯で多数作品を遺しましたが、この像がその最初の一体だったとされており、とても貴重なものなのだとか。
髪や顔の部分のノミ跡は荒々しく、体はほとんど角材のままだったり、円空仏らしさがよく現れていますね。どこかやんちゃな表情にも見えて、とても愛らしいです!
今でも円空の気配が残っているかのよう
栃尾観音堂の脇に、円空お手植えと伝わる「円空銀杏」があります。現地の説明書きの平成4年の解説には「樹齢320年以上(推定)」とありました
また、すぐ脇の小川を辿って行くと、円空がこもって像を彫ったと伝わる場所があるのだとか。円空がこの土地に来たのは1670年ごろ、今から300年以上も昔のことですが、ずっとその気配が消えずに残っているかのようです
■栃尾観音堂
HP: 参考サイト:天川村役場
住所: 奈良県吉野郡天川村栃尾
電話: 0747-65-0325(瀬上章さん)
拝観料: 無料
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄吉野線「下市口駅」から、奈良交通バス(中庵住行き)で約1時間30分、「栃尾」下車すぐ
※基本的に無料でお詣りできますが、500円のお念珠を購入すると、堂守の瀬上さんが内陣のガラス戸を開けてくれます。お堂の維持管理に役立てられますので、ぜひご協力ください。
※実際にお詣りしたのは「2015年2月22日」でした
■参考にさせていただきました!
天川村栃尾観音堂円空仏
奈良、天川村栃尾観音堂の円空仏 - 愛しきものたち
円空微笑み物語-円空連合ホームページ
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