2012-08-15

癒しの微笑!円空作の仏さま4体『栃尾観音堂』@天川村

癒しの微笑!円空作の仏さま4体『栃尾観音堂』@天川村

関西では珍しく、江戸時代初期の遊行僧「円空(えんくう)」が刻んだ仏像が4体もおわす、天川村栃尾にある『栃尾観音堂』へお詣りしてきました。ラフな彫り方で荒々しく見えながら、本当に優しい微笑をたたえている、円空仏らしい愛らしい仏さまでした。


生涯に12万体の仏を刻んだ遊行僧・円空

日本全国を行脚し数多くの仏像を遺した、江戸時代前期の遊行僧「円空(えんくう)」(Wikipedia)。生涯に12万体もの仏像を彫ったと伝わる円空の仏像は、簡素なデザインと稚拙にさえみえる素朴な造形ながらも、不思議な微笑みをたたえています。


円空(えんくう、寛永9年(1632年) - 元禄8年7月15日(1695年8月24日))は、江戸時代前期の行脚僧であり、全国に木彫りの「円空仏」とも呼ばれる独特の作風を持った仏像を残したことで知られる。

円空は生涯に12万体の仏像を彫ったと伝えられる。現存するものでも5000体を超える。 円空仏は全国に所在し、北は北海道・青森、南は三重県、奈良県までおよぶ。 その中でも、岐阜県飛騨、美濃地方、愛知県尾張地方の各地には、円空の作品と伝えられる木彫りの仏像が数多く残されている。うち愛知県内で3000体以上、岐阜県内で1000体以上を数える。 多作だが、作品のひとつひとつがそれぞれの個性をもっている。

円空仏はデザインが簡素化されており、ゴツゴツとした野性味に溢れながらも不可思議な微笑をたたえていることが特徴で、一刀彫という独特の彫りが円空仏の個性を引き立てている。一刀彫というのは鉈一本で彫り出した事に由来するが、実際には多数の彫刻刀によって丹念に彫られており、鉈で荒削りで彫ったに過ぎないというのはただの宣伝である。円空としては民衆が気軽に拝める、現代で言えば量産型の仏像として製作し、野に置かれる事を望んでいたのだが、そのデザインが芸術的に高く評価されたため、大寺院で秘仏扱いされる事もあった。


12万体もの仏像を彫ったとされる円空ですが、岐阜県生まれで主に北国へ向かうことが多かったため、関西で円空仏が見られるお堂は多くありません。しかし、奈良県天川村の山中の小さなお堂『栃尾観音堂』には、4体もの円空仏が祀られているのです。円空仏が群像として見られるのは、近畿以西では天川村だけなのだそうです。

円空は、40代に差し掛かった寛文12年(1672年)から延宝3年(1675年)に、二度大峯山に入り、山上ケ岳などで厳しい真冬の越年修行を行いました。その際に栃尾の集落の小さな祠にこもって仏像を彫ったとされています。


三百余年前から村人の厚い信仰によって守られてきた栃尾観音堂の御尊体は弘法大師一夜の作と伝えられてきたのであるが、昭和39年頃より円空佛に深い関心を寄せていた地元の一部の者が円空の像ではないかと熱心に問いかけていたところ、昭和47年秋の学術調査となり、これによって江戸初期の遊行僧「円空」(1632~1695)の作であることが確認されました。

境内の説明看板より


境内の説明には、「弘法大師一夜の作と伝えられてきた」とあります。弘法大師伝説が幅広いエリアで見られる関西らしいですね。今でこそ、作風からして円空らしいと思えますが、その当時はそんなことを言い出すのもはばかられたのかもしれません。


集落の中で大事に守られてきた小さなお堂

4体の円空仏が祀られている『栃尾観音堂』への道順は、309号線を南下して天川村へ入り、村内の大きな交差点「川合」を53号線へ。天河大弁財天社や天の川温泉の表示をスルーして直進すると、10数分で看板が見えてきます。川を渡ってすぐのところにあり、道幅は広くありませんが、民家も観光客も少ない場所なので、運転もそれほど難しくはありません。

お堂は決して大きなものではありません。しかし、駐車場は無料で公衆トイレも設置してあり、毎日ちゃんとお堂は開け閉めされていて、事前予約なしでも誰でも円空仏をお詣りできます。地元の集落の方が大事に守っていることが伝わってきて、とても気持ちよくお詣りできました。


栃尾観音堂(円空仏)@天川村-01

天川村の栃尾集落の中にある『栃尾観音堂』。数台分の無料駐車場はもちろん、公衆トイレまで設置されているというのが嬉しいですね。お堂の前の道は細めですが、メインの通りからそれほど奥まっていないので、運転も難しくありません

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-02
境内には「円空仏」ののぼりも。お堂は小さいながらも、おそらく集落の方々の手で毎日ちゃんと開け閉めされ、日中であれば誰もが拝観できるようになっています。きれいに手入れが行き届いていて、大事にされていることが伝わってくるようでした

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-03
「円空佛について」と題した説明看板。その前には、堂内に祀られている「護法神像」と「聖観音菩薩立像」を模刻した像が安置されていました

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-04
栃尾観音堂の堂内の様子。俳優の滝田栄さんのサインなどが飾られていました。円空仏4体はガラス越しに拝見するようになっています。お盆だったこともあってか、きれいな花が手向けられていました


円空の「護法神像」の最初の作品もあります

栃尾観音堂では、いずれも円空作の4体の仏像が祀られています。

中尊が「聖観音菩薩立像」(像高137.0cm)、向かって左手に「大弁財天女立像」(像高85.7cm)、右手には「金剛童子像」(像高84.3cm)と「護法神像」(像高49.7cm)。

いずれも杉材が用いられていて、円空が法隆寺に住んでいた1670年~1671年に、大峯山に入山した際に刻んだものとされています。弁財天社が有名な天川村に、こんな穏やかな表情の弁財天さまがいらしゃるのも面白いですね。また、生涯で多数の護法神像を刻んだ円空ですが、こちらがその最初の一体だったとされており、とても貴重なものなのだそうです。

そんな知識は無くても、穏やかな微笑みをたたえた素朴な円空仏の姿は、大きな優しさを感じさせてくれます。何度でもお会いしたくなる仏さまでした。


栃尾観音堂(円空仏)@天川村-06

向かって左が「金剛童子像」(像高84.3cm)。右が「護法神像」(像高49.7cm)。円空は生涯に数多くの護法神像を刻みましたが、その最初の一体だったとされるものです。後の作品では、頭部が長く伸びたり、どこかやんちゃな印象のものもみられますが、こちらはシンプルに笑みをたたえたお顔立ちですね

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-07
向かって左手にいらっしゃるのは「大弁財天女立像」(像高85.7cm)。やや見づらいですが、お顔はふっくらとしていて、穏やかな優しい笑顔です。杉の木目も美しいですね。栃尾観音堂のパンフレットの表紙にも、この方のアップの画像が使用されていました

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-08
中央の本尊の位置にいらっしゃる「聖観音菩薩立像」(像高137.0cm)。背面には梵字と花押らしき墨書が見られるそうです。胎内からは小さな胎内仏と硬玉の仏舎利、「金剛界五仏」「寛文」などが書かれた紙片が見つかり、合わせて展示してありました

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-09
円空作「聖観音菩薩立像」の表情。顔の中央付近に大きなひび割れがありますが、それすらも気にしないというような笑顔ですね。その土地々々の樹を荒削りした仏さまですが、不思議な魅力が感じられます

栃尾観音堂(円空仏)@天川村-11
栃尾観音堂の裏手すぐには、円空お手植えと伝わる「円空銀杏」があります。平成4年の案内では、「樹種 雌株、幹回5m、樹高30m以上(推定)、樹齢320年以上(推定)」とありました


天川村でお詣りしたい社寺仏閣

天川村の社寺仏閣といえば、芸事の神さまとして知られる『天河神社(天河大弁財天社)』と、山岳信仰の中心となっている『龍泉寺』などが有名です。天河弁財天は、栃尾観音堂からも距離的に近いですから、ぜひ合わせてお詣りしてみてください。


また、栃尾観音堂の堂内のポスターには、天川村の西エリアの「秘仏三尊像」として、「永豊寺」釈迦如来像(平安時代)、「光流寺」阿弥陀如来坐像(平安時代)が紹介されていました。合わせてこちらにお詣りさせていただくのもいいですね。


栃尾観音堂(円空仏)@天川村-05

天川村の西エリアの「秘仏三尊像」というポスターもありました。向かって左が「永豊寺」の釈迦如来像(平安時代)、中央が栃尾観音堂の円空作の聖観音像、右が「光流寺」の阿弥陀如来坐像(平安時代)。歴史ある土地だけに、貴重な仏さまがいらっしゃいますね。また日を改めてお詣りさせていただきたいと思います



■栃尾観音堂

HP: 観光データベース:見る/天川村役場
住所: 奈良県吉野郡天川村栃尾
電話: 0747-63-0999(天川村総合案内所)
拝観料: 無料
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄吉野線「下市口駅」から、奈良交通バス(中庵住行き)で約1時間30分、「栃尾」下車すぐ

※基本的に無料でお詣りできますが、500円のお念珠を購入すると、堂守の瀬上さんが内陣のガラス戸を開けてくれます。お堂の維持管理に役立てられますので、ぜひご協力ください。


■参考にさせていただきました!

天川村栃尾観音堂円空仏
奈良、天川村栃尾観音堂の円空仏 - 愛しきものたち
円空微笑み物語-円空連合ホームページ


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