2010-09-01

秘仏・蔵王権現の百日特別ご開帳『金峯山寺』@吉野町

秘仏・蔵王権現の百日特別ご開帳『金峯山寺』@吉野町

平城遷都1300年祭の一環として、2010年9月1日からの100日間、吉野山の『金峯山寺』で、秘仏の御本尊「蔵王権現立像(金剛蔵王権現像)」が特別公開される「百日特別ご開帳」が始まりました。さっそく初日にお会いしてきましたが、期待していた以上の感動体験ができました!


修験道の聖地で「金峯山寺の特別な百日」開始

吉野町にある『金峯山寺(きんぷせんじ)』。桜の名所として有名な吉野山に建つ、山岳寺院です。「役行者(えんのぎょうじゃ)」の創建と伝えられ、古くから山岳信仰の霊地とされ、神道・仏教・道教などが習合した宗教「修験道」の聖地となりました。

この吉野山一帯は、古くから修行者の鍛錬の場となり、9世紀後半には、京都・醍醐寺を開いた「聖宝(しょうぼう)」によって再興され、蔵王権現を安置しました。蔵王堂を中心として、中世には100を超える塔頭を構えるようになり、後醍醐天皇が南朝を開いたことでも知られています。

しかし、1868年の「神仏分離令」によって、吉野山の神仏習合の信仰は禁止され、1872年には「修験道廃止令」も発布されました。金峯山寺も一時は廃寺に追い込まれましたが、無事に復活し、現在に至っています。

金峯山寺の御本尊として祀られている、3体の「蔵王権現立像(または金剛蔵王権現像。重要文化財)」は秘仏とされ、通常は一般公開されていません。しかし、平城遷都1300年祭の一環として、2010年9月1日から「百日特別ご開帳」が行われ、迫力のある姿を拝見できるようになっています。

私たちは、この百日特別ご開帳の初日にお参りしてきましたが、桜の季節のように混雑していることもありませんでした。しかし、吉野の参道には数十名の山伏姿の方たちの行列が見られ、特別な日であることを実感できました。


金峯山寺@吉野町-01

金峯山寺の入口となっている国宝建築物「二王門(または二王門)」。本堂である蔵王堂が南向きに立っているのに対し、北を向いて建てられています。2階建て、入母屋造りの重厚な門で、1456年に再興されました

金峯山寺@吉野町-02
仁王門前には、「百日特別開帳」の看板が立っていました(2010年12月9日まで)。特別な一日なのですが、平日ということもあって静かなものです。近所のお子さんが、石段にボールをぶつけて遊んでました(笑)

金峯山寺@吉野町-03
金峯山寺・仁王門の「阿形像」。像高約5.5mもある巨像で、室町時代の仏師・康成の作とされています

金峯山寺@吉野町-04
金峯山寺・仁王門の「吽形像」。風雪にさらされていますが、力強さは全く失われていません


雄大な建築物「蔵王堂(国宝)」の内陣へ

金峯山寺の本堂「蔵王堂(国宝)」は、高さ34mにも及ぶ巨大木造建築物です。ただ大きいだけではなく、無骨な厳しさと、桧皮葺の屋根の優美さを感じさせてくれる建物です。入母屋造りで2階建てに見えますが、2階の屋根に見えるのは裳階(もこし)で、実際には巨大な平屋建てです。

内部には、これも巨大な厨子が設置され、ここに御本尊である3体の「蔵王権現立像(重文)」が安置されています。通常時期の蔵王堂では、外陣から厨子の周りの回廊部分のみの拝観となりますが、今回の「百日特別ご開帳」では、内陣まで立ち入らせていただけます。

通常時期には、秘仏の御本尊にはお会いできませんが、鎌倉時代後半に作られた(御本尊たちよりも古い)、旧安禅寺の御本尊だった「蔵王権現立像(重文)」などもいらっしゃいます。こちらも像高455cmという大きさで、木肌が見えてやや柔らかな印象のある仏さまです。御本尊とは色合いあが違いますが、もちろん右足を高くあげる姿は共通していますので、通常時期でも蔵王権現さまの迫力を十分に感じることができます。


金峯山寺@吉野町-05

金峯山寺の本堂であり、吉野のシンボルとなっている「蔵王堂(国宝)」。これまでに何度も災禍にあっており、現在の建物は1592年の再建です。高さ34m・四方36mという大きさで、木造の古建築としては、東大寺大仏殿に次ぐ大きさなのだとか。桧皮葺の屋根も美しいですね

金峯山寺@吉野町-06
金峯山寺・蔵王堂を別角度から。この中に、像高6m~7mの、巨大な3体の御本尊「蔵王権現立像(重文)」がいらっしゃいます。山伏姿の信者さんたちが鳴らす法螺貝の音と、読経の声が響き、修験道の根本道場らしい荘厳な雰囲気でした

金峯山寺@吉野町-07
蔵王堂の向かって右手には、拝観受付の特設テントが設置されていました。まずはここで拝観料金を収めてください(大人1,000円、中高生800円、小学生600円)。御朱印もここで。「護摩木Deストラップ」とロゴ入りの「エコバッグ」がいただけますので、エコバックに靴を入れて本堂へお参りします


3体の巨大な「金剛蔵王権現」は大迫力!

私は、金峯山寺の3躯の蔵王権現立像とお会いするのは、この日が初めてでした。平城遷都1300年祭で、様々なお寺の様々な仏さまがご開帳されていますが、その中でも一番楽しみにしていたくらいです。

初めてお会いした蔵王権現さんは、想像以上の大迫力でした!

中尊は像高728cm、両脇の像も6m前後という大きさに圧倒されますし、怒りがほとばしるような憤怒の表情で私たちを見下ろしています。光背には火焔が、頭髪は逆立ち目を吊り上げ、口を大きく開いて牙をむき出しにしていらっしゃるのです。また、3躯ともに右足を大きく上げ、右手は三鈷杵(さんこしょ)を握って大きく振りあげています。腰に当てた左手は、人差し指と中指を伸ばした刀印(とういん)を結び、静かながらも力強さを感じさせてくれるようでした。

この三尊は、その昔、金峯山寺を開いた役行者が世の乱れを憂いて、衆中を救済する仏の出現を祈ったところ、過去・現在・未来の三世を救済するために、本地仏である釈迦如来・千手観音・弥勒菩薩が現れたのだそうです。しかし、ありとあらゆる悪行がはびこり、仏をも恐れぬ悪人が増えた時代にあって、本来の仏の姿で登場するのではなく、悪を調伏させるためにこのような憤怒の形相に姿を変えている(権化した)のだとか。

普段は優しい表情のお釈迦さまたちが、こんな厳しい姿に変化したのかと思うと、ちょっと意外な感じがするかもしれませんね。

そんな蔵王権現さまたちと対面していると、本当に身がすくむような圧倒的な力が感じられました。仏像としての造りも見事なものですし、彩色も本当に美しく残っていて、思わず見とれてしまいますが、決して穏やかに癒されるような雰囲気ではなく、自然と背筋が伸びるようでした。

なお、「百日特別ご開帳」の期間中には、蔵王堂の裏手にある通常は非公開のお堂「本地堂」にもお参りさせていただけます。2000年に建てられたまだ新しい堂宇ですが、蔵王堂の本尊3体の本地仏である、釈迦如来(過去)・千手観音(現在)・弥勒菩薩(未来)の三世仏が祀られていました。

この日は色々とお寺の方のお話も伺うことができました。その中で、印象的だった言葉を要約してご紹介しておきます。

「『秘仏であるはずなのに、2004年にも世界遺産登録の時に御開帳を行っている。気軽に公開し過ぎではないか?』という声もある。しかし、今は親が平気で子を殺めてしまうような時代になってしまい、まさに役行者さんの時代に似てきてしまっている。そんな時代だからこそ、蔵王権現様を公開することに意味がある」


金峯山寺@吉野町-09

金峯山寺の「百日特別ご開帳」のポスター。「日本最大秘仏 金剛蔵王権現像」の文字が見られます。キャッチコピーは「すべてを、許してくださいます。厳しく叱ってくださいます。」 激しい憤怒の表情の巨像が三躯も並んだ姿は、夢に出てきそうなほどの迫力でした!写真で見るのと、蔵王堂の中でお会いするのでは、全く印象が違いました

金峯山寺@吉野町-10
蔵王堂のお参り前には、特別な百日を祝うかのように、こんなに神々しい日が差していました

金峯山寺@吉野町-12
吉野の町にも、いたるところに特別公開を祝う提灯が飾られていました。こちらは「南無蔵王大権現」の提灯です

金峯山寺@吉野町-13
こちらは「南無神変大菩薩」の提灯です。神変大菩薩とは、役行者さんのこと。他の土地ではなかなか見られないでしょう


「護摩木Deストラップ」と「エコバック」も

最後に、この百日特別ご開帳でいただいた「護摩木Deストラップ」とロゴ入りの「エコバッグ」もご紹介しておきます。どちらも今風のアイディアグッズですね。思わず関心してしまいました!


金峯山寺@吉野町-14

この日の拝観でいただいたもの(チラシは無料配布のものです)。靴入れとしていただいたのが、金峯山寺のロゴ入りエコバックです。普通のお寺ではビニール袋を使ってお参りが終わったら回収する手間もかかってしまいますが、エコバックになっていると後々使えていいですね!

金峯山寺@吉野町-15
こちらも特別にいただける「護摩木Deストラップ」。向かって右の状態で手渡されます。上の部分は折りとって木製のストラップに。下の部分は願い事を書き入れて護摩木として奉納するという優れもの。よく考えられていますね

金峯山寺-ご朱印
金峯山寺でいただいた御朱印です。「百日特別ご開帳」の初日にいただいた記念の御朱印になりました


金剛蔵王権現像の御開帳情報はコチラ

●特別公開に関しては「日本最大秘仏 金剛蔵王権現像 百日特別ご開帳」このページでご確認ください。期間を通じて拝観できるフリーパス拝観券なども用意されています(平城遷都1300年祭のページにも情報があります)。


●吉野での宿泊者限定で、金峯山寺・蔵王権現像の「夜間特別拝観(Google検索結果)」も企画されています。夜の蔵王権現さんにお会いできるなんて、この期間以外にはあり得ないでしょう。ぜひ吉野に宿泊してみてください。実際に宿泊・夜間拝観した方のお話も伺いましたが、雰囲気が全く違ったそうです!



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■金峯山寺(国軸山)

HP: http://www.kinpusen.or.jp/
住所: 奈良県吉野郡吉野町吉野山2498
電話: 0746-32-8371
宗派: 金峯山修験本宗
本尊: 蔵王権現3体(重要文化財。秘仏)
創建: 7世紀後半
開基: 役小角(役行者)
拝観料: 境内自由、蔵王堂拝観は400円
拝観時間: 8:30 - 16:30
駐車場: 無料の下千本駐車場を利用のこと(桜の季節は1,000円。15分ほど歩きます)
アクセス: 近鉄吉野駅からロープウェイ「吉野山」下車。徒歩10分

※世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されています






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