2009-10-05

風光明媚な紫式部ゆかりの寺『石山寺』@滋賀県大津市

『石山寺』@滋賀県大津市

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りの流れで、「三井寺」に続いて、同じく大津市内にある『石山寺(石光山)』へ行ってきました。

平安時代には、宮廷の女人たちの間で、石山寺に参籠することが流行った・・・というほど風光明媚で、紫式部・清少納言・和泉式部などとも縁の深い素晴しいお寺でした!


紫式部・清少納言など「石山詣」の寺

『石山寺(石光山)』は、滋賀県大津市の、琵琶湖から南へ流れ出る「瀬田川」沿いに建つお寺です。

創建は747年のこと。寺伝では、大仏建立に使用する黄金が足りないことを憂いた聖武天皇は、良弁(ろうべん)上人に金鉱の発掘を命じました。良弁が吉野の地で祈っていると、蔵王権現のお告げがあり、瀬田の土地で祈るように告げられます。瀬田に赴いて祈っていると、次は比良明神が現れ、白い岩を指差して「そこが霊応の地だ」と告げます。

良弁は、聖武天皇の念持仏であった金銅の如意輪観音像を岩の上に置き、そこにお堂を建てて安置しました。すると、ほどなく東北地方で砂金が発見されたというニュースが届き、無事に大仏建立の事業は進められました。

伝承に出てくる「白い岩」とは、石灰岩と花崗岩が熱せられて変質した「硅灰石(けいかいせき)」のこと。石山寺の境内には、巨大な硅灰石が重なり合う光景が見られます。

風光明媚な石山寺は王朝貴族に愛され、平安時代には宮廷の女人たちの間で、石山寺の観音堂に参籠し、読経しながら一夜を過ごす「石山詣」が大流行しました。紫式部がここで「源氏物語」を構想したとされるほか、清少納言・和泉式部、「蜻蛉日記」の藤原道綱の母、「更級日記」の菅原孝標の女など、数多くの日記や随筆に登場しています。

また、境内にある「芭蕉庵」には俳人・松尾芭蕉が逗留し、「石山の 石にたばしる あられかな」など、数多くの句を残しています。島崎藤村も石山寺に2ヶ月ほど滞在したこともあるとのことで、古くから文化人に愛されてきたお寺なのだそうです。


東大門には「運慶・湛慶作」の仁王像

瀬田川沿いに建つ『石山寺』は、門前に何軒かの土産物屋が並び、何台かのタクシーが客待ちをしているような立派なお寺でした。

その入口となる「東大門(重文)」には、何と「運慶・湛慶作」とされる仁王像がいらっしゃいます!それほどのものでありながら、金網なども張られておらず「大丈夫なの?」と心配になってしまうほどの無防備さでした。


石山寺@大津市-01

滋賀県大津市にある『石山寺』。瀬田川の西岸に建ち、門前には数軒のお土産屋さんが並ぶ大きなお寺です。入口となる「東大門(重文)」は1190年の建築で、桃山時代に大規模な修理が行われています。入母屋造り・本藁葺きの堂々たる門でした

石山寺@大津市-02
石山寺の東大門には、ご本尊の特別御開帳の期間中のため、鮮やかな旗が立てられていました

石山寺@大津市-03
石山寺の提灯と仁王像・阿形

石山寺@大津市-04
力強い仁王像・阿形。ものすごい力感ですが、右手の手首以下の付き方が・・・などと思ってしまいます(後世に補修されたものか?)。しかし、後になってからパンフレットを見ると、サラッと「運慶・湛慶作の仁王像」と書いてあって驚きました!こんなところにも運慶像があったんですね!

石山寺@大津市-05
巨大わらじをバックにした仁王像・吽形。口の部分が劣化してしまっているのが残念です。過去に見た仁王像の中でも特に見事なものでしたが、金網もガラスも張らずに大丈夫なんでしょうか?


境内には巨大な岩がゴロゴロあります

東大門をくぐると、しばらく真っ直ぐの参道が続きます。すると目に付くのは巨大な石。石山寺の名前の由来にもなった巨石がゴロゴロとあるのが見えてきます。

なお、石山寺の全体を歩くには、1周30分ほどで済みそうでしたが、この日は時間が無かったため、奥までは行けませんでした。「紫式部像」や源氏物語の「光堂」などは見ていません。


石山寺@大津市-06

東大門をくぐると、真っ直ぐに参道が続きます。両脇のゆる過ぎるキャラは、源氏物語千年紀のマスコットキャラクター「おおつ光ル」くん。キャラ設定は「大津生まれの光ルくんは21世紀版光源氏。一見ホンワカしているけど、実は、歌が詠めてスポーツだって得意な、なんでもこなせる元気な子ども。」だそうです!

石山寺@大津市-07
石山寺の案内図。山中には「紫式部像」や源氏物語に関連する「光堂」「源氏苑」などもあります。グルッと1周するだけなら30分ほどで済みそうでしたが、この日は時間が無かったため、奥へは行けませんでした

石山寺@大津市-08
石山寺は、文字通り「石の寺」です。拝観受付を済ませてすぐに、見事な石の池がありました。それほど広くはありませんが、大きな鯉たちも元気です!

石山寺@大津市-09
石山寺の手水舎。とてもシンプルなんですが、あふれ出た湧き水は、そのまま池へと流れ出るという、何とも風流な作りになっていました

石山寺@大津市-11
巨大な岩の上に建つ小さなお堂。他ではなかなか見られない光景でしょう。奥に見えるのは、清らかな湧き水がわく「閼伽井屋(あかいや)」です


本堂も巨大なご本尊も見事でした!

石段を上ると「本堂(国宝)」が見えてきます。1096年の再建で、滋賀県最古の木造建築なのだとか。内陣は平安時代のもので、桃山時代に増築された外陣の礼堂部分は、崖の上に建つ「懸造り(舞台造り)」になっています。落ち着いた雰囲気と、札所ならではの華やかな雰囲気が同時に感じられる、とてもいいお堂でした。

こちらのご本尊「如意輪観音菩薩半跏像(重文)」は、何と「像高301.2cm」という、巨大な木造仏です!石山寺の創建当時は、本尊は塑像で、岩の上に直接置かれていたそうですが、平安時代になってこの木造仏に改められました。

丈六の大きな仏様なんですが、すぐ目の前で見られるためとにかく迫力があります!これだけの巨大な仏像が、片足を上げた「半跏」のポーズになっているというのも珍しいですね。お顔立ちはとても穏やかで、いかにも平安時代の定朝様というもの。お腹がポッコリと出ているのもそれっぽく感じます。

また、この如意輪様は秘仏で、33年に一度しかご開帳されないため(今回は7年ぶりのご開扉です)、保存状態はよく、着衣の紋様なども美しく残されていました。

やはり、大きな仏様というのはそれだけでいいものですね。しかも、それがすぐ近くで拝めるとなると迫力が違います。本当にいい体験をさせていただきました!


石山寺@大津市-12

石段を上ると現れる「本堂(国宝)」。1096年の再建で、滋賀県最古の木造建築です。岩盤の上に建ち、本尊を安置する正堂はその上に、後に建て増しされた礼堂は、清水寺・長谷寺のような「懸造り(舞台造り)」になっています

石山寺@大津市-16
石山寺の本堂を横から見たところ。この舞台造りの礼堂は、慶長年間に近江浅井氏の娘であった淀君によって再建されたものだとか

石山寺@大津市-13
石山寺の本堂前の様子。落ち着いた雰囲気のお堂で、軒を支えるアーチ型の虹梁も美しいですね

石山寺@大津市-14
礼堂部分の様子(お堂内は撮影禁止。外から撮影しています)。宗教的で荘厳な雰囲気と、札所らしい、ある意味ではお祭り的な賑やかな雰囲気と、上手く調和していますね

石山寺@大津市-15
本堂にある小部屋が「源氏の間」となっています。奥の等身大人形もなかなかですが、手前のロボットタイプの紫式部もなかなかアレでした(笑)


天然記念物「硅灰石」は大陸的な美しさ

また、天然記念物の「硅灰石(けいかいせき)」が重なる一角も、石山寺の大きな見どころでしょう。ちょっと中国を思わせるような白い巨岩が連なる一角から、遠くに「多宝塔(国宝)」が見える光景は見事でした!

石山寺の本堂なども大きな岩盤の上に建っていますし、お寺全体が石と木造建築の見事な対比を見せていて、とてもいいですね。紅葉シーズンなどに来たら、なお見事でしょう。平安時代の女流文学者たちに愛された・・・というのも納得できる風景でした。


石山寺@大津市-17

本堂の手前からは、天然記念物の「硅灰石(けいかいせき)」の連なりの先に、とても美しい「多宝塔(国宝)」が見えます。石山寺の秋月祭の際には、ここにロウソクが並べられ、多宝塔もライトアップされるのだとか。モミジも多く、紅葉の季節も見事でしょう

石山寺@大津市-18
天然記念物の「硅灰石」は、石灰岩が花崗岩と接触し、熱せられて変質したもの。通常は大理石になるのだそうです。石山寺の創建のエピソードにも登場する、全国的にも珍しい奇景なのだとか

石山寺@大津市-19
硅灰石と、その横に建つ「御影堂」。他ではまず見られない、石山寺ならではの光景でしょう

石山寺@大津市-21
硅灰石の前に建つ「蓮如堂」。蓮如は、室町時代の浄土真宗の僧侶で、衰退していた本願寺の中興の祖として知られる方です

石山寺@大津市-22
石山寺の「三十八所権現社本殿(重文)」。1602年に石山寺の鎮守として建てられました。檜皮葺きの屋根のカーブが美しいですね。巨大な岩の上によく建てたものだと感心してしまいます

石山寺@大津市-23
その隣に建つ「経蔵(重文)」。高床の校倉造(あぜくらづくり)の建物で、貴重な経典などを長く収納してきました

石山寺@大津市-29
石山寺の「鐘楼(重文)」。1953年から解体修理を行い、美しく復元されたそうです。下層の袴腰の部分が、白漆喰壁になっているのがいいですね。ここも紅葉シーズンには見事に色づくと思います


日本最古の木造「多宝塔」も美しい!

また、高い位置に建つ「多宝塔(国宝)」、それ自体も見事なものなんです!

源頼朝に寄進された、国内最古の木造多宝塔とのことですが、どっしりとした方形の下層と、ほっそりと円形の上層、そして優雅に広がる屋根のバランスが見事で、私がこれまで見てきたどの多宝塔よりも美しいと思いました。

この日はかなりお天気が悪かったため、写真では魅力を伝え切れていないのが残念ですが、ぜひ石山寺まで行ってじっくりとご覧ください!

また、多宝塔のご本尊である「大日如来坐像(重文)」は、かの「快慶作」の穏やかな表情の仏様ですので、こちらもぜひお見逃し無く!


石山寺@大津市-24

少し高い位置に建てられた、とても美しい「多宝塔(国宝)」。源頼朝の寄進によって1194年に建立された、国内最古の木造多宝塔です。上層が円形になっていてやや細めですが、屋根のしっかりと広がっていて、本当に美しい塔でした!

石山寺@大津市-25
国宝の多宝塔を正面から見たところ。軒の伸び方がしなやかでいいですね。これまで見てきた多宝塔の中でも最も優美なものだと思います

石山寺@大津市-26
多宝塔の内部にいらっしゃった「大日如来坐像(重文)」は、何と「快慶」の作なんだそうです!薄暗くてハッキリとは見えませんが、たおやかな仏様でした


近江八景「石山の秋月」もここから

多宝塔の先には、瀬田川を見晴らせる高台に「月見亭」が建っています。ここは、近江八景にもなっている「石山の秋月」のシンボルともなっている場所で、立ち入ることはできませんが、すぐ近くから瀬田川を一望できるようになっています。


石山寺@大津市-27

瀬田川が見晴らせる高台に建った「月見亭」。先に行った三井寺にも同様のものがありましたが、滋賀の大きなお寺では普通なんでしょうか?

石山寺@大津市-28
「月見亭」の隣からの眺め。琵琶湖の南端から流れ出る「瀬田川」が間近に見えます。近江・北陸と大和を結ぶ水路として活用されてきた要衝でした


見どころ満載の素晴しいお寺でした!

なお、この日は、ご本尊の特別御開帳の日でしたので、通常とはやや事情が違うと思いますが・・・。石山寺では、駐車料金が「@600円」、さらに「石山寺入山料+御本尊拝観料+式部展入場料」を合わせて「@1,000円」(ガイド付きなら@1,200円)と、決してお安くない料金設定となっていました。

その代わり、御開帳セット券の購入者、または駐車場利用者には、ご本尊の姿がプリントされた「本尊開扉特別クリアファイル(非売品)」が進呈されます(笑)

それなりの出費になってしまいましたが、石山寺は独特の雰囲気がある素敵なお寺で、ぜひまた行ってみたいですね。三井寺と石山寺では、滋賀県のお寺の良さを十分に堪能させていただきました!


石山寺-ご朱印

石山寺でいただいたご朱印です。まさに達筆!



大きな地図で見る


■石山寺(石光山)

HP: http://www.ishiyamadera.or.jp/
住所: 滋賀県大津市石山寺1-1-1
電話: 077-537-0013
宗派: 真言宗
本尊: 如意輪観音(重要文化財)
創建: 747年
開基: 良弁(聖武天皇発願)
拝観料: 500円
拝観時間: 8:00-16:30
駐車場: 有料駐車場あり(600円)
アクセス: 京阪電鉄 石山本線「石山寺駅」下車、徒歩10分

※西国三十三所の第13番札所






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ