2010-03-12

凛とした「はだか地蔵尊」のお寺『伝香寺』@奈良市

凛とした「はだか地蔵尊」のお寺『伝香寺』@奈良市

平城遷都1300年祭/~祈りの回廊~ 奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」の特別御開帳が行われている、奈良市の『伝香寺』へお参りしてきました。奈良三名椿の一つ「散り椿」を見て、重要文化財のはだか地蔵尊「地蔵菩薩立像」とお会いするという、とっても贅沢な時間を過ごせました。


通常は非公開の筒井順慶の菩提寺です

伝香寺は、奈良市の「やすらぎの道」沿いに建つ小さなお寺です。771年、鑑真和上の弟子「思託(したく)律師」によって創建された「実円寺」がもとになっています。その後、荒廃していましたが、1585年、戦国武将の筒井順慶の母・芳秀宗英尼が再興し、名前を「傅香寺」と改め筒井家の菩提寺としました。

境内にある「散り椿」(または「武士椿(もののふつばき)」)は、東大寺・開山堂の「糊こぼし」、白毫寺の「五色椿」と並び、【奈良三名椿】の一つに数えられます。

伝香寺は、通常は一般拝観できませんが、椿の季節となる3月の日曜祝日と、3月12日「地蔵菩薩特別開扉」と7月23日「御更衣法要(地蔵会・着せ替え法要)」の2日のみ一般拝観可能。それ以外の時期は、事前に問い合わせの上、要予約となっています。

この日は、「平城遷都1300年祭/~祈りの回廊~ 奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」の一環として、通常は年に一度だけの開扉となる「地蔵菩薩立像(重文)」が公開されているだけではなく、写真撮影も許可していただけました!


伝香寺@奈良市-01

伝香寺の「表門」。道路に面した位置にありますが、通常の出入には使われていないようです。伝香寺と隣接して「いさがわ幼稚園」があるため、この門をくぐって20mくらい先で園児たちが大騒ぎしていました

伝香寺@奈良市-02
「平城遷都1300年祭/~祈りの回廊~ 奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」の案内看板。2010年3月10日~4月4日までの間、「地蔵菩薩立像(重文)」が特別御開帳されています

伝香寺@奈良市-04
伝香寺の「中門」からの眺め。本堂と順慶堂、そして写真手前の弁財天を祀る祠のみの小さなお寺です。右手に見えるのが、有名な「散り椿」です

伝香寺@奈良市-10
伝香寺「順慶堂」に祀られた、まだ新しい筒井順慶法印像。手前の説明書きには、「筒井順慶法印は洞ヶ峠には行かず、大和郡山城に居た」という文章が掲げてありました。洞ヶ峠の日和見順慶の逸話は、筒井家の復興を防ぐために後に流布されたプロパガンダとの主張でした

伝香寺@奈良市-06
筒井家の五輪塔


【奈良三名椿】の一つ「散り椿(武士椿)」

伝香寺の境内に咲く、東大寺・開山堂の「糊こぼし」、白毫寺の「五色椿」と並ぶ【奈良三名椿】の一つ「散り椿」。今年は例年よりも開花が早かったとのことで、この日はもう満開に近い状態でした。

この「散り椿」は、伝香寺を中興した筒井順慶の母・芳秀宗英尼が植えたものが最初ですが、それはすでに枯死しており、現在は三代目・四代目が植わっているそうです。普通の椿は花ごとポロリと落ちるものですが、伝香寺の散り椿は花びらが一枚ずつ散るのが特徴。そのいさぎよさから「武士椿(もののふつばき)」とも呼ばれているのだそうです。


伝香寺@奈良市-07

奈良三名椿の一つ、伝香寺の「散り椿」。芳秀宗英尼が植えた原木はすでに枯死しており、現在は三代目と四代目が花を咲かせています。椿は花ごと落ちるものが多いのですが、この散り椿は花びらが一枚ずつ散り、そのいさぎよさから「武士椿」とも呼ばれるのだとか

伝香寺@奈良市-08
伝香寺の散り椿とお地蔵さん。確かに花びらは一枚ずつ落ちているようです

伝香寺@奈良市-09
この日の椿はほぼ満開に近かったようです。くっきりとした葉の形も美しいですね

伝香寺@奈良市-05
中門をくぐってすぐのところにあった、蹲に浮かべた椿の花たち


この期間だけ本堂内は写真撮影可!

伝香寺の「本堂(重文)」は、1585年の建築物です。御本尊は、穏やかな表情の釈迦如来坐像で、特別御開帳の「地蔵菩薩立像(重文)」がその前に立っていらっしゃいました。本堂のすぐ前には幼稚園があるため、元気よく遊ぶ子供たちをお地蔵さんが静かに見守っている、そんな雰囲気が感じられます。

今回の御開帳では、貴重な仏さまを至近距離で拝見できるだけではなく、特別に写真撮影も許可していただけます!こんな機会は滅多にありませんので、ぜひ期間中に行ってみてください。

なお、カメラのフラッシュの光は文化財にダメージを与えてしまいますので、必ずフラッシュの発光をオフにしておくようにしましょう(お堂の内部は暗いため、意図せずにフラッシュが点灯してしまうものなのです)。


伝香寺@奈良市-11

伝香寺の「本堂(重文)」。それほど大きくはありませんが、1585年・桃山時代の建築物です。特別御開帳された地蔵菩薩立像さんは、本堂の中央に位置していますが、普段は向かって左手のお堂にいらっしゃいます

伝香寺@奈良市-12
伝香寺の本堂内部。手前にいらっしゃるのが「地蔵菩薩立像(重文)」。御本尊は「釈迦如来坐像」で、「南無仏太子像」もいらっしゃいました。特別御開帳の期間は、写真撮影も許可されているのが嬉しいところです

伝香寺@奈良市-13
伝香寺の「地蔵菩薩立像」と「釈迦如来坐像」


凛として涼やかな表情の「はだか地蔵尊」

伝香寺@奈良市-16

重要文化財の「地蔵菩薩立像」は像高97.3cm、1228年の作。別名「はだか地蔵尊」として親しまれており、普段は本堂のお隣の地蔵堂にいらっしゃいます。

とても清楚で美しいお地蔵さまで、華やかな法衣を纏っていますが、その下は衣装などを彫刻していない「裸形像」です。鎌倉時代にはこのような裸の像が数多く作られたのだとか。年に一度、7月23日の「御更衣法要(地蔵会・着せ替え法要)」の際には、この法衣が取り替えられています。

服を来たお地蔵様は他にもあると思いますが、ここまで立ち姿が美しい方はなかなかいらっしゃらないでしょう。涼やかな表情や神々しい光背など、素晴らしいですね。夢中になって何枚も写真を撮影させていただきました。


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京都の大仏のモデルになった「釈迦如来坐像」

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伝香寺・本堂の御本尊は「釈迦如来坐像」です。京都・方広寺の大仏(焼失)のモデルにもなったのだとか。像高は60.6cmで、1585年の作。

桃山時代の仏さまですので、光背や台座などの細部までしっかりと残されていて、こちらも美しい仏さまでした。蓮弁の一枚一枚の彩色が残されており、光背も完全です。こんなお釈迦さまと至近距離で向き合えるのですから、嬉しいことですね。


伝香寺@奈良市-22

伝香寺@奈良市-23

伝香寺@奈良市-24


特別御開帳は「2010年4月4日」まで!

御本尊から下がったところには、聖徳太子の童子像「南無仏太子像」と、「春日大明神板曼荼羅」という板絵がありました。どちらも明るいお堂でじっくりと見られる(しかもカメラにも収められる)機会はまずありませんので、ぜひこの機会に実際にお会いしてみてください。


伝香寺@奈良市-25

「南無仏太子像」@伝香寺(奈良市)。像高70.5cm、1304年作で、県指定の重要文化財です。聖徳太子の童子像の合掌形です

伝香寺@奈良市-26
張りがあって艶やかですね。眉が一直線に繋がっていて、意志の強さを感じさせます

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伝香寺の「春日大明神板曼荼羅」。説明などはありませんでしたが、狐に乗って移動しているところでしょうか?

伝香寺@奈良市-28
「筒井伝来仏舎利」@伝香寺

伝香寺-ご朱印
伝香寺でいただいたご朱印です。この日は御開帳期間中だったため、あらかじめ書いてある用紙をいただいてきましたが、ご朱印にも何パターンか種類がありました!「好きなものを選んでいいよ」と言われて、選ぶ作業も楽しかったです(笑)



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■伝香寺

HP: 参考サイト(平城遷都1300年祭/~祈りの回廊~ 奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳)
住所: 奈良県奈良市小川町24
電話: 0742-22-1120
宗派: 律宗
本尊: 釈迦如来
創建: 771年
開基: 思託
拝観料: 400円
拝観時間: 9:00 - 16:00(拝観可能日のみ)
駐車場: 有料駐車場あり
アクセス: JR・近鉄「奈良駅」から徒歩10分

※3月12日「地蔵菩薩特別開扉」、7月23日「御更衣法要」の2日のみ一般拝観可能。3月の日曜祝日には椿の一般公開。これ以外の時期の拝観は、事前問い合わせの上、要予約。
※東大寺・開山堂の「糊こぼし」、白毫寺の「五色椿」と並び、【奈良三名椿】の一つ「散り椿」が見られます(3月中旬頃)






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