2010-09-25

天平時代の国宝「八角円堂」が遺る『栄山寺』@五條市

天平時代の国宝「八角円堂」が遺る『栄山寺』@五條市

五條市にある、藤原南家の創設者・藤原武智麻呂が創建した古刹『栄山寺』へ行ってきました。奈良市からは距離がありますが、国宝の「八角円堂」など文化財も多数あり、見所の多いお寺でした。


藤原南家の創始者・武智麻呂が創建

奈良県五條市にある『栄山寺』(えいさんじ。榮山寺とも)は、藤原南家の創始者・藤原武智麻呂が、719年、父母を弔うために創建したと伝わる古刹です。

藤原武智麻呂は、藤原不比等の長男で、後の光明皇后となる光明子の兄に当たります。藤原四兄弟の長男として、政敵であった長屋王を追い落とし、要職を藤原家が独占する時代を築いた人物です。その子の藤原仲麻呂は、道鏡の台頭などにより恵美押勝の乱を起こしました。

栄山寺は、藤原南家の菩提寺として栄え、南北朝時代には南朝の後村上・長慶・後亀山天皇の行在所が置かれていました。現在は、それほど広い規模のお寺では無くなっていますが、天平時代に建てられた「八角円堂(国宝)」などを有する古刹として、見所の多いお寺であり続けています。


栄山寺@五條市-01

五條市にある『栄山寺』(えいさんじ。榮山寺とも)。境内は東西に細長く、小さな山門がありますが、寺務所の前から入ります。藤原南家の創始者・藤原武智麻呂の創建と伝わる古刹で、数々の文化財を有しています

栄山寺@五條市-02
栄山寺の由緒を記した看板。「栄山寺は古く栄山寺又は前山寺と呼ばれ、藤原鎌足の孫武智麻呂が養老三年(719)に建立したと伝えられている。境内には国宝八角円堂・梵鐘および重要文化財の石燈籠、石塔婆が残っている。又、栄山寺行宮跡というのは、南朝の後村上・長慶・後亀山三帝の行在所であったからである。」


国宝の梵鐘など、貴重な文化財多数!

栄山寺の境内は東西に長く伸びています。まず目に入って来る「梵鐘(国宝)」に始まり、「塔之堂」の正面には「七重石塔婆(重文)」が、さらに本堂前には「石灯篭(重文)」があるなど、境内を歩くだけで貴重な文化財が次々と現れます。


栄山寺@五條市-03

栄山寺の境内の様子。吉野川に沿って、東西に伸びる形です

栄山寺@五條市-04
国宝の「梵鐘」を吊るす鐘楼が、真新しいコンクリート製でした!ちょっと意外な感じですよね(笑)

栄山寺@五條市-05
梵鐘は、高さ157.4cm、口径89cm。驚くほど巨大なものではありませんが、バランスの良い美しさが感じられます。平安時代の金工品を代表する名品で、京都・神護寺、宇治平等院の鐘とともに「平安三絶の鐘」とされているのだそうです

栄山寺@五條市-06
梵鐘に刻まれた銘文は、菅原道真の撰、小野道風の書と伝えられているそうです。製作は延喜17年(917年)とのこと

栄山寺@五條市-07
栄山寺の「塔之堂(大日堂)」。大日堂ですが、大日如来像は祀られていません。中央には蝶のような美しい光背の観音さまが。その両脇に弘法大師像と、珍しい青いハチマキと腹巻をした不動明王像がいらっしゃいました

栄山寺@五條市-09
「塔之堂」の正面には、石碑とともに「七重石塔婆」が立っています。それほど目立ちませんが、これは奈良時代のもので、重要文化財に指定されています!苔の付き方がいいですね


御本尊は金箔も鮮やかな「薬師如来像」

栄山寺の「本堂」は、1553年に再建されたもので、建物自体はそれほど特徴のあるものではありません。しかし、堂内に入ると、素晴らしい仏さまが多数いらっしゃいました!

御本尊は、1431年作の寄木造り「薬師如来坐像(重文)」です。金箔が鮮やかに残り、ふくよかで女性的なお薬師さまでした。玉眼がきれいで、光背もほぼ破損なく残されていましたので、よほど大事に祀られてきたのでしょう。また、両手を禅定印(坐禅の時の手の形)に結び、その上に薬壺を持っているというのも珍しいですね。

その周囲には、小さめで可愛らしい「十二神将像(重文)」がいらっしゃいます。6体が1454年頃に作られたもので、残りの6体は後の補作とのこと。普通は「戌(いぬ)」といえば伐折羅大将のような勇ましい姿を思い浮かべるものですが、こちらでは文官となっています。いずれも表情やポーズがユニークで、愛らしいお姿でした。この他にも、日光月光菩薩像、地蔵尊立像などもいらっしゃいました。

栄山寺の本堂は、毎年春と秋に公開されていますので、事前に予定を調べてからお参りに行ってみてください!


栄山寺@五條市-10

栄山寺の「本堂」。1553年に再建されたもので、春と秋など期間限定で拝観させていただけます。御本尊は「薬師如来坐像(重文)」。1431年の寄木造りで、金箔が鮮やかに残っています。光背までほぼ完全に残っており、ふくよかで女性的な印象でした。小さめの十二神将像(重文)などもいらっしゃって、見所の多いお堂でした

栄山寺@五條市-11
本堂前にある「石灯篭(重文)」。1284年の銘があり、総高243cm。「榮山寺形」と呼ばれる形なのだとか


法隆寺・夢殿に近い国宝「八角円堂」

栄山寺の最も東側に立つのが、国宝に指定されている「八角円堂」です。天平宝字年間(757~765年まで)の建立で、この時代の円堂としては、法隆寺・夢殿に並ぶもの。栄山寺の堂宇は戦国時代にほぼ全て焼失してしまいましたが、この八角円堂だけは焼け残ったのだそうです。

この日は平城遷都1300年祭の特別公開だったため、その内部にまで入らせていただきましたが、貴重な体験ができました。

八角円堂の内部は、八角形の柱が4本立っており、中央には南向きに阿弥陀如来像がいらっしゃいます。その背後には半跏の地蔵像、さらにお釈迦様と梵天らしき像も祀られていました。

この八角円堂の内部の壁画「内陣装飾画」も重要文化財に指定されています。天平時代の貴重なもので、最近まで剥落防止の処理が行われていたそうですが、残念ながら肉眼ではほとんど分かりませんでした。堂内には、壁画が残っている場所を示した図などもありましたので、ぜひ内陣に入った際には探してみてください。

また、内陣に入ることができなくても、外から見ているだけで、そのシンプルな美しさは十分に感じられます。こちらに法隆寺・夢殿の写真が何枚か掲載してありますので、見比べてみてください。


栄山寺@五條市-12

国宝に指定されている、栄山寺の「八角円堂」。藤原武智麻呂が父母の供養のために建てた、天平宝字年間(757~765年まで)のものなのだそうです。この時代の円堂としては、法隆寺・夢殿に並ぶもので、非常に貴重な遺構となっています

栄山寺@五條市-14
八角円堂は、シンプルながらもバランスの良い美しい建物です。連子窓が雰囲気に合っていますね。内部は八角形の柱が4本建っていて、中央には阿弥陀如来像が。堂内には天平時代の壁画が残されていますが(内陣装飾画も重文です)、剥落が激しいため、ほとんど見つけることができませんでした

栄山寺@五條市-15
八角円堂の屋根の上に見える石造の宝珠は、後に複製されたもの。当初のものとされる石造宝珠の残欠も保存されているそうです

栄山寺@五條市-16
キバナコスモスと八角円堂。柵などがあり、見た目はイマイチです

栄山寺@五條市-17
軒の組物も、シンプルで美しいですね。天平時代の建築物がほぼそのままの形で残されているのですから、それだけで驚きです。しかも、特別公開の時期にはその内部に入らせていただけますので、貴重な体験ですよね

栄山寺-ご朱印
栄山寺でいただいたご朱印です


裏手には国指定史跡「藤原武智麻呂墓」も

また、栄山寺の裏山を進むと、国指定史跡「藤原武智麻呂墓」があります。

私たちは山を回って車で行きましたが、その周囲は一面に柿が植わっていて、車一台分でギリギリの農道を通らなくてはいけませんでした。歩くにしても、車で行くにしても、とても分かりづらい場所にありますので、迷わないようにお気をつけください。

実際にたどり着いた藤原武智麻呂のお墓は、思った以上に小さなものでした(しかも、これが本物だとまだ確定していないとか)。父母を弔った栄山寺のすぐ近くに埋葬されたと考えるとロマンを感じますね。時間に余裕のある方は足を伸ばしてみてください。


藤原武智麻呂の墓@五條市-01

栄山寺の周囲は「栄山寺緑地公園」として整備されています。栄山寺から山中に入ると「藤原武智麻呂の墓」へ行くことができます

藤原武智麻呂の墓@五條市-02
国指定史跡「藤原武智麻呂墓」の前に立つ案内看板。奈良時代に編纂された「藤氏家伝」では、武智麻呂は平城京北方の佐保山で火葬されたと記されている上に、まだ学術調査も行われていないため、ここが本当の墓だと断定できないのだそうです

藤原武智麻呂の墓@五條市-03
鬱蒼とした階段の先にお墓が見えてきます。低い丘の上に建っていますので、あっという間に登り終えます

藤原武智麻呂の墓@五條市-04
「藤原武智麻呂墓」の姿。「一辺8mの方形に、結晶片岩の長方形石材を寺院の基壇状に積んだもの」とのこと。思った以上に小さくて驚きました。この辺りからは、石櫃が発見されたり、藤原良継も葬られているとの記述もあるため、この一帯には古代の貴族層の墓があると推測されているのだそうです



大きな地図で見る


■栄山寺(学晶山 榮山寺)

HP: http://www7.plala.or.jp/eisanji/index.html
住所: 奈良県五條市小島町503
電話: 0747-24-0065
宗派: 真言宗豊山派
本尊: 薬師如来(重要文化財)
創建: 719年
開基: 藤原武智麻呂
拝観料: 400円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR和歌山線「五条駅」から、奈良交通バス「栄山寺口」下車、徒歩10分(JR五条駅からは、タクシーで5分、徒歩25分)

※2010年の本堂と八角円堂の特別公開は、9月25日~11月21日まで(平城遷都1300年祭/榮山寺
※御本尊の薬師如来像の御開帳は、例年は4月25日~5月第3日曜日、10月25日~11月第3日曜日、正月三が日のみのとなります






 【天平時代の国宝「八角円堂」が遺る『栄山寺』@五條市】へのコメント
奥村一郎  10-10-06 23:20

妻の実家が五條でよく通ります。五條東中の前から大淀方面に抜ける時に脇を通るんですが、今まで寄った事はありませんでした。興味が湧きました。時間がある時に寄ってみます。

naka  10-10-07 20:54

>奥村さん

コメントありがとうございます!
それほど目立ちはしませんが、さすがは奈良のお寺さんですね。貴重な文化財があれだけあるなんて、すごいことだと思いました。出来れば八角円堂の公開中に行ってみてください。本堂と合わせて、かなり楽しめますよ!





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