
東大寺巡りのスタートは、もちろん「南大門(国宝)」から。いつもたくさんの鹿と修学旅行生の姿が絶えない、賑やかな一角です。
現在の南大門は、1199年に復興されたもの。鎌倉時代に大仏殿を再建したりと、東大寺の再興の祖として知られている「俊乗坊重源」が伝えた「大仏様(だいぶつよう)」という建築様式を用いています。高さ25m以上の巨大な門ですが、天井板を貼らず、ずっと上まで見通すことができており、木材が連続する様子は目眩がしそうな大迫力です。
この南大門を護るのは、運慶・快慶作の「金剛力士立像(国宝)」。ともに高さ8.4mの巨大な像で、諸説ありますが、「阿形は快慶作」「吽形は定覚・湛慶作(運慶は製作総指揮)」と考えられているのだとか。
ちなみに、阿形のサイズは総重量6.8トン、部材総数3,115個。あれだけ大きな像を3千を超えるパーツに分け、たくさんの仏師による共同作業にすることで、わずか「69日」という短期間で作ったというのですから、改めて驚くべきことですね。金剛力士立像とは、金網越しですが、わずか数メートルの至近距離で見られますので、その力強い造形をじっくりとご覧ください。

運慶・快慶作の「金剛力士立像(国宝)」で有名な「南大門(国宝)」。台風で倒壊した後、鎌倉時代に再建されたものです。軒先を支える組木(斗きょう)は、屋根を張り出すために前に6段せり出す「六手先」という珍しいもの

東大寺・南大門は「大仏様」と呼ばれる、今はもうほとんど現存していない建築様式です。柱を貫通する水平材(貫・ぬき)が多用され、天井板を張らないのが特徴。下から見上げると目がくらむようです

有名な鎌倉時代の仏師、運慶と快慶が制作に携わったことで有名な「金剛力士立像」の阿形(あぎょう)。この画像は夜のライトアップの時に撮影したもので、昼間は金網に光が反射して、ここまでクリアに写らないかもしれません

「金剛力士立像」の吽形(うんぎょう)。口が閉じているのが吽形さんで、門の右側に立っていますが、これは通常の配置と左右逆。普通は正面を向いて立っているものですが、お互いに向い合っているのも珍しいところです

東大寺の、奈良のシンボルともいえるのが「奈良の大仏さん」でしょう。正式には「盧舎那仏像(るしゃなぶつぞう)」といい、752年の開眼ですが、あまりの重さに崩れてしまったり、大仏殿が焼け落ちて雨ざらしの時代があったりもしたそうです。何度も修復されているため、開眼当時から残っている部分はほとんどありません。
奈良の大仏さんのお住まいとなるのが、国宝の「金堂(通称・大仏殿)」です。こちらも2度の火災から再建されたもので、創建当初は今よりもさらに大きかったのだそうです。
大仏殿では、どうしても奈良の大仏様に目が向きがちですが、その脇にいらっしゃる「虚空蔵菩薩」「如意輪観音」なども重要文化財に指定されていますので、お見逃しなく。
また、大仏さんの鼻の穴と同じサイズだと言われている穴があいた柱をくぐる「柱くぐり」も、古都・奈良に古くから伝わるエンターテイメントですから、ぜひチャレンジしてみてください。男性でも、肩を斜めにすれば十分にくぐり抜けられると思います。

東大寺の「金堂(国宝)」。通称は「大仏殿」です。間口57.01m、高さ48.74mで、自由の女神像も収納できるサイズ。2度の火災から再建されたものですが、創建当初は、幅が88mもあったとされており、現在よりもさらに巨大でした

金堂前の「八角灯籠(国宝)」。天平時代に作られたものですが、後に修理を繰り返しています。穏やかな表情で楽器を奏でる「音声菩薩」のレリーフがあります。燈籠全体が鋳造されており、この時代のものがここまで残っているのはすごいことなのです

こちらは近鉄奈良駅ビルにある「なら奈良館」に展示してある「大仏さんの左手実物大模型」です。ガイドブックを置いてみたら、その巨大さが際立ちますね。ちなみに、手の平が150cm、指の長さは110cmだとか

同じくなら奈良館にある、東大寺・大仏殿の有名な柱の穴の実物大模型。大仏さんの鼻の穴と同じ大きさだ・・・と言われているものです(この柱の位置が鬼門に当たるため穴があけられたのだそうです)。穴の大きさは30cm×37cm、柱の直径120cm。大人でも普通の体系の方なら十分にくぐり抜けられる大きさです

東大寺では大仏殿だけを見て引き返してしまう方も多いようですが、仏像がお好きな方でしたら、ぜひ天平仏の宝庫「法華堂(三月堂)」や、法隆寺、当麻寺に次ぐ日本で3番目に古い「四天王立像(国宝)」がいらっしゃる「戒壇院」なども立ち寄ってみてください。
特に法華堂は、ご本尊の「不空羂索観音立像(国宝)」を中心に、薄暗いお堂の中に12体の国宝と4体の重文、計16体もの仏像が立ち並ぶ濃密な空間で、奈良の仏像の素晴らしさが凝縮されたような場所です。
ただし、2010年5月18日から7月31日までの期間は、法華堂の耐震工事が行われるため拝観不可。しかも、8月から拝観を再開した後も、9体は奈良国立博物館へ移されるため(2011年10月以降は、新設される収蔵・展示施設「東大寺総合文化センター」に移る予定)、現在の姿の法華堂の仏さまを拝観できるのも、残りわずかとなっています。
また、俊乗堂の「重源上人坐像(国宝)」、開山堂の「良弁僧正坐像(国宝)」、法華堂の「執金剛神立像(国宝)」、勧進所の「五刧思惟阿弥陀如来坐像(重文)」など、ある特定の日にしか一般公開されない仏さまもいらっしゃいますので、事前に日程を確認しておくといいでしょう。

東大寺の国宝建造物「法華堂(三月堂)」。740年頃の創建です。ご本尊は「不空羂索観音立像(国宝)」で、合計16体もの仏像が立ち並びますが、それも2010年5月半ばまで。それ以降はやや仏さまの数が減ってしまうことになります

大仏殿の西側に建つ東大寺「戒壇堂」。奈良時代作の塑像「四天王立像(国宝)」がいらっしゃって、ニヒルな表情が魅力的。ファンの多い仏さまです。こちらはいつでも拝観可能です

大仏殿の裏手には、有名な東大寺「正倉院」があります。こちらは近くまで立ち寄ったりすることは出来ませんが、遠目からでも高床式の校倉造(あぜくらづくり)であることがはっきりと見て取れます。教科書に載っているような歴史的建造物の実物が見られるのですから、ぜひ立ち寄ってみてください

東大寺では、年間を通じて様々な法要が行われていますが、その中で最も有名なのが東大寺・二月堂で行われる「お水取り」でしょう(正式には修二会[しゅにえ]といいます)。その始まりは752年のことで、それ以来一度も欠かすことなく毎年行われている伝統的な儀式です。
東大寺・二月堂は舞台づくりの見事なお堂で(無料で上がれます)、ここから奈良盆地が一望できるいいスポットですが、普段はほとんど人気もなく静かなものです。しかし、3月1日より2週間にわたって行われるこのお水取りの期間だけは、何万人もの観客で賑わいます。
二月堂の舞台部分を、巨大な燃え盛る松明を持った僧侶が走り抜ける姿は、間近で見るととんでもない迫力とライブ感があります。この時期は周辺のホテルなども予約しづらくなるそうですので、ぜひお早めに!

普段の東大寺・二月堂。お堂の周りの回廊部分には自由に上がることができます。お天気の良い日などはなかなか見事な眺めです。ちなみに、二月堂の御本尊は十一面観音様ですが、絶対秘仏のためお会いすることはできません

二月堂前の通り。土壁が残る趣きのある一角です。東大寺の境内は広いため歩きまわるのも大変ですが、ぜひ時間をとって大仏殿の裏手なども散策してみてください

また、夏の奈良の恒例イベント『なら燈花会』の期間中の8月13日・14日の二日間は、東大寺の大仏殿では、夜間の無料拝観が行われます。これは8月15日の「万灯供養会」のプレイベントのようなものですが、拝観料無料ということもあり、たくさんの人が集まり、とても賑やかです!
この日は、大仏殿の正面にある「観相窓」が開放され、遠目からでも大仏さんのお顔が眺められます。年に数日しかないことですので、ぜひこの日に合わせて東大寺へ行ってみてください。
さらに、7月半ば~9月末までの期間は『ライトアッププロムナード・なら』というライトアップイベントも開催されています。東大寺の南大門や大仏殿はもちろん、奈良国立博物館本館、薬師寺なども見事にライトアップされます。なら燈花会の時のような大混雑はありませんので、三脚も使用できます。写真撮影を行いたい方は、この期間に行ってみるといいでしょう。夜のデートコースとしても最適でしょう。

『なら燈花会』の東大寺・大仏殿の無料開放の様子。夜に見る奈良の大仏さんや仁王像は、昼間とはまた印象が違って、幻想的に見えます。夜の仏さまの姿を見られる貴重なチャンスです

『ライトアッププロムナード・なら』の一枚。2ヶ月以上も開催されていますが、普段はガランとしていて、写真撮影が好きな方には最適でしょう。なら燈花会の期間を外せば、三脚を使用して落ち着いて撮影できます

奈良の地元の方はもちろん、奈良へ宿泊する方もぜひ早起きして、朝の奈良公園・東大寺を歩いてみてください。
犬の散歩をしている方の姿を見かける程度で、いつもは賑わっている東大寺南大門の辺りも、全く人影は見当たらず、早起きした寝ぼけ眼の鹿たちが歩くのみ。まるで全ての人間が消えてしまって鹿だけが生き残ったかのような、とても不思議な感覚が味わえます。
いつもはがっついて鹿せんべいをねだってくる鹿たちも、朝はまだのんびりとしたもので、また違った表情が見られます。

早起きなのは鹿だけではなく、もちろんお坊さんも早起きです。東大寺中門から大仏殿に向かってお祈りしているお坊さんの姿も見られました。いかにも奈良の朝の風情が感じられますね


























