2014-07-21

寺宝が仙台出張中の『室生寺』。涼しくゆったり過ごせます

寺宝が仙台出張中の『室生寺』。涼しくゆったり過ごせます

女人高野と呼ばれた宇陀市の古刹「室生寺」。この夏、多数の寺宝が仙台市博物館の東日本大震災復興祈念特別展「奈良・国宝室生寺の仏たち」に出陳なさっています。お留守の仏さまが多いこの時期、お堂ではいつもと違った景色が観られて楽しめました。涼しくて避暑にもいいですよ!


仙台で「奈良・国宝室生寺の仏たち」開催中

宇陀市室生にある「室生寺(むろうじ)」(Facebook)。古くは女性の参拝が許されなかった高野山に対して、幅広く門戸を開いていたことから「女人高野」と呼ばれる古刹です。

美しい仏さま、山寺らしい凛とした佇まいの建築物、四季の美しい花々などが素晴らしく、さらには義父が室生の出身ということもあって、これまでに幾度と無くお参りしてきました。


そんな室生寺から、この夏、多数の寺宝が仙台市博物館へご出陳なさって、東日本大震災復興祈念特別展「奈良・国宝室生寺の仏たち」が開催されています。

この特別展は、東日本大震災からの復興の支援を目的としたもので、室生寺の貴重な寺宝がごっそり(?)と東北へ出張なさっています。通常の室生寺の姿を知っている者からすると、心配になってしまうほどの大移動なのです!

●金堂から、十一面観音菩薩立像(国宝)、文殊菩薩立像(重文)、薬師如来立像(重文)、地蔵菩薩立像(重文)、十二神将像(重文)。弥勒堂から、釈迦如来坐像(国宝)。
●室生寺の本堂「灌頂堂」から、胎蔵界・金剛界曼荼羅、大壇具、祖師像、十二天像など。

私の知人たちもすでに何名も拝観していますが、やはり素晴らしい内容だったとのことでした。あの愛らしい十一面観音像や、堂々たる釈迦如来坐像など、普段はお堂の遠くからしか拝見できませんが、背後まで見られるそうです!

開催期間は「2014年8月24日」まで。ぜひ足をお運びください。


寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-20

東日本大震災復興祈念特別展「奈良・国宝室生寺の仏たち」ホームページより。分かりやすく見どころがまとまっているいいページです。見仏記コンビ「みうらじゅん&いとうせいこう」両氏のコーナーもありますよ!


●東日本大震災復興祈念特別展「奈良・国宝室生寺の仏たち」

HP: http://www.kintetsu.jp/yamato/exhibition/syaji.html

会場: 仙台市博物館(022-225-3074)
住所: 仙台市青葉区川内26番地
会期: 2014年7月4日(金)~8月24日(日)
観覧料: 一般 1,400円、高大学生 1,100円、小中学生 700円


今だけ拝観料が「大人300円、小人無料」に

たくさんの仏さまが東北へご出陳なさっているということは、室生寺のお堂の仏さまが減っているということです。

このため「奈良・国宝室生寺の仏たち」期間中を含めた前後1ヶ月は、拝観料が「大人 300円、小人 無料」と割引になっています。

私たちのように、何度も室生寺へお参りしてきた人間にとっては、「何体かの仏さまがご不在の、いつもとは違った雰囲気のお堂を拝見できる」という楽しみがあります。また、夏の室生寺は、外界と比べてかなり涼しく、涼を求めて行ってみるのもいいですね。ゆったりと時間が流れていて、とても気持ちのよい場所です。


寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-01

室生寺の入口となる「太鼓橋」。春には美しく桜が咲きます。清流のせせらぎが聞こえて、すでに山の下よりも何度か涼しく感じます

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-02
拝観受付のところにあった断り書き。仙台市博物館へ仏像が出陳していることについて、そして料金が割引になることについてのお知らせですを

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-03
室生寺の「仁王門」。ちょうど門の向こう側で表彰式のようなものが始まって……

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-04
絵画の奉納式だったようです(室生寺Facebookページに情報がありました)。仁王門の裏側に飾ってあります

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-05
「大本山室生寺 御朱印のご案内」という看板。「仁王門納経所」で薬師如来・五秘密菩薩など7種類、「灌頂堂納経所」で如意輪観世音など3種類、「奥の院納経所」で弘法大師など2種類。計12種類も御朱印があるんですね!知らなかった!

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-06
金堂の正面にある「鎧坂」。春になるとシャクナゲの花が咲き誇ります


仏さまが少ない金堂も見応えあります!

この日の室生寺は、色んな仏さまがお留守になっていますが、その分だけいつもとは違った姿が観られました。「金堂」(国宝)だけでもだいぶ様子が違っています。

●金堂内は、中央のご本尊「釈迦如来立像」(国宝)はそのままで、両端の十一面観音菩薩立像・地蔵菩薩立像の舟形光背だけが残っていました。その間の文殊菩薩立像・薬師如来立像は、光背も含めて仙台へ行っています。この2枚の光背の素晴らしい色彩を、じっくりと観察できます

●お寺の方から少しお話を伺ったのですが、現在の中尊・釈迦如来、脇侍・十一面観音と地蔵菩薩の形こそが、室生寺の当初からの形だったとか。江戸時代に真言宗へと変わった際にあれこれあって、その間に文殊菩薩・薬師如来が安置されるようになったそうです。

●ご本尊の釈迦如来立像も、当初は薬師如来として祀られていたものが、後から変化したのだとか。金堂の蟇股の部分に薬師如来が持つ「薬壷(やっこ)」が描かれていたり、薬師如来の眷属である十二神将像が祀られていたりするのもこのためだと言います。

●ご本尊の両脇にスペースが空いたため、背後の板壁に描かれている「伝帝釈天曼荼羅」が少しだけ見えます。普段はほとんど隠れているだけに貴重!

●手前の「十二神将像」たちもご不在です。普段から12体のうちの何体かは奈良博へ寄託されているため、このお堂でも全員そろうことは稀。今回の仙台市博物館では12体が勢揃いする貴重な機会です。仙台の方が羨ましいです!


などなど。室生寺・金堂の仏さまの並びは、以前から不思議だと思っていましたが、そんな歴史があったんですね。勉強になりました。


寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-07

金堂の脇にある「弥勒堂」(重文)。客仏として、いつもは向かって右手にいらっしゃる「釈迦如来坐像」(国宝)は仙台へ。ご本尊の「弥勒菩薩像」(重文)もちょうど修理から戻る直前でした。「左手奥にいらっしゃる役行者像の光背が二重円光らしい」というのが小さな発見でした(通常はこの組み合わせになりません。おそらく他の仏像の光背だと思います)

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-09
室生寺「金堂」(国宝)の普段の様子(室生寺ホームページより)。向かって左から、十一面観音菩薩立像(国宝)、文殊菩薩立像(重文)、釈迦如来立像(国宝)、薬師如来立像(重文)、地蔵菩薩立像(重文)と並び、手前に十二神将像(重文)がずらりと守護しています

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-08
しかし、この日の金堂内は、中央のご本尊「釈迦如来立像」(国宝)はそのままで、両端の十一面観音菩薩立像・地蔵菩薩立像の舟形光背だけが残っていました。手前の十二神将像も、そろって仙台へ。写真から想像してみると面白いですね(笑)

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-10
金堂の蟇股の部分に描かれている「薬壷」。ご本尊がもとは薬師如来として祀られ、ここが薬師堂だった名残だとか。なるほど!

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-12
室生寺の本堂となる「灌頂堂」(国宝)。通常は非公開のご本尊「如意輪観音坐像」(重文)が特別公開されています。ここの曼荼羅や大壇具も仙台へ出張しているため、お堂内が広く感じられました


楚々とした五重塔など。夏も涼しげです

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-13
灌頂堂から眺める「五重塔」(国宝)。この辺りは緑が濃くて、日差しも柔らか。爽やかな風が吹き抜けていきます

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-14
下から見上げたり……

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-15
上から見下ろしたり。高さは16m強、屋外にある五重塔としては日本で最小。小さくて楚々とした雰囲気がありますね

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-16
この日は時間の関係で登りませんでしたが、この石段の先に「奥の院」があります。それなりに険しい上りですが、気持ちいい汗がかけますよ!

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-17
ずらりと並ぶ石の仏さまたち

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-11
堂々たる「軍荼利明王」の石仏。男前!

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-18
南北朝時代に活躍した、南朝方の忠臣・北畠親房(Wikipedia)と伝わるお墓もあります

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-19
北畠親房の墓とされる「五輪塔」(重文) 。室町時代前期のものだとか


<余談1>駐車可!栄吉さんのかき氷が美味

以前もご紹介しましたが、室生寺へお車で参拝する方は、駐車場は「よもぎ入り回転焼き」の栄吉さんの無料駐車場が便利です(紹介記事→「室生寺での御食事なら『橋本屋』&『栄吉』さんで」)。

回転焼きなどを注文すれば、無料で駐車場を使わせてくれますので、車を停めさせてもたったらお店のおばちゃんにひと声かけて、帰り際に何かひと品注文するだけでオーケー。お参り後の休憩にちょうどいいんですよね。ただし、駐車スペースは3~4台ほどですから、埋まっているときは諦めましょう。

ここの「よもぎ入り回転焼き」も風味豊かで美味しいですし、この日にいただいた「かき氷 ミルク金時(@500円)」も絶品でした!室生寺へお参りに行く方は、ぜひ利用してみてください。

寺宝が仙台出張中の『室生寺』@宇陀市-21
この日、栄吉さんでいただいたかき氷。あずきも練乳もたっぷり!おばちゃんのお話では、かき氷の機械を半世紀も使い続けているため、やわらかな口当たりの氷になるのだとか。やっぱり夏の室生寺はいいですね!


<余談2>SNS向きの『室生山上公園 芸術の森』

この日は時間が足りずに立ち寄れませんでしたが、室生寺の近くに『室生山上公園 芸術の森』という、ちょっと不思議な景色が楽しめる公園があります。


私たちももう何年も立ち寄っていませんが、かなりシュールで奇妙な写真が撮れますし、SNSで人気になれるコンテンツではないかと思います。ユニークなマイナースポットですから、ぜひTwitterやFacebookで投稿して、他の方を驚かせてみてください!


室生山上公園 芸術の森@宇陀市-22

宇陀市室生の『室生山上公園 芸術の森』では、こんな渦巻きや錆びたピラミッド型など、山の中とは思えない不思議なオブジェが配置してあります。室生寺からも近いですから、ぜひお立ち寄りください!



■室生寺

HP: http://www.murouji.or.jp/
Facebook: https://www.facebook.com/murouji

住所: 奈良県宇陀市室生78
電話: 0745-93-2003
宗派: 真言宗室生寺派大本山
本尊: 釈迦如来(国宝)
創建: 宝亀年間(770年-780年)
開基: 役小角、または賢璟
拝観料: 600円
拝観時間: 8:00 - 17:00(入山は16:30まで)
駐車場: 有料駐車場(民間)
アクセス: 近鉄大阪線「室生口大野」より、奈良交通バス「室生寺」下車

※仙台市博物館「奈良・国宝室生寺の仏たち 東日本大震災復興祈念特別展」(2014年7月4日~8月24日)の期間中を含めた前後1ヶ月、拝観料は「大人 300円、小人 無料」となります


■参考にさせていただきました

室生寺 - Wikipedia
奈良・国宝室生寺の仏たち 東日本大震災復興祈念特別展|仙台市博物館


■関連する記事






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ