2013-08-19

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』観てきました!

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』観てきました!

抽選にハズレて諦めていた「国宝 高松塚古墳壁画 修理作業室の公開(第10回)及び 特別史跡 キトラ古墳石室の公開」でしたが、何とご縁があって拝見できました!キトラ古墳の石室はそのまま埋め戻されることが決定しているため、これを観られるのは最初で最後です。興奮しました!


【奈良検定お勉強日記】さんにお誘いいただきました

ほんの数日前、奈良県明日香村の『キトラ古墳』(Wikipedia)の石室が間近で拝見できる、「平成25年 夏の一般公開 国宝 高松塚古墳壁画 修理作業室の公開(第10回)及び 特別史跡 キトラ古墳石室の公開」の応募にハズレてしまい、未練がましくこんな記事を書きました。


【YOMIURI ONLINE】最初で最後…キトラ石室、18日から一般公開」という記事によると、定員3,600人に対して、応募者数は16,052人。約4.5倍の競争率だったそうですから、もう落選しても諦めもつきます。仕方ないですよね……。

なんて思っていたのですが、18日の夜、とある方から「落選なさったことをブログで拝見しました。明日午後のキトラ古墳見学会へ参加するんですが、同行する予定だった知人2名が来れなくなったので、代わりにいかがですか?」というご連絡をいただいたのです!もちろん、大喜びですぐにご返信させていただきました!

「ブログを続けてきて良かった!」と、この時ほど強く思ったことはありません(笑)

私たちにお声がけくださったのは、【奈良検定お勉強日記】(無料メルマガはこちら)の発行者「美嶋カルホ」さんです。

この方は「奈良まほろばソムリエ検定」を、2級→1級→ソムリエと、最短のストレートで合格してしまったすごい方で、メルマガのバックナンバーを拝見して情報の濃さに驚いてしまいました!奈良好きな方はぜひ登録してみてください!


「壁画修理作業室」で飛鳥美人や四神を拝見

国宝 高松塚古墳壁画 修理作業室の公開(第10回)及び 特別史跡 キトラ古墳石室の公開」の流れは、基本的には定期的に行われている特別公開と同様です。2011年の第7回の模様を詳しく書いてありますので、ぜひこちらもご覧ください。


見学の会場は「国営飛鳥歴史公園」です。「受付・資料配布→事前ガイダンス→修復作業室見学→キトラ古墳石室の見学→アンケート回答」という流れで進み、今回は1時間半ほどかかりました。

まずは、受付のすぐ後ろにある建物で、事前ガイダンスを10分ほどお聞きします。スライドを使用して、高松塚古墳とキトラ古墳の概要や、壁画の修復作業の内容などについて説明を受けます。

その後、公園内にひっそりと建つ「国宝高松塚古墳壁画修理作業室」へ移動し、作業室の様子をガラス越しに10分ほど見学できます。ここは以前も拝見していますが、修理室はかなり広く、整然と石室の岩が並んでいる姿は荘厳さすら感じます。未来的な埋葬施設のようなんですよね。


●高松塚古墳は、石室ごと解体され修理作業中。石室に使用された大きな岩ごとここに収められています。キトラ古墳は、石室の表面から漆喰が剥がれかけていたため、石室は現地にそのまま残し、剥がされた壁画のみを展示してありました(どちらの石室も、奈良と大阪の県境にある「二上山」から切りだされた凝灰岩を使用しています)

●今回の一般公開では、前面に「高松塚北壁・玄武」「キトラ・朱雀」「高松塚西壁・女子群像」「キトラ・青龍」「高松塚東壁・青龍」と並んでいました。双方の青龍が並べて展示してありますが、かたや大きな岩、かたやペラペラの壁画のため、見た目のギャップが大きいです。全体的に、高松塚の壁画は美しく修復できたように見えましたが、キトラは褪色した印象でした。

●係の方によると、キトラ古墳の天井壁画「星宿」の修復の区切りがつきそうなため、来年あたりに一般公開できるかも……とのことでした


ガラス越しで数メートル離れた位置からの見学ですから、それほどはっきり見えるわけではありませんが、飛鳥美人の美しさや艶やかさなどは伝わってきますし、本物ならではの迫力を感じます。

今年はキトラ古墳石室の特別公開が重なってしまったため、大変な倍率になってしまいましたが、来年以降も壁画の公開は続けられるはずですから、これに懲りずにぜひ参加して欲しいですね。


最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-01

会場となる「国営飛鳥歴史公園」は、高松塚古墳壁画館・飛鳥歴史公園館など、展示施設も充実しています

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-02
「平成25年 夏の一般公開 国宝 高松塚古墳壁画 修理作業室の公開(第10回)及び 特別史跡 キトラ古墳石室の公開」の受付の様子。申し込みの代表者が当選葉書などを提示して受付します。身分証明書などは不要だったようです

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-03
パンフレット類と入館証。首からこれをぶら下げておきます

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-04
まずは受付の脇にある小部屋でガイダンスを受けます。1回15名程度の少人数なので、騒々しかったり混乱することもありません

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-05
ガイダンスの後、すぐ裏手にある立派な施設「国宝高松塚古墳壁画修理作業室」へと移動し、ガラス越しに本物の壁画を見学します。普段はもちろん立ち入り禁止ですが、公園内のこれだけ近いところに貴重な壁画があるかと思うと、それだけですごいですね!

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-10
いただいた資料たち。画像も豊富で、見ているだけで楽しいです!

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-11
今回の表紙をアップで。向かって左手が「作業修理室」で、右手が「キトラ古墳石室」の様子です


キトラ古墳の「仮説保護覆屋」へ入ります!

例年の一般公開では、この修理作業室を観て終わりですが、今年だけはここからワゴン車2台に分乗してキトラ古墳へ移動して(移動時間10分ほど)、石室の様子を拝見できるのです!

キトラ古墳の石室は、表面の壁画は剥がして修復中ですが、石室の岩はそのまま現地に残され、「特別史跡 キトラ古墳 仮設保護覆屋」という建物で保護されています(詳細記事)。私たちは以前からこの覆屋の様子を外から眺めていましたが、その中に入れるなんて思ってもみませんでした!


最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-06

作業修理室の見学のあと、2台のワゴン車に分乗して、キトラ古墳へと向かいます

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-07
ちょっと離れた場所から見た「特別史跡 キトラ古墳 仮設保護覆屋」。前の組の見学が終わるまでの待機時間がありました。これまで何度もすぐ近くまでは行きましたが、初めてあの中に入れます!

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-08
ここの扉が開いてるのも、人が昇り降りしてるのも初めて見ました!

最初で最後の『キトラ古墳石室の公開』@明日香村-09
いざ、キトラ古墳の石室へ!この建物も数年のうちには撤去されるのは間違いありません。ちょっと寂しいですね


基礎工事「版築」跡もはっきりと見えました

普段は上がれない階段を進んでいくと、次々と扉が現れ、キトラ古墳の石室へ達するまで4つの扉をくぐらなくては到達できないようになっています。内部は思ったよりも狭く、まるで宇宙船のようでした。

2つ目の扉をくぐると、石室の保存のため空気がひんやりと冷却されています。人がかろうじてすれ違える程度の小部屋で、壁面から天井から金属むき出しで、最新の工場のよう。壁のいたるところに、昔の冷蔵庫の裏側のクネクネの金具のようなパイプが巡らされており、ここに水を流して冷却しているのだそうです。

また、ここでは作業の際に使ったコテ(画材屋で買ったもの)や、壁画の漆喰が落ちてこないように抑える自作の道具(湯豆腐をすくう網のような形で、先にシリコンが入っている)、壁に強く張り付いた漆喰を剥がすために自作したダイヤモンドカッター、作業の際に着た作業着(ものすごく暑いんだとか!)などが展示されていて、説明をお聞きしながら実際に触れるようになっていました。

そして、3つ目の扉をくぐり、キトラ古墳の石室とドア越しに対面します。

【MSN産経west】古代の英知に感嘆 奈良・キトラ古墳「最後の公開」」この記事の写真のように、ガラス扉越しに石室を拝見します。かなり小さな窓に見えますが、両開きの扉になっていますから、この右手にももう一箇所のガラス窓があります。

●キトラ古墳の石室のサイズは、幅1m×高さ1.2m×奥行2.4mほど。大人が立てるほどの高さはなく、ずっと立ち膝での作業だったとか。表面の漆喰の壁画だけ剥がされ、石室はそのままになっています。鎌倉時代に盗掘被害を受けた盗掘穴があり、作業中もそこから出入りしたそうです。

●石室内部には、カビの発生などを防ぐ機材が入っていました

●石室の向かって右手には、土を何度も突いて固める「版築(はんちく)」(Wikipedia)の特徴である、色違いの土が何層にも重なっている部分が見られました。ただ単に土を盛るのではなく、こうした基礎工事がしっかりとしてあるからこそ何世紀も崩れずにあるんですね。

●キトラ古墳の石室の屋根部分は、天井石が民家の屋根の形のように削られています。高松塚古墳のものはここを削ったりしていないのだとか。キトラ古墳の方が進化したのかと思いきや、これは家形に作られた土器に通ずるデザインで、高松塚よりも古い時代になるのだそうです。

●今後、キトラ古墳の石室はそのまま埋め戻されるため、一般公開は今回が最初で最後です。2016年度には墳丘の復元整備が完了し、すぐ近くにキトラ古墳の壁画を展示する施設も作られます(もちろん本物が展示されます)。高松塚古墳の墳丘は今は石室すらありませんが、キトラ古墳はちゃんと石室がある墳丘になるそうですから、より価値がありますね。


などなど、短い時間でしたが色んな発見がありました!

貴重な壁画をそのまま現地で保存できないのかという意見もありますが、事前のガイダンスで観た映像では、過去の地震などによって地割れが生じ、その隙間からムカデなどが入り込み、その死骸にカビが発生して……という事態が起こってしまいました。今後ともそれを避けるのは難しいとの判断から、壁画を剥がして修理・展示へ踏み切ったそうです。いずれにしても、最良の方法で貴重な古墳と壁画を守っていって欲しいものですよね。

また、今回の特別公開にあたって、文化庁や奈文研の方々、イベントスタッフの方やアルバイトさんなど、たくさんの方が関わっていますが、どなたも本当に丁寧に対応してくださって恐縮するほどでした。質問にも分かりやすく答えてくださいましたし、心から感謝します。ありがとうございました!



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■キトラ古墳

HP: http://www.asuka-park.go.jp/kitora/index.html
住所: 奈良県高市郡明日香村大字阿部山


※Special Thanks!
●メルマガ【奈良検定お勉強日記】さん
●ブログ【夢検索人】さん


■参考にさせていただきました

【MSN産経west】古代の英知に感嘆 奈良・キトラ古墳「最後の公開」
【47NEWS】キトラ古墳の石室、見納め 18日から初の一般公開
【NHKニュース】キトラ古墳 「絵のない石室」公開


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