2017-07-30

六道絵がすごい!『源信 地獄・極楽への扉』@奈良博

六道絵がすごい!『源信 地獄・極楽への扉』@奈良博

「往生要集」を著し、地獄と極楽の具体的なイメージを作り上げた、平安時代の高僧・恵心僧都源信。奈良国立博物館で1000年忌特別展『源信 地獄・極楽への扉』が開催中です。リアルな地獄を描いた「六道絵」や不思議な「病草紙」、さまざまなパターンの「阿弥陀聖衆来迎図」など、迫力のある素晴らしい内容でした!


地獄のイメージを完成させた高僧

「恵心僧都源信(えしんそうずげんしん)」(942~1017)は、奈良の当麻(現在の葛城市当麻あたり)で生まれ、比叡山の横川(よかわ)で修行を積んだ平安時代の高僧です。紫式部『源氏物語』に登場する「横川の僧都」のモデルになったともいわれている人物です。

死後に阿弥陀如来の来迎を受けて、極楽浄土へ生まれることを願う「浄土信仰」を広めた僧として知られ、著作の「往生要集」(おうじょうようしゅう)は、現在まで続く「地獄」のイメージの元となりました。

奈良国立博物館で開催中の、1000年忌特別展『源信 地獄・極楽への扉』(2017年7月15日~9月3日)では、前半で源信の生い立ちをだどり、さらに地獄と極楽のイメージがたっぷりと伝わる、迫力のある内容でした!

●第1章 源信誕生
●第2章 末法の世と横川での日々
●第3章 『往生要集』と六道絵の世界
●第4章 来迎と極楽の風景


特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-01

特別展『源信』開催中の、奈良国立博物館の前の様子。夏休み中とはいえ平日でしたし、やや渋めの企画でもあり、館内は空いているかと思いきや、結構な人出でした。ちなみに、新館前の池の蓮もまだ咲いていますので、ここで極楽をイメージしてみてください!

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-02
入口前の巨大パネル。メインビジュアルは、滋賀・聖衆来迎寺の国宝「六道絵」のうちの阿鼻地獄から。無理やり口を広げられて熱くたぎった鉄の塊を飲まされています。インパクト大!


生まれ故郷の葛城市当麻の品も

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-03
第1章「源信誕生」より。源信は、二上山の麓にある当麻の里で生まれました。向かって右ページは、源信の母が祈願したという高雄寺・観音菩薩立像(重文)。左は、阿日寺・恵心僧都源信坐像。当麻の里のゆかりの品も多数出陳しています(以下、画像は図録より)

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-04
こちらも阿日寺・恵心僧都絵伝。僧侶が源信の生涯を抑揚をつけて解説していく「絵解き」に使われているものです。下段から上段へと進みます。前半は「往生要集」の写しや経典など、やや渋めの展示内容が続きます


国宝「六道絵」全15幅がずらり!

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-06
この特別展の最大の見どころとも言えるのが、やはり滋賀・聖衆来迎寺の国宝「六道絵」でしょう。掛け軸で15幅ありますが、それがずらりと一挙に展示されていてものすごい迫力です!展示は前期のみ(7月15日~8月6日)なのでお気をつけください

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-07
六道絵の一部。切り刻まれてものすごい苦痛を味わいますが、鬼が「活活(かつかつ)」と唱えると、また生まれ変わってきてしまって、延々と責め苦が続きます。往生要集では、こうした地獄の恐ろしさをリアルに伝えることで、人々が生活を正し、極楽往生を遂げることができるような内容になっています。いわゆる「往生マニュアル」のようなものなのだとか

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-08
犬に食われている図。火や刃物、動物など、地獄へ堕ちたものにはさまざまな苦痛が降りかかります。これを見た当時の人々はどれだけ怖かったことでしょうか。当時は釈迦が説いた正しい教えが廃れ、荒れた「末法」の世が始まると不安が募っていた時期ですから、より強いインパクトがあったでしょう

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-09
奈良国立博物館が所蔵している国宝「辟邪絵(へきじゃえ)」。疫鬼を退散させる善神を描いた絵なのですが、なかなかの恐ろしさです。中央は八脚の「神虫」。鬼たちを捕まえてムシャムシャ食べてます。この他、(屋根の上に乗せられている姿でお馴染みの)鍾馗さんのえぐいお仕置きシーンなども。必見です!

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-10
こちらは京都国立博物館所蔵の「病草紙(やまいのそうし)」(国宝)より、「霍乱の女」。さまざまな病を描いたもので、下痢と嘔吐を繰り返す症状を描いています。何でこんなものを描く必要があったのか、現代人にはなかなか理解できませんが、こうした変わった作品を見るのも楽しいですね(※会期中に展示替えあり)


来迎図もいろんなパターンが並びます

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-11
第4章「来迎と極楽の風景」では、さまざまな阿弥陀聖衆来迎図のバリエーションが見られて面白かったです!写真は、和歌山・有志八幡講「阿弥陀聖衆来迎図」(国宝)。8月22日~9月3日のみの展示ということで、実物は見られませんでしたが、全3幅の大迫力なのだとか!正面から来迎を描いた図が何点か展示されていて、初めて拝見したので驚きました

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-12
こちらは京都・知恩院の「早来迎」として知られている「阿弥陀聖衆来迎図」(国宝)。来迎図に大和絵のタッチで山や緑が描かれているのが面白いです。間近で拝見するとその素晴らしさがはっきりと伝わってきました!(展示期間は7月31日まで)

特別展『源信 地獄・極楽への扉』@奈良国立博物館-14
物販スペースの脇には、写真撮影可能なこんなパネルが用意されています。地獄の獄卒に責められている風で撮影してみました(笑)


当麻の里の源信ゆかりのお寺

なお、恵心僧都源信が生まれた、葛城市当麻の里では、ゆかりのお寺や法要が今なお数多くあります。生誕の地に建つ『阿日寺』、源信が始めた「聖衆来迎練供養会式」が続けられている『當麻寺』、真筆の板仏が伝わる『福応寺』など。

興味をお持ちの方はぜひ訪れてみてください!



●1000年忌特別展『源信 地獄・極楽への扉』

HP: http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2017toku/genshin/genshin_index.html
会期: 2017年7月1日(土)~9月3日(日)
休館日: 毎月曜日(7月17日、8月14日は開館)
開館時間: 9:30 - 18:00
拝観料: 大人 1,500円、大学生・高校生 900円、小中学生 500円


■奈良国立博物館

HP: http://www.narahaku.go.jp
住所: 奈良県奈良市登大路町50番地
電話: 050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
休館日: 月曜日(休日の場合は翌日休み)
開館時間: 9:30 - 17:00
観覧料: 平常展 大人500円、大学生250円、高校生以下は無料(特別展の料金はその都度決定)
駐車場: 周辺の有料駐車場を利用
アクセス: JR・近鉄「奈良駅」から、市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ(近鉄奈良駅から徒歩約15分)

※実際に拝見したのは「2017年7月25日」でした


■参考にさせていただきました

源信 (僧侶) - Wikipedia
往生要集 - Wikipedia






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