2011-05-15

称念寺の本堂「障壁画」特別公開@橿原市今井町

称念寺の本堂「障壁画」特別公開@橿原市今井町

重要伝統的建造物群保存地区に指定されている橿原市今井町。毎年5月に開催されるイベント『今井町並み散歩』の期間中、重文民家・伝統的建造物の内部公開とともに、寺内町の中核をなす『稱念寺(称念寺。しょうねんじ)』の本堂障壁画の特別公開が行われました。


荒れた本堂も10年間の大改修工事スタート

橿原市にある重要伝統的建造物群保存地区『今井町(いまいちょう)』。江戸時代に商業都市として「大和の金は今井に七分」と言われるほど発展し、一時は大阪の堺と並ぶほどの自治都市として栄えていました。

今井町は600m×310mという小さな寺内町ですが、その中核となったのが『称念寺(しょうねんじ)』です。創建年代は不明ですが、江戸時代初期には存在していたと考えられています。称念寺の「本堂」は入母屋造・本瓦葺、古式な大型真宗本堂の貴重なもので、2002年に国の重要文化財の指定を受けていますが、これは浄土真宗としては、本山の本願寺以外では初めてのことだったとか。

しかし、そんな歴史ある寺院も、ここ数年は見るからに荒れ果ててしまって、まさに倒壊寸前となっていたのです。


そして先日、こんな失礼な内容だったにも関わらず、この記事をご覧くださった住職代務をなさっている今井さまからこんなコメントをいただいていました。

今井町称念寺の住職代務 今井慶子です。

おかげさまで昨年より10年かけて修復することになりました。ぼろぼろでも掃除は行き届いていたのですが、今の倒れかけを懐かしむ方もおられますが、現状を残しつつちゃんと修復して下さいます。予算は15憶円これが正式です。

今年つまり平成23年5月15日には本堂内の一部修復が終わった障壁画を無料で公開します。併せて瓦寄進は2千円で行います。

修復前の様子を拝見するため、そして少しでも寄進させていただくため、お詣りに伺いました。


称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-01

橿原市今井町に建つ『今井山 称念寺』。この日は「今井町並み散歩」というイベントが行われており、それに合わせて本堂の障壁画を特別公開していたため、ものすごい人出でした

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-02
称念寺「本堂(重文)」の前には、障壁画を観るための行列ができていました

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-03
本堂の南側は更地に。建物を突っ張り棒で支えているものの、それでもだいぶ傾いているのが分かります。2010年から10年間をかけて解体修理が行われます。本当に間に合ってよかったです!

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-04
称念寺の本堂裏手は、トタン板に囲まれて物々しい雰囲気になっています。映画「ウォーターワールド」の世界みたいですね(笑)

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-07
本堂内部の天井もこんな状態です。雨漏りがするのも無理はないですね


本堂の障壁画「二十四孝図」を拝見しました

今回、特別公開されたのは、称念寺・本堂の内外陣境に描かれた障壁画「二十四孝図」です。中国の孝行話をまとめた24のお話の中から、7話が描かれています。色の剥落や欠損も目立ちますが、いかにもお寺らしい鷹揚な絵柄でした。

この障壁画も修復し、本堂の解体修理が終わったら元の場所に戻される予定なのだそうです。工事の終了予定は「平成31年12月」と、気が遠くなるほど先のことですが、その日を楽しみに待ちたいと思います。


称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-05

障壁画について。「展示されている障壁画は、本堂の内外陣境の飛貫・台輪間に描かれたもので『二十四考』(後世の範として孝行が特に優れた人物二十四人を取り上げた中国の書物)を画題としています。すでに色料の剥落や変退色が著しく、下地がむき出しとなった箇所もあったため、この度の本堂の解体修理に際して汚損・破損がないよう一時取り外していますが、本堂の修理完成後はもとの位置に復旧します。」

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-06
障壁画公開の様子。中国の孝行話をまとめた『前相二十四孝詩選』という詩書が、日本には南北朝時代に伝わり、江戸時代に『御伽草子』の中の「二十四孝」としてまとめられたのだとか。称念寺の障壁画に描かれているのは、その中の7話です

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-08
説明書きとともに、障壁画がずらりと展示されていました。これは病気の母に竹の子を食べさせる「孟宗(もうそう)」というお話を描いたものです

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-09
「郭巨(かっきょ)」。孫を可愛がり食べ物を分け与える母を見て、泣く泣く子供を埋めに行くと・・・というお話しだとか。障壁画も欠損した部分が目立ちますが、上手く修復できるといいですね

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-10
「楊香(ようきょう)」。父とともに山中で虎に襲われ、「父より先に私を食べてください」と祈ったら虎が逃げ去ったというお話です。ほぼ同じ話が「今昔物語集巻九」に収められているとか

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-11
「大舜(たいじゅん)」。親孝行で心が広い大舜は、田を耕していると大きな象が、草むしりしていると鳥たちが手伝うような人物でした。その人柄から、王の娘を娶り、後に国王にまでなったとか。象の表情がいいですね!

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-12
「田眞(でんしん)」。亡くなった親の財産を三人兄弟で分けた際、庭の見事な紫荊樹(しけいじゅ)も切って分けようとしました。しかし、その翌朝、枝は枯れかけていて、「木を切るのは間違いだ。このまま大切に育てよう」と決めたところ、みるみる樹勢を取り戻したというお話です

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-14
「董永(とうえい)」。貧しいながら、亡くなった父のために借金までして立派なお葬式を挙げた董永。ある日、美しい女性が嫁に来て、一ヶ月に織物を六百反も織り、その借金を返済します。心からお礼を言うと、その方は天の織り姫で、天に帰って行きました・・・とのこと

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-15
董永の天女の絵。お寺の障壁画らしい、荘厳な美しさがありますね

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-16
「ゼンシ」というお話。両親の目が見えなくなり、それには鹿の乳が良いと聞くと、鹿になりすまして群れに入ります。人間が混ざっていることに驚いた猟師が理由を聞いて感心した・・・という場面です

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-17
ゼンシのアップ。鹿になりすましています。上手く鹿のミルクは採取できたのでしょうか?

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-18
称念寺の本堂前では、瓦寄進(一口2,000円)の受付と、絵葉書の販売が行われていました。本堂の改修工事に入りますが、寄進は引き続きできると思いますので、今井町散策の際にはぜひ!なお、その後ろに見えるのが「明治天皇駐蹕之処」の碑。この日は背後の庫裡も拝見できました

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-20
称念寺は、明治天皇の行在所でした。その際に使用されたお風呂が展示されていました。なお、明治天皇がここにいらっしゃった際に、西郷隆盛挙兵(西南戦争)の一報が届き、早々に後にされたという逸話も

称念寺(障壁画特別公開)@橿原市今井町-21
その隣にある織物も、明治天皇ゆかりの物だと思いますが、詳細は不明



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■稱念寺(称念寺)

HP: http://www.nara-shonenji.com/
住所: 奈良県橿原市今井町3-2-29
電話: 0744-22-5509
宗派: 浄土真宗本願寺派
本尊: 阿弥陀如来
創建: 16世紀中ごろ
拝観料: 無料
駐車場: なし
アクセス: 近鉄橿原線「八木西口駅」から徒歩約10分






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