2015-07-10

恵心僧都源信の遺徳を偲ぶ法要『恵心忌』@阿日寺(香芝市)

恵心僧都源信の遺徳を偲ぶ法要『恵心忌』@阿日寺(香芝市)

平安時代の僧・恵心僧都源信の生誕地に建つ『阿日寺(あにちじ)』。毎年7月10日の源心の命日には、その遺徳を偲ぶ法要「恵心忌」が催され、寺宝「地獄絵図」五幅もこの日のみ公開されます。2015年の今回は「九九九回忌」の法要で、2016年には「千回忌」を迎えます。二十五菩薩の来迎を立体的に描いた欄間なども必見です!


恵心僧都源心の生誕地に建つ「誕生院」

「ぽっくり寺」としても知られる、香芝市良福寺の『阿日寺(あにちじ)』は、平安時代中期の僧「恵心僧都源信」(Wikipedia)の誕生地に建っています。

当麻の地に生まれた源信は、後に「往生要集」(Wikipedia)を著し、浄土思想を確立。地獄と極楽のイメージを作り上げた方でもあります。

古くは境内からふたこぶの「二上山」が美しく見られたでしょう。源心は二上山に沈む夕日を眺めて、その先の浄土を感じていたといいます。現在では民家が建ってしまって見えませんが、ぜひ探してみてください。


阿日寺『恵心忌』@香芝市-01

香芝市良福寺の住宅地に建つ『阿日寺』。山門前には「恵心僧都誕生院」という石碑が立ちます

阿日寺『恵心忌』@香芝市-02
阿日寺・本堂。普段は静かなお寺さんですが、7月10日の「恵心忌」大法要の日には、檀家さんのお手伝いもあり、厳かで華やかな雰囲気になります

阿日寺『恵心忌』@香芝市-03
扁額には「恵心僧都 誕生院」の文字が


毎年「7月10日」は恵心忌の法要です

阿日寺では、毎年「7月10日」の恵心僧都源信の命日に「恵心忌」という法要が行われています。

源心の遺徳を偲ぶとともに、極楽往生を祈願するもので、この日のみ寺宝の五幅の「地獄絵図」が一般公開されます。普段は堂内の拝観には事前予約が必要ですが、この日は誰でもお詣りすることができます。

ちなみに、2016年(平成28年)には「千回忌」を迎えます。この時は、より大きな法要となることでしょう。期待して待ちたいと思います!


阿日寺『恵心忌』@香芝市-04

境内の張り紙。恵心忌は毎年7月10日に催されます。9時~12時「健康・長寿・安楽往生 ご祈願」、13時~14時「恵心僧都 遠忌法要」となります。午前中には、地獄絵を用いての絵解き(図を指しながら内容を分かりやすく解説するもの)も行われているようです

阿日寺『恵心忌』@香芝市-05
私たちは午後からの法要に参列させていただきました。浄土宗のこうした法要を拝見するのは初めてだったので、見慣れない所作などもあって興味深かったです。僧侶の方たちがお厨子の周囲をまわりながら念仏を唱えたり、健康や安楽往生を祈願して奉納された塔婆を順に読み上げたり。また、浄土宗の木魚はリズムが裏打ちになっているので、そこも注目です!

阿日寺『恵心忌』@香芝市-06
ご本尊の阿弥陀如来像は、源心が自ら刻んだと伝わっています。脇には観音・勢至菩薩が。その前に座しているのは「恵心僧都源信坐像」です

阿日寺『恵心忌』@香芝市-07
本堂の右手には、美しい五幅の「地獄絵図」が公開されていました。拝見できるのは7月10日のみ。ちなみに、この掛け軸の裏には、国の重要文化財に指定されている「木造大日如来坐像」と、ちょっと珍しい半跏踏下坐のお地蔵さまがおわします。拝見したい場合は他の日にお詣りしてください

阿日寺『恵心忌』@香芝市-08
中央の閻魔さまが描かれたもの。制作年代などは分かりませんが、とても美しい地獄絵です。凄惨なシーンがとても鮮やかに描写されていますが、どこかユーモラスです

阿日寺『恵心忌』@香芝市-09
血の池地獄など、さまざまな地獄の責め苦が描かれています。こうした地獄の姿を体系化したのが恵心僧都源信です。その生誕地のお寺で地獄絵図を拝見すると、とても感慨深いものがありますね

阿日寺『恵心忌』@香芝市-10
ご本尊へ向かって左手には、「恵心僧都一代記絵伝」ニ幅が。源心の生涯を描いたもので、これも絵解きに使われたのでしょう。千回忌の際にはじっくりと拝聴してみたいです

阿日寺『恵心忌』@香芝市-11
恵心忌の際にまかれた「散華(さんげ)」もいただきました。花びらを模したもので、いろんなデザインがあります


菩薩さまのお迎えを表した欄間が見事!

阿日寺『恵心忌』@香芝市-12
また、阿日寺の本堂には、天国からお迎えが来るシーンを表した「二十五菩薩来迎(プラスお地蔵さま1躯)の欄間があります。江戸時代のものとのことですが、とても珍しいですし、本当に美しいのです!

阿日寺『恵心忌』@香芝市-13
それぞれ手に楽器を持ち、美しい音色を奏でながらお迎えに来てくれる姿を刻んでいます。阿日寺からも近い當麻寺で、毎年5月14日に催される『練供養会式』もこれと同じ世界観を表しています

阿日寺『恵心忌』@香芝市-14
雲の部分がせり出しているのが分かります。板に精密な彫りを施して立体的にみせるのが普通ですが、さらに材を足して前面に飛び出させています。発想がすごいですよね


地元産の釣り鐘、菊と三つ葉葵の瓦など

阿日寺『恵心忌』@香芝市-15
本堂の脇に建つお堂。「恵心僧都源信坐像」はこちらのお堂に祀られていましたが、防犯のため本堂へ移されています。普段はもちろん開扉されていませんが、恵心忌の事務なども行われていたため、内部を拝見させていただきました

阿日寺『恵心忌』@香芝市-16
お堂内部。正面のお厨子の中に、源心の坐像が祀られていました。現在は、源心の父母の位牌が祀られています

阿日寺『恵心忌』@香芝市-17
瓦屋根には「恵」の文字。恵心僧都源信の恵です

阿日寺『恵心忌』@香芝市-18
この日は、地元の物知りな檀家さんが多数いらっしゃったため、いろんなお話も伺えました。このお堂の脇に無造作に置かれている釣り鐘も江戸時代のもの。この辺りは古くは「五位堂村」で、鋳物産業が盛んだったとか。2015年秋、地元の二上山博物館で「鋳物師の里、五位堂」という企画展があるそうですので、そちらも注目したいと思います

阿日寺『恵心忌』@香芝市-20
また、何気なく通り抜けていた山門の瓦も、教えてもらってからよく見てみると、ここには「菊」(天皇家?)の御紋の瓦があり……

阿日寺『恵心忌』@香芝市-21
その脇には「三つ葉葵」(徳川家?)の御紋の瓦も。どういった経緯なのは不明ですが、面白いですね



■阿日寺(あにちじ)

HP: 参考サイト(巡る奈良)
住所: 奈良県香芝市良福寺361
電話: 0745-76-5561
宗派: 浄土宗
本尊: 阿弥陀如来
創建: 不詳
拝観料: 志納
拝観時間: 9:00 - 12:00(要予約。水曜休)
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄「五位堂駅」、近鉄「下田駅」から徒歩約20分

※本堂のお参りをご希望の方は、事前に電話予約が必要です。拝観させてただける時間は「9:00~12:00」まで。水曜はお休みです。

※毎年7月11日の「恵心忌(えしんき)」の法要の際には、予約なしで拝見できます。この日は五幅の「地獄絵図」が公開されます。


■参考にさせていただきました

香芝・阿日寺周辺  2009.7.10 ( その他文化活動 ) - ノンさんのテラビスト - Yahoo!ブログ
ぽっくり寺・阿日寺は、源信生誕の寺(産経新聞「なら再発見」第40回) - tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」


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