2014-04-15

仏像好きは必見!充実の特別展『鎌倉の仏像』@奈良博

仏像好きは必見!充実の特別展『鎌倉の仏像』@奈良博

奈良国立博物館で開催中の特別展『武家のみやこ 鎌倉の仏像 ─迫真とエキゾチシズム─』(~2014年6月1日(日)まで)へ行ってきました。奈良と縁の深い慶派・善派仏師たちが関わった仏像たちは、南都の仏像との共通点もありながら、中国・宋の影響を受け、土紋・遊戯坐像・法衣垂下像などの特徴が観られます。仏像好きな方は必見です!


修理中の「鎌倉国宝館」収蔵品などが奈良へ!

現在、奈良市の奈良国立博物館で開催中の特別展『特別展 武家のみやこ 鎌倉の仏像 ─迫真とエキゾチシズム─』(2014年4月5日(土)~6月1日(日))。

現在、鎌倉の仏像を多数所有している「鎌倉国宝館」(Wikipedia)が、大規模な修復作業中(2014年7月上旬まで)のため、その所蔵品を中心に「53件」(うち重要文化財26件) が出陳されています。

奈良からは遠く離れた鎌倉の地ですが、仏像彫刻の視点から考えると、たくさんの共通点が見つかります。

●奈良の土地を中心に活動した「奈良仏師」の集団が造像を手がけていること。平家の焼き討ちで焼失した東大寺の再建に尽力した重源に重用された、運慶や快慶を輩出した仏師集団「慶派」は、鎌倉武士の要請に応じてこの土地でも多数の仏像を手がけました。

●13世紀半ば、西大寺の律宗僧である忍性・叡尊が鎌倉へ赴いたのと同時に、奈良でも多数の造像を手がけた善円・善春親子らの「善派仏師」が活躍。多数の仏像を遺しました。

奈良の仏師たちが活躍しながらも、当時の流行であった中国の宋風の影響が色濃く感じられるのが、鎌倉の仏像たちなのです。そんな仏さまたちを奈良の土地で拝見できるなんて、とても不思議な感じですし、大きな意義があると思います。


特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-01

奈良国立博物館で開催中の特別展『特別展 武家のみやこ 鎌倉の仏像 ─迫真とエキゾチシズム─』(2014年6月1日(日)まで)。奈良を拠点に活躍した奈良仏師(南都仏師)たちが手がけた像も多く、ある意味では「里帰り展」といえるでしょう

特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-02
別のポスター。道教の影響を受けた、禅宗独特の「伽藍神像」(建長寺)が写っています。奈良の仏像と親しい関係にありながら、奈良では決して見られないような仏像文化があるのが面白いですね


鎌倉仏といえば力強い表現と武人肖像など

今から2年ほど前、私たちは関東の仏像好きな友人たちに案内してもらって、鎌倉の仏像巡りをしてきました。その時に「鎌倉国宝館」も拝見していますし、覚園寺・杉本寺・宝戒寺・来迎寺・浄光明寺などをお詣りしてきました。

その時にも感じたことですが、やはり武家好みの力強い像が多いことは間違いありません。奈良時代や平安時代などの古典的な仏像とは違い、今にも動き出しそうな体躯の表現や、リアルでありながらデフォルメが効いた表情など、日本の仏像彫刻のピークの時代であったことを感じさせるようなものが多いのです。

見た瞬間に「かっこいい!」と言ってしまうような、現代のフィギュア文化を先取りしたような仏さまも多いですから、あまり仏像に詳しくない方でも分かりやすいでしょう。


特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-03

2012年5月に行った時の「鎌倉国宝館」。ここの収蔵品・寄託品を中心に今回の企画展が催されています。奈良博などと比べれば規模は小さめですが、貴重な鎌倉仏が所狭しと並んだ、とても濃密な空間でした

特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-04
鎌倉国宝館が所蔵する「十二神将像」(以下、画像はすべて図録より)。8躯は鎌倉時代、残り4躯は室町時代以降のもの。大きな腰のひねり、極端な前傾姿勢など、見栄を切っている役者のよう。興福寺・南円堂の四天王像などとイメージが近いですね。いかにも鎌倉時代の仏さまといったイメージです

特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-06
また、鎌倉らしいといえば、「北条時頼坐像」(建長寺)のような武人肖像彫刻もそうでしょう。今回は「上杉重房坐像」(明月院)が出陳されています。この独特な衣装は「強装束(こわしょうぞく)」というものだとか


土紋・遊戯坐像など、鎌倉独特のスタイルが

館内にも説明書きがありますが、簡単に「鎌倉の仏像の特徴」を覚えておくとより分かりやすいでしょう。

●土紋(どもん)-- 粘土質の土をビスケットのように型抜きし、これを貼り付けて文様を表す技法。鎌倉以外ではほぼ観られない独特なものです。粘土なのに精密に作られていて驚きます!「韋駄天立像」(浄智寺)にはっきりと残っています。

●遊戯坐像(ゆげざぞう)-- 禅宗寺院の観音菩薩像に多い、片足を踏み下げてくつろいだ姿勢をとる像のこと。鎌倉時代後半から南北朝時代にかけて、鎌倉周辺で多く作られたもの。今回の特別展では「水月観音遊戯坐像」(東慶寺)が観られます。

●法衣垂下像(ほうえすいかぞう)-- 着衣の裾を台座に長く垂らしたもののこと。飛鳥・奈良時代の「裳懸座(もかけざ)」と同様で、平安時代に廃れていたものが、鎌倉時代に復活。両膝くらいから左右の裾を垂らすタイプが増えました。「釈迦如来坐像」(東京・光厳寺)など、数体が観られます。

この他、水が流れるような優美な衣紋(服装のひだ)の表現、高く装飾的な髻(もとどり。髪を結い上げたような形のもの)など、いずれも宋風の表現を取り入れたものだとか。鎌倉時代に、文化の中心地となったこの土地だけに見られる表現もあり、とても面白いんですよね。

鎌倉の外ではなかなかお会いできない、とても貴重な仏さまを間近に拝するチャンスですから、ぜひじっくりとご覧ください!


特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-05

「鎌倉の仏像」展の見どころを何点か簡単に。「初江王坐像(しょこうおうざぞう)」(円応寺)。冥界の十人の王のひとり。着衣が中国風で、流れるような優美さと複雑さがあります。怖い表情の「倶生神坐像」2躯たちも迫力あります!

特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-09
図録の表紙も飾っている美仏「観音菩薩坐像」(浄光明寺)。鎌倉のお堂で阿弥陀三尊像がそろったところも拝見していますが、その時はやや遠目からだったので、ここまで美しいとは気づきませんでした!高く装飾的な髻も見事ですし、指先の艶かしい表現も素晴らしいですね!

特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-10
着衣の裾を長く下に垂らした「法衣垂下像(ほうえすいかぞう)」の像。向かって左側の「地蔵菩薩坐像」(来迎寺)が出色でした。像高84.1cm。重厚感がある体躯と、装飾的な裾の垂れ方が見事です!如来風の衣装で定印を結ぶ、奈良ではほとんど見られないであろうお地蔵様ですね

特別展『鎌倉の仏像』@奈良博-11
美仏として名高い、鎌倉・東慶寺の「水月観音遊戯坐像」。拝観には事前予約が必要だったりと、なかなかお目にかかれない仏さまです。三十三観音のひとつを造像したもので、足をゆったりと崩した「遊戯坐像」。とにかく優雅で艶かしいですね。図録などで見ていた時はもっと大きな像かと思っていましたが、わずか34.0cmという小ささに驚きました!貴重な機会ですからぜひお会いしておいてください!



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■奈良国立博物館

HP: http://www.narahaku.go.jp/index.html
住所: 奈良県奈良市登大路町50番地
電話: 050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
休館日: 月曜日(休日の場合は翌日休み)
開館時間: 9:30 - 17:00
観覧料: 平常展 大人500円、大学生250円、高校生以下は無料(特別展の料金はその都度決定)
駐車場: 周辺の有料駐車場を利用
アクセス: JR・近鉄「奈良駅」から、市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ(近鉄奈良駅から徒歩約15分)


●特別展 武家のみやこ 鎌倉の仏像 ─迫真とエキゾチシズム─

HP: http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2014toku/kamakura/kamakura_index.html
会期: 2014年4月5日(土)~6月1日(日)
休館日: 毎月曜日(4月28日、5月5日は開館し、5月7日(水)は休館)
開館時間: 9:30 - 17:00(金曜日は19時まで)
拝観料: 大人 1,300円、高校・大学生 800円、小・中学生 500円


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