2008-12-01

お庭・仏像でほっこりしたい『正暦寺』

正暦寺

紅葉シーズンのピークを目指して、そして週末を避けて、奈良の隠れた紅葉の名所として知られる『正暦寺』へ行ってきました。

しかし、結果から先に書くと、「昨晩あたり冷え込んだから・・・。例年ならピークなんだけど・・・」という感じで、残念ながら少し遅かったようでした。紅葉の素晴しさは半減してしまいましたが、いい仏像と落ち着くお庭がある、小じんまりとしたとってもいいお寺でした!


「日本清酒発祥の地」なのです

正暦寺は、奈良市と山野辺の道の一帯の間くらいにあるお寺です。創建は992年のことで、1180年に平重衡による南都焼き討ちなどに合いながらも、真言密教・法相宗の寺院として、威勢を誇っていました。しかし、度重なる火災に加えて、明治期の廃仏毀釈運動の影響もあり、今では山間にひっそりと佇む小さな寺院となっています。

正暦寺で面白いのは、ここが「日本清酒発祥の地」であるということでしょう。あくまでも「日本酒発祥の・・・」ではなく、「日本清酒発祥の・・・」ですので、お間違いなく。

お寺でお酒を造るなど、ちょっと不謹慎なようにも思えますが、神仏習合が当然だった時代に、神様へ奉納するお酒が必要で、それを荘園でとられたお米から作っていたのだそうです。現在でもわずかながら日本酒の製造は続けられていて、お土産として販売もされていますので、興味のある方はぜひどうぞ。


正暦寺(2008紅葉)-01

「TV見仏記」で、みうらじゅん氏から看板の多さを驚かれていた『正暦寺』。紅葉の季節になると、「山内整備費」名目で駐車料金(500円)を徴収されます。この日は、もうすでに紅葉が終わりかけで、やや淋しい感じでした

正暦寺(2008紅葉)-02
正暦寺は「日本清酒発祥の地」であり、それを示す石碑が建っていました。お寺で酒造りというのおかしなものですが、神仏習合のなごりで、神様へ献上するお酒として自家製造していたのだとか。現在も少量ながら製造が続けられているそうです


奈良の隠れた紅葉の名所です

そして、肝心の紅葉ですが、残念ながら数日遅かったようです。この日は12月1日で、例年であればまだピークでも不思議の無い日だとのことでしたが、残念ながら今年は少し早めに終わってしまったのだそうです。

しかし、実は私は「奈良の紅葉=正暦寺」というイメージはあまりなく、事前にそれほど期待していたワケではありませんでした。ところが、かなりのレベルの名所なんですね。モミジがアーチになって頭上を覆う姿など、どことなく京都風な印象もあって、ピークに来たらさぞ良かったんでしょうね。

紅葉の時期には、駐車場が有料になったり(@500円)、細い道が片側通行になったりと、色々と大変ではありますが、それだけの価値があると思います!少なくとも多武峰あたりの大混雑よりもだいぶマシでしょう(笑)


正暦寺(2008紅葉)-03

紅葉のピークには、ほんの2-3日ほど遅かったようですが、大量の千両万両が彩りを添えてくれていました。これだけ大量にあると、なかなか鳥も食べ尽くせないようですね

正暦寺(2008紅葉)-04
境内の通路を覆いつくすような紅葉たち。ピークの時にはさぞ見事だったと思います。境内がゆったりと広いため、どことなく京都のお寺っぽい雰囲気もありました

正暦寺(2008紅葉)-05
実物はもっともっとキレイだったんですが・・・。これが精一杯です!


ひっそりとした本堂も雰囲気あります

紅葉のアーチを抜けていくと、かなり立派な石垣と石段が見えてきます。その上部の広々とした敷地に、小山に抱かれるようにひっそりと建っているのが、正暦寺の本堂です。これは1916年に再建されたもので、建物としてはそれほど面白いものではありません。しかし、とっても「ひっそり感」があって、とても愛らしい(?)雰囲気のお堂なのです。

ご本尊は、年3回ご開帳されている、台座に腰掛けた珍しい倚像(いぞう)の「薬師如来坐像(重文)」です(この日はお前立ちを拝見しました)。

わずか36cmの小さな像ですが、白鳳時代の作で、丸い高下駄のような「踏割蓮華(ふみわりれんげ)」の上に両足を置くという、かなり変わった仏さまです。まるで、普通の椅子にゆったりと腰掛けられているようで、小さな仏像ながらも、風格が感じられます。


正暦寺(2008紅葉)-06

本堂へと続く石段と、その脇の石垣はかなり見事です。現在ではひっそりとしたお寺になっていますが、往年はかなりの規模の大寺院で、江戸時代初期には「約1,000石」を与えられていたとか

正暦寺(2008紅葉)-07
正暦寺の本堂下にある、僧侶の供養塔・墓石群。とても落ち着く眺めですね

正暦寺(2008紅葉)-08
千両万両が大量に実をつけています。これだけの数がある光景も、なかなか見られないかもしれません

正暦寺(2008紅葉)-09
立派な石垣と背後の紅葉たち

正暦寺(2008紅葉)-10
正暦寺の「本堂」。やや広めの敷地にポツリと建ち、とても雰囲気のいいお堂ですね。ご本尊は年3回ご開帳される、台座に腰掛けた珍しい倚像(いぞう)の「薬師如来坐像(重文)」です。この日はお前立ちを拝見しました

正暦寺(2008紅葉)-11
境内にあった説明書き兼注意書き。「ここは信仰道場です」の文字は、いたるところで見かけました


リアルな修行の気配も感じられます

境内を奥へ奥へと歩いていくと、鬱蒼とした森の中を突っ切る「奈良奥山ハイキングコース」へと続きます。その入口部分には、小さな修行用のお堂があり、実際にどなたががこもっているような気配が感じられました。

注意書きを読まなくても、何となく大きな声を出してはいけないような、ピリッと張り詰めたような空気を感じますので、やはりお寺という場所は特殊なんでしょうね。


正暦寺(2008紅葉)-12

境内の奥手にある小さなお堂では「行中につき立入禁止。お静かに願います」の文字が。実際に中で誰かがこもられているような気配を感じました。黄色の紅葉だけ、静かに撮影させていただきました

正暦寺(2008紅葉)-13
鬱蒼とした森の中で、黄色く色づいた木。幹についた小さな葉などの佇まいもいいですね。山深いお寺ならではの魅力でしょう

正暦寺(2008紅葉)-14
お寺の奥は「奈良奥山ハイキングコース」に繋がる細い山道になっていますので、ほんの少し入っただけでこの暗さです!


仏像とお庭の「福寿院客殿」はいい!

そして、正暦寺の最大の見どころとも言える「福寿院客殿(重文)」です!

コチラは1681年の建立で、1977年に大改修を行っているそうです。ここがとてもいい雰囲気の建物で、

●珍しい孔雀(くじゃく)に乗った明王様「孔雀明王像」が素晴しい!高野山など、数箇所でしか見られない珍しい仏様です。孔雀は毒蛇をも食べてしまうことから、毒物・災害から身を守ってくれると信じられたのだとか。凛々しくて見飽きません!

●1977年に造営されたという日本庭園がいいんです。もちろん、それほど広い庭ではありませんが、この日のような日が照って暖かな日に、縁側に座ってボケーッとお庭を眺める幸せを感じました。特に、塀越しにちょうど紅葉が見えるようになっているのもいいですね。プチ京都気分が味わえます。

●京狩野3代目の「狩野永納」作の欄間の絵など、それほど高級美術品っぽくもなく、手を伸ばせば届きそうなくらい身近にあるのがいいですね。私にはそれらの美術品の価値は分かりませんが、親しみを感じられる距離感がいいですね。

正直なところ、正暦寺全体としても、それほど見るところは多くありませんが、この小さな建物に来て、赤い絨毯の上に座りながら、ぜひゆっくりとしてみて欲しいと思います。京都のお寺ほどのスケール感はありませんが、観光客も少なめですし、かなり落ち着けることでしょう。オススメです!

(ただし、お庭はかなり小さめです。過度の期待はせず、気楽に行ってみてください!)


正暦寺(2008紅葉)-15

「福寿院客殿(重文)」前。落ち着きのある数奇屋風作りの建物で、日本庭園が見事。狩野永納の襖絵や、珍しい孔雀(くじゃく)に乗った明王様「孔雀明王像」などが見られます

正暦寺(2008紅葉)-16
「福寿院客殿」のお庭部分。奈良には珍しい本格的な日本庭園ですが、1977年に造営されたものです。こんなところもちょっと京都っぽいですね。それほど混むような場所でもなさそうですので、奈良でお庭でほっこりしたい方にはオススメです

正暦寺(2008紅葉)-17
京狩野3代目の「狩野永納」作の欄間の絵。建物の縁側上にズラリと並ぶ姿は、かなり落ち着きます。身近な感じがいいですね

正暦寺(2008紅葉)-18
奥に見える襖絵も(確か)狩野永納の作。受付では正暦寺オリジナルの日本酒も販売されています。ちなみに、福寿院客殿内は、仏像以外なら写真撮影OKです

正暦寺(2008紅葉)-19
福寿院客殿の奥には不動堂が。規模は小さいですが、しっかりと手入れされていて、とても落ち着けました

正暦寺-ご朱印
正暦寺でいただいたご朱印です



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■正暦寺

HP: http://www.asahi-net.or.jp/~id9s-mti/shouryakuji/
住所: 奈良県奈良市菩提山町157
電話: 0742-62-9569
宗派: 菩提山真言宗大本山
本尊: (重要文化財)
創建: 992年
開基: 兼俊僧正(一条天皇の発願)
拝観料: 境内無料。仏像・福寿院客殿の拝観は@500円
拝観時間: 9:00 - 17:00(1~3月は16:00まで)
駐車場: 90台分(11-12月上旬までは「山内整備費」として駐車料金@500円が必要です)
アクセス: 169号線の「窪之庄南」交差点を東へ折れ、車で10分ほど

※11-12月上旬の紅葉シーズンとそれ以外では、料金などが異なります






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