2008-03-24

秘仏「十一面観音」は必見!『法華寺』@奈良市

法華寺

春の秘仏の特別公開時期がやって来たため、これまでずっと見たい見たいと願ってきた『法華寺』のご本尊「十一面観音立像(国宝)」を見に行ってきました。

また、三寺の共同キャンペーン中でしたので、法華寺・海龍王寺不退寺の「佐保路の三観音」も巡ってきました。どの観音さまもステキでしたが、やはり法華寺の十一面観音さまはスゴイ!


光明皇后の逸話が残るお寺

佐保佐紀路の『法華寺』は、聖武天皇御願の日本総国分寺の「東大寺」に対して、光明皇后御願の日本総国文尼寺として、745年に創建された尼寺です。この土地は権力者「藤原不比等」の邸宅で、娘の光明子(後の光明皇后)がこれを引き継いだため、光明皇后ゆかりの逸話が数多く残されています。

平城京の中心部から程近い位置にあり、奈良時代には壮大な伽藍を持つ大寺院で・・・、平安京への遷都以降は衰退し・・・、1180年の平重衡の戦火によって被害を受け・・・というようなエピソードは、奈良市内の寺院に共通するものですね。

鎌倉時代に入り、重源や叡尊によって復興されたのですが、、、、


その後、明応8年(1499年)と永正3年(1506年)の兵火や慶長元年(1596年)の地震で東塔以外の建物を失い、現在の本堂、鐘楼、南門は慶長6年(1601年)頃、豊臣秀頼と母の淀殿が片桐且元を奉行として復興したものである。なお、兵火や地震の被害をまぬがれていた東塔は宝永4年(1707年)の地震で倒壊した。
Wikipedia「法華寺」より引用


ここで豊臣秀頼と母の淀君の名前が出てくるところが独特ですね。

現在では、それほどの大寺院とまでは言えない規模ですが、佐保佐紀路のお寺の中では最大で、美しい庭園なども備えています。


法華寺-01

佐保佐紀路の『法華寺』。聖武天皇御願の日本総国分寺の「東大寺」に対して、光明皇后御願の日本総国文尼寺として、745年に創建されました。元は時の権力者「藤原不比等」の邸宅でした

法華寺-02
法華寺の「南大門(重文)」。桃山時代の再建で、隣には「法華滅罪之寺」の石碑が。現在ではここからは出入りできないようになっています

法華寺-03
法華寺の『横笛堂』。「平家物語」などで滝口入道との悲恋で知られる「横笛」が、尼となって晩年を過ごしたお堂とされているそうです

法華寺-04
法華寺「鐘楼(重文)」は、桃山時代の再建で、入母屋造の立派なもの。足元を覆う板のことは「袴腰(はかまごし)」というそうです

法華寺-05
池の中に建てられた「護摩堂」は、不動明王坐像が祀られており、護摩法要の舞台となります。室町時代に倒壊していたものが、2004年に600年ぶりに再建されたそうです

法華寺-06
万葉歌碑としだれ桜。背後に見える建物は、宝物を収める「慈光殿」です


簡素ながら力強い本堂

法華寺の「本堂」は、本瓦葺の簡素なもの。1601年頃、当時は廃れかかっていた法華寺でしたが、豊臣秀頼と母の淀殿の寄進によって本堂が再建されました。それほど特徴のある建築物ではありませんが、そんな歴史を思いながら見てみると、また違った印象があります。


法華寺-07

法華寺の「本堂(重文)」。元は講堂だったようで、かなり簡素な作りです。1602年に豊臣秀頼・淀君の命によって、片桐旦元が再建したもの。ご本尊は秘仏の「十一面観音立像(国宝)」です

法華寺-08
本瓦葺(ほんかわらぶき)の本堂は、簡素ですが力強い印象のある建築です

法華寺-09
重要な柱にも、大きな修繕跡が見られます。斗きょうも含めて、華美な印象はありませんが、落ち着いた印象がありますね

法華寺-10
「豊臣秀頼公」「氏女御母寺」の銘が彫ってありました。没落していた法華寺を再興してくれたのですから、しっかり感謝しなくてはいけませんね


秘仏「十一面観音」は必見です!

豊臣秀頼・淀君の命によって復興された「本堂(重文)」の中には、今回のお目当てだった秘仏「十一面観音立像(国宝)」がいらっしゃいます。

像高1mほどの小さな仏さまで、このサイズのものは実際に見てみると「小さっ!」とやや興味が削げてしまうことがあったりするのですが、この仏さまは違いました。間近で見れば見るほど艶かしく、本当に美しくて神々しい仏さまだったのです。


・全体をほぼ一木で造ってあり、当初から金箔や彩色などをせず、木肌をいかした木像。唇に朱色が残り、今見てもとても美しい。また、髪や装身具は金属で作られており、精巧な細工となっている

・長い右手で裾を軽くつまんでいるところや、体を少し傾けて、右足のつま先を少しだけ持ち上げているところなど、とても軽やかな印象がある。今にも優雅に歩き出しそうな雰囲気すら感じられる

・蓮のつぼみと丸めた葉を交互に並べた光背が独特。そのほとんどが1905年の修理の際に補作されたもの。


写真集などで見ると、真正面からのアングルも多いため、ややきつめの顔立ちに見えますが、実際に目の前でやや上に仰ぎ見るようにすると、ものすごく表情も柔らかいのです。光明皇后をモデルとして作られたという逸話が残されていますが、それが事実かどうかは別として、非常に女性的な、穏やかな仏さまですね。

個人的な好みとしては、「木肌」「唇には朱」「ポーズが軽やか」「光背が独特で美しい」など、このような特徴が良かったんだと思います。「見に行ったらガッカリするんじゃないか・・・」と、少しだけ心配していたのですが、そんな心配は全く無用でした。これまで見てきたどの仏さまよりも美しいと思えたかもしれません。

歌人・会津八一が「ふじはらの おほききさきを うつしみに あひみるごとく あかきくちびる」と詠んだ美しさは、その当時のまま残されています。特別公開は、3月末・6月上旬・10月末、毎年この3回行われているそうですので、ぜひタイミングを合わせて行ってみてください。


法華寺-十一面観音立像-01

講談社「週刊 日本の仏像」第32号より。像高100cmのそれほど大きくない仏様ですが、美しさ・軽やかさ、そして神々しさは圧倒的です。個人的にも、本当に大好きな仏様ですね

法華寺-十一面観音立像-02
別ページから。こうして写真で見る十一面観音さまもいいんですが、実物に法華寺の本堂で仏様を見上げるように座ってみると、印象が全く違います。ぜひ春と秋の特別公開の際には会いに行ってみてください!


落ち着いた雰囲気の「名勝庭園」

境内の西側には、宝物庫「慈光殿」と、「名勝庭園(国指定名勝)」があります。ただし、正直なところ、それほど驚くようなお宝があるワケではありませんし、広いお庭ということでもありませんので、過度の期待は禁物です(笑)

ただし、私がここに来たのは2回目なんですが、いずれも冬のことでした。お花の時期には一度も見ていませんので、ひょっとしたら時期さえ選べば見事な姿が見られるのかもしれません。規模は小さいですが、とても落ち着いた雰囲気のお庭ですので、ゆったりするには丁度いいでしょう。

法華寺-11
法華寺境内の西側に建っている「慈光殿」。宝物庫のようなもので、それほど大きな建物ではありません。仏像や絵画などもありますが、一番目立つのは「海龍王寺の五重小塔を復元したもの」。キレイなんですが・・・目的は何だろう?

法華寺-12
法華寺の「名勝庭園(国指定名勝)」。江戸初期の名園で、総面積500坪。中央に池があって、その周りを散策できるのですが、それほど大きな規模ではありません

法華寺-13
名勝庭園を奥側から見た図。花の初夏には杜若(かきつばた)が咲いてとても美しい姿が見られるのだそうです

法華寺-14
名勝庭園の奥にある「客殿」。参拝客は立ち入ることができませんが、なかなか趣のある建物ですね


光明皇后ゆかりの「から風呂」も

そして、こちらも別料金となるのが、このコーナーです。

・光明皇后が難病者を入浴させたという「から風呂」
・茅葺屋根の民家を移築してきた「光月亭」
・お花などが植わった庭園「華楽園」

お花にあまり興味の無い私にとっては、ここはあまり面白味のないところですね。茅葺屋根の光月亭などは、見ていてそれなりに感動はありますが、そう何度も見たいものではありませんし、から風呂も同様です。

お花が好きな方が、お花の盛りの時期に来るのであればいいのかもしれませんが、個人的にはもう2回も見ているので、次回からは遠慮したいと思います(笑)

法華寺-15
法華寺の「から風呂(国指定重要有形民俗文化財」。光明皇后が難病者たちに入浴の恵みを与えるために作られたものとされます。中は蒸し風呂式で、2003年に解体修理が行われました

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法華寺内にある「光月亭(県文化財)」。奈良県月ヶ瀬村にあった18世紀の古民家を、1971年に移築したもの。かなり立派な建物です

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最近、こんな萱葺き屋根の古民家を何軒か見てきましたが、これほど間近に見られるのは珍しいかもしれません。大人の身長ほどしかありませんので、藁葺き屋根に触れることさえできます!

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法華寺の「華楽園」は色んな草木が植わっているお庭です。季節ごとに色んな花が咲くそうですので、お花好きな方にはオススメです

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華楽園のレンギョウ

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華楽園に咲いていた花

法華寺-ご朱印
法華寺のご朱印。「本尊十一面観音」。しなやかな印象のある、ステキな字ですね


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■画像の一覧は【Flickr】でどうぞ。



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法華寺

住所: 奈良県奈良市法華寺町882
電話: 0742-33-2261
宗派: 光明宗
本尊: 十一面観音(国宝)
創建: 745年
開基: 光明皇后
拝観料: 通常-500円、(特別拝観期間-700円、全施設-1,000円)
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場アリ
アクセス: JR大和路線奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通バス(西大寺駅・航空自衛隊行き)「法華寺」下車すぐ。または、近鉄大和西大寺駅から奈良交通バス(JR奈良駅・白土町行き)「法華寺」下車すぐ

※法華寺・海龍王寺・不退寺などの情報は、『週刊 原寸大 日本の仏像(32)「法華寺 十一面観音」』がオススメです。「580円」とお安いですので、売り切れてしまう前にお近くの書店で探してみてください






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