2013-12-08

今年面白かった本10冊(+α)by【奈良住】読書リスト

今年面白かった本10冊(+α)by【奈良住】読書リスト

普段から「【奈良住】読書リスト」というページで書評を書いている私ですが、今年は約250冊の本を読みました。年の瀬らしく、その中から面白かった本をまとめてご紹介したいと思います。読む本のジャンルは雑多ですが、今回は奈良・歴史・仏像など(最後に漫画も)を中心にリストアップしました。ご参考までにどうぞ!


今年読んで面白かった奈良住系の本10冊

年の瀬になると「今年読んで面白かった本ベストテン」的な記事が目につくようになりますので、便乗して公開してみます。

私が読んだ本は、「【奈良住】読書リスト」というページで書評を公開しています。数えてみると、今年は12月中旬の時点で「約250冊」を読んだようです(※コミックスなど複数の巻になるものは、基本的に1と数えています)。一応は採点もしていますので、特に面白かったものは「★★★★★」のページにまとめてあります。

ジャンルはいろいろで、奈良・歴史・仏像・考古・美術・建築・漫画など、興味があるものは何でも読みますが、今回はその中でも【奈良に住んでみました】のテイストに近いものの中から面白かった10冊の本を紹介してみたいと思います。ジャンルも難易度もいろいろですので、ご参考までにどうぞ。


覚えておきたい順 万葉集の名歌 (中経の文庫)

万葉集の本は数多く出版されていますが、それを「覚えておきたい順」という、ちょっと斬新な切り口で収録したもの。明日香村の万葉文化館さんで見つけて即購入しましたが、実は2007年に発売されていたようです。

本書の前書きなどにも書かれていますが、有名な歌であっても、意外とスラッと出てこないことは多々ありますので、ある意味では参考書的な触れ方があってもいいですね。覚えておくべき順に前半から並んでいるため、先頭あたりから適当にページをめくっていくと、いつの間にか記憶に残っていくでしょう。

本書の構成は、「ぜひとも覚えておきたい万葉の歌」が20首、「できれば~」が30首、「なるべく~」が50首の計100首が、訳と作者の経歴、簡単な解説とともに掲載されています(巻末にはちょっとしたクイズページも)。覚えておきたい順ですから、歌の時代は前後しますので、初心者の方が体系だって覚えるには不向きですが、名歌と呼ばれるものばかりが登場しますから、最後まで読みやすいでしょう。

●【書評】覚えておきたい順 万葉集の名歌 (中経の文庫)


円空 微笑みの謎 (ビジュアル選書)

全国の霊山を巡り、12万体もの仏像を彫ったと伝わる江戸時代の僧であり、仏師である「円空」。その200体以上もの作品を美しい写真入りで紹介した一冊で、著者は円空学会理事長の長谷川公茂さん。愛情あふれる語り口ですね。哲学者の梅原猛さんの寄稿もあり、円空の入門書には最適な一冊です。

2013年早々に、東京国立博物館の140周年を記念した特別展「
飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」(2013年1月12日~4月7日)が開催に合わせて出版されましたが、永久保存版にしたい内容でした。

●【書評】円空 微笑みの謎 (ビジュアル選書)


仏像 日本仏像史講義 (別冊太陽スペシャル 創刊40周年記念号)

別冊太陽の創刊40周年記念号として発売になった、最初から最後まで徹底的に「仏像」を語った一冊。日本の仏像が渡来したところから、奈良時代・平安時代・鎌倉時代、そして江戸時代まで簡単に触れられ、仏像の歴史と流れを通観できるようになっています。

発売は2013年2月。仏像好きな方たちの間では大きな話題になっていましたが、約500点を図版を掲載し、306ページという分厚さのため、お値段も4千円近くしてしまい、購入を見送っていました。しかし、いざ読んでみるとすごい本ですね!もっと早く読めば良かったと、後悔したほどでした。

●【書評】仏像 日本仏像史講義 (別冊太陽スペシャル 創刊40周年記念号)


ほとけを造った人びと: 止利仏師から運慶・快慶まで

飛鳥時代から鎌倉時代まで、仏像を作る「仏師」たちの系譜を、資料から丹念に解説した良書。奈良・飛鳥寺の飛鳥大仏などを作った止利仏師から、奈良時代の文献に見える国中連公麻呂、和様を完成させた大仏師・定朝、その流れを受け継ぐ院派・円派の仏師たち、鎌倉時代に市場を席巻した運慶・快慶などの慶派仏師まで、それぞれの時代背景なども合わせて紹介しています。

仏像 日本仏像史講義 (別冊太陽スペシャル 創刊40周年記念号)』は、仏像の歴史を通観するには最適の内容で、そこでも仏師集団について系統だって解説されていましたが、本書はさらに丁寧に、さらに踏み込んでいて読み応えがありました。

●【書評】ほとけを造った人びと: 止利仏師から運慶・快慶まで


ならものこころの旅 :暮らしの中の奈良ブランド

工業デザイナー・北井勲さんが、奈良新聞に連載中のコラム「暮らしの中の奈良ブランド」をまとめたもの。初回から最新の74回までを再構成して、フルカラーの美しい写真とともに、奈良の工芸品や工業品を伝えています。

一般書店で流通していないため、やや手に入りづらいですが、素晴らしい内容でした。

奈良の工芸品や特産品というと、吉野杉を用いた木工細工、広陵町の靴下(国内シェアの4割!)奈良墨、大和郡山の金魚、吉野くずなどが思い浮かびます。しかし、奈良に根付いた産業は、決してそれだけではありません。本書では住まいや食などのカテゴリーごとに、奈良で生まれている素敵なものたちを紹介しています。

・「装」-斑鳩のオーガニックバッグ、広陵のショートパイルソックス、川西の貝ボタンなど
・「伝」-御所のもこもこアート、三条町の奈良墨、大塔惣谷の杓坪子など
・「佇」-天川のエッセンシャルオイル、桜井のべっ甲、角振町の奈良団扇など
・「景」-天理の飛鳥瓦、生駒のスピーカーなど
・「養」-吉野山の吉野本葛きり、矢田原町の大和肉鶏、生駒のレインボーラムネなど
・「暮」-大和高田の湯たんぽ、高山の編み針、香芝二上山のサンドペーパーなど

●【書評】ならものこころの旅 :暮らしの中の奈良ブランド


天平グレート・ジャーニー─遣唐使・平群広成の数奇な冒険

万葉学者の上野誠先生が手がけた長編小説。数奇な運命をたどった遣唐使・平群広成を主人公に、天平時代の大航海がいきいきと描かれています。

400ページ近い長編ですが、ストーリーがテンポ良く展開するため、途中で全くだれません。この時代が好きな方は必読ですし、興味の無かった方でも楽しく読めるアドベンチャー小説に仕上がっていて、まさに「学芸エンターテインメント」ですね!

実際のところ、平群広成について史書に記されているのはほんのわずかな記述にしか過ぎません。そんなわずかな史実をもとに、万葉学者さんらしい考察で当時の状況をいきいきと描いているのですから、さすがです。

●【書評】天平グレート・ジャーニー─遣唐使・平群広成の数奇な冒険


平城京に暮らす―天平びとの泣き笑い

「木簡(もっかん)」に書かれた内容から、寧楽の都・平城京に暮らした人々の生活ぶりを浮かび上がらせる一冊。同じように木簡を扱った本はいくつか見当たりますが、どれもどことなく難しくて退屈そうなイメージでしたが、本書はとても読みやすくて面白かったです。図書館で借りてきましたが、付箋紙を大量に貼ったほど「へぇ~」の連続でしたから、すぐに買い直すと思います!

平城京全体で出土している木簡は、現在で約17万点。平城宮内で発掘調査が終了しているのは約3割で、さらに広い平城京内も未調査のエリアも多いため、まだまだ大量の木簡が眠っているそうです。出土した木簡に書かれた内容は、ほとんどが事務的な書類に過ぎませんが、それを書いた下級官人たちの生活ぶりや人柄が透けて見えるようなものもあり、タイムスリップしたような面白さがあります。

●【書評】平城京に暮らす―天平びとの泣き笑い (歴史文化ライブラリー)


よみがえる天平文様

東大寺「正倉院」に伝わる美しい宝物たちの文様をトレースし、欠損部分や色合いを想像し、現代に蘇らせた一冊。正倉院文様を取り入れた、古都っぽいデザインを考えたりする際には必携ですね。デザインアイディアの宝庫です!

筆者さんは、奈良女子大学の特任教授の方。今から千年以上も昔に造られた正倉院の宝物を研究し、図版をもとにイラスト化の作業をなさっています。古いものだけに、もとの形や色彩は失われていることも多いのですが、それをCGで鮮やかに蘇らせました。本物の正倉院宝物は登場しませんが、現物を上回るような美しさで、伝統的な文様が再現されています。

●【書評】よみがえる天平文様


実録 天誅組の変

1863年、尊王攘夷派の志士たちが五條市の代官所を襲撃し、約40日後に壊滅するまでの動乱を「天誅組の変」(Wikipedia)と言います。無謀な暴挙だったとも、明治維新の先駆けとなった義挙とも言われるこの騒乱から、2013年で150周年となり、舞台となった奈良県南部を中心に記念イベントが行われてました。

そレを記念して、天誅組に関する研究資料を、比較的読みやすい形でまとめたのが本書です。私は幕末の歴史に関してはそれほど知識はありませんし、以前に司馬遼太郎さんの『街道をゆく12 十津川街道』で天誅組について触れられていたのを読んだ程度でしたが、この本はとても理解しやすいですし、夢中になって読み進めました!

●【書評】実録 天誅組の変


日本の怨霊

怨霊化して祟りが恐れられた井上内親王・早良親王(と藤原広嗣が少々)にスポットを当てた一冊。歴史的な経緯と、どのような亡くなり方をしたのか、亡くなった土地や墓所を訪ねて歩く、とても分かりやすい一冊です。2007年の著書ですが情報は古びておらず、この方たちに興味がある者にとっては必読の内容でしょう。

世の中には、恨みを抱えて亡くなったため、死後に怨霊化したとして祀られた人は何名もいます。菅原道真・平将門・崇徳院などが有名ですが、平安時代には橘逸勢・伊予親王母子・藤原吉子などがいましたし、さらに遡った奈良時代には、後の桓武天皇によって除かれた、井上内親王と他戸親王の母子、早良親王が有名です。奈良時代は政争に明け暮れていましたから、無実の罪で命を奪われる皇族も珍しくなかったんですね。

●【書評】日本の怨霊


その他の面白かった本たち

未盗掘古墳と天皇陵古墳
未盗掘古墳や天皇陵古墳を取り巻く問題から、考古学のリアルな現状が垣間見れる良書です!

神社の本殿: 建築にみる神の空間 (歴史文化ライブラリー)
神社の本殿を建築的な観点から分類・解説した一冊。やや専門的ですが充実した良書です!

日本建築遺産12選―語りなおし日本建築史 (とんぼの本)
垂直と水平方向。12の建築物から日本の建築を読み解いた一冊。古建築好きには堪りません!

変り兜: 戦国のCOOL DESIGN (とんぼの本)
ウサギ・茄子・ドクロなど「変り兜」を紹介した一冊。衝撃的!日本文化のB面ですね!

日本の偽書 (文春新書)
近代まで存在した、歴史を改竄・捏造した「偽書」たちの内容に迫る興味深い一冊です

茅ヶ崎海岸の野良うさぎ ゴマ
海岸に住んでいた野良うさぎと写真家の交流を切り取ったフォトストーリー。泣けます。

幸せがずっと続く12の行動習慣
「ポジティブ心理学」についての一冊。とても具体的で、幸せを実感したい方は必読!

伝え方が9割
人の心に「刺さる言葉」の作り方。具体的なメソッドが紹介されていて実践的。必読です!

走ることについて語るときに僕の語ること
村上春樹さんが「走ること」について語った一冊。自営業系ランナーのバイブルです!


今年読んで面白かった「漫画」作品たち

さらに、漫画の中からも面白かったものを挙げておきます
読んだ漫画の一覧)。

私は漫画雑誌などは一切読まず、漫画喫茶やレンタルコミックでまとめ読みするため、最近の作品と古い作品を同列に扱っています。周りの意見なども参考にして、面白いと評判のものを中心に読んでいますので、それほどハズレもありませんが、やはり合う合わないはありますね。

今年一気読みしたものの中には、横山光輝さんの「三国志」、手塚治虫さんの「火の鳥」などの歴史的作品や、山田芳裕さんの「へうげもの」、よしながふみさんの「大奥」なども含まれていますが、その辺りは殿堂入り扱いにしておきました。

昨年から読んでいるものを含めたりすると、羽海野チカさんの「3月のライオン」、吉田秋生さんの「海街diary」などなど、キリがありませんので、またいつかまとめたいと思います!


蟲師 (全10巻)

講談社漫画賞を受賞し、後にアニメ化・映画化もされた人気コミックス。全10巻です。タイトルからして「蟲(むし)」なんて言葉が入るため、グロい昆虫がたくさん出てきて大乱闘を繰り広げる作品なのかと思っていましたが、まったく違います。大人が読むべき不思議なファンタジーなんですね。

本作の「蟲」とは、いわゆる精霊・妖怪などにあたるもの。主人公のギンコは、普通の人には見えない蟲が見えるため、それを鎮めたり採集したりする旅の生活を送っています。一話完結の短編で構成され、色んな土地の色んな人々、そして蟲についてのエピソードが登場します。

その内容は、例えば神かくしであったり、狐憑きであったり、失語症に見える症状だったりさまざまですが、それらを引き起こしているのが、眼に見えないながらも至るところに生息している蟲たちなんですね。私はこの作品から「日本霊異記」に近いものを感じました。猛威を振るう自然、そこにおわす聖なるものが、人間の生活に身近にあった時代の雰囲気があります。

●【書評】蟲師 (1) アフタヌーンKC


昭和元禄落語心中(4巻まで)

「このマンガがすごい」オンナ編に2年連続でランクインしている、落語をモチーフにした話題作(2012年は2位、2013年は14位)。漫画喫茶で3巻まで読了しました(連載は続いています)。私はそれほど落語には詳しいわけではありませんが、これは面白かった!落語界の不思議さ、噺家さんたちの面白さが存分に感じられます。

本作では人懐っこい噺家志望の与太郎を主人公としながらも、弟子入りする大師匠・八雲と、その親友でありライバルでもあった助六の娘との不思議な関係が描かれます。この師匠同士たちの物語は2巻以降に登場しますが、これがいいんですよね。戦前から戦中にかけて、日本が苦しい時代にも芸事に励んだ者たちの人間模様がいいです。みんなが粋で、誰もが真剣なんですね。

●【書評】昭和元禄落語心中(1)


天地明察(4巻まで)

2012年に映画化されて話題になった作品の漫画化。発売中の4巻まで読了しました。私は原作小説も映画も観ていませんので、そちらと比較はできませんが、これは面白いですね!

主人公は、日本独自の暦を作った江戸時代初期の人物「渋川春海」。幕府お雇いの碁打ちですが、趣味の算術に没頭し、後に全国をめぐる測量団の一員へと抜擢されます。この当時の事情は全く知りませんでしたが、数学の問題を解いていくことに熱中した人々がいること、それを絵馬に描いて出題するような神社があったことなど、とても興味深いですね。数学的なことは苦手でも、十分に楽しめるストーリーですが、登場する設問に挑んでみたくなります(笑)

●【書評】天地明察(1) (アフタヌーンKC)


山賊ダイアリー(3巻まで)

日本国内で猟銃を所有し、野に出て狩猟を行う「猟師」さんの活動を漫画日記にしたもの。こんなテーマの漫画が出版されているのですから、日本の漫画文化の成熟度には驚くばかりです!

主人公は「漫画家兼猟師」という方。野山で鳥獣を獲っていた祖父の影響で、正式な免許をとって猟をはじめた、キャリアの浅い駆け出しさんです。現在では漁師さんの数も減っているでしょうし、なかなか体験談など読めるものではありません。初心者ならではの難しさや楽しさが伝わってきて、とても面白かったです!

なお、個人的にはずっと関心しながら読みましたが、ウサギも撃たれますし、カモだって毛をむしられて食べられます。生々しい描写は控えめですが、人によってはグロテスクと感じられる方もいらっしゃると思いますので、血だ肉だのお話が苦手な方は読まない方が無難でしょう。

●【書評】山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)


乙嫁語り(5巻まで)

19世紀の中央アジアを舞台に、12歳の少年のもとに嫁いだ20歳の少女のお話です。…と聞くと、ピンと来ないものすごい遠い世界のストーリーのように思えますが、それを読ませるだけの画力とストーリー展開の妙味があります。以前から話題になっていた漫画ですが、ようやく4巻まで読了しました。

この時代の遊牧民族の暮らしぶりに関して、私は全く知識はありませんし、ほぼ興味もありませんでした。しかし、この作品が描き出す世界(フィクションです)は、キラキラと眩しいくらい生の痛みと喜びがあふれています。架空の人物が架空の世界で動いているんですが、それがここまでいきいきと感じられるのですから、すごいことですね。

乙嫁語り(1)


宗像教授異考録(全15巻)

大学教授・宗像伝奇(むなかたただくす)が、民俗学と古代史をテーマに、日本各地に伝わる謎を解いていく、星野之宣さんによる読み応えのあるコミックスです。

龍伝説・サルタヒコ・古代の製鉄・七夕伝説・道成寺・虫めづる姫君・源氏物語・竹取物語と浦島伝説など、日本各地の伝承をベースとして、それに新たな味付けを加えて興味深い読み物としています。

もちろん、現在の学説に従っているものばかりではないでしょうし、何回も地面が陥没して命を落としかけたりと、漫画的な演出もあったりします。まさしくインディー・ジョーンズ的なものに思えますが、もうちょっとバタ臭くて「現代の大人の『学研ムー』」のようなイメージでしょうか?そんな雰囲気も含めて楽しめます(笑)

●【書評】宗像教授異考録 第1集 (ビッグコミックススペシャル)






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