変り兜: 戦国のCOOL DESIGN (とんぼの本)
ウサギ・茄子・ドクロなど「変り兜」を紹介した一冊。衝撃的!日本文化のB面ですね!
戦国時代に武将たちが身につけた風変わりな「変り兜」を紹介した一冊。戦乱で命がけの日々を送る戦国武将は、さぞ潔い格好に身を調え戦地へ赴いたのかと思いきや、ウサギやドクロ、頭上高く伸びる孔雀のような羽根など、実用性を無視したかのようなとんでもデザインの兜をかぶっていたのです。
粋だとかいなせだとか、ワビサビなどとは正反対の衝撃的なデザイン感覚で、今年もっとも笑えた本かもしれません。
説明文:「戦場のオシャレは命懸け。兜は見た目が9割? 戦国の武将たちが競いあうように作らせた「変り兜」60点を一挙公開。虫愛づる殿やカニ将軍、ウサミミ男子にSFマジンガー系など、キッチュでバサラな造形はなぜ生れたのか。そもそも「戦国時代」とは何か。合戦のリアルな真実とは? ワビ、サビ、イキだけではない、「B面」の日本美が明らかに。」
戦場でかぶる兜とはいえ、武将クラスともなると実際に戦闘することは稀でしょうから、「一世一代の晴れ舞台」とばかりに、様々な形に飾り立てていたようです。このデザインがとにかく強烈!私が配下の武士だったら「親方さま、その兜はいかがなものかと……」と恐る恐るご注進したくなるようなものも多いんですね(笑)
本書ではそんな兜たちを、フルコーディネート・昆虫・鳥羽・植毛・ウサミミ・植物・魚介・曲線・タワー・双角・かぶりもの・神仏・マジンガー・番外・南蛮・陣羽織といった項目に分けて紹介しています。大きめの画像に、短めで的確な解説が添えられていて、最初から最後まで衝撃の連続でした!
最初はおそらくちょっとした飾りだったはずですが、何かをきっかけに巨大化・先鋭化していくのでしょう。本書でも指摘がありましたが、まるで特攻服・シャコタン・デコトラ・改造学生服といった、極端すぎるヤンキー文化にも近いものが感じられます。
引き算の美、削ぎ落とす美は、確かに日本の美意識の一方を占める重要な感覚だが、もう一方には、日本美術史の泰斗、辻惟雄さんが指摘するように、晴れがましく祝祭的で、野暮なほど饒舌に装飾を重ねる動的な「かざり」の美がある。その生命力あふれる豊かさ、過剰さ(そこが逆説としての「クール」なのだ)があればこそ、反転して削ぎ落としていくこともできる。「かざる」と「はぶく」は本来、日本の美にとって、車の両輪のように互いに欠くべからざるものなのだろう。
前書きより(P6~7)
余分なものを削ぎ落とし、やり過ぎなくらいにシンプルを目指すのが日本文化の特色かと思っていたのですが、その一方では逆ベクトルのこんな文化もあったんですね。これから命を落とすかもしれないのに、笑えるほど過剰な美をまとっているという感覚は、私にも少し理解できたりしますから、日本人の普遍的な精神なのかもしれません。
とにかく観ていて単純に楽しいですし、驚くことだらけですから、興味がある方はぜひ。
また、大阪歴史博物館で「特別展 戦国アバンギャルドとその昇華 変わり兜×刀装具」(2013年11月2日~12月8日まで)という展示も開催中ですから、こちらもぜひぜひ!