ミズノ先生の仏像のみかた
顔のパーツなど細部にも注目し、脱・仏像初心者に最適!良書です!
仏像研究の第一人者である水野敬三郎先生のご著書。仏像の素晴らしさにはまった編集者さんとの会話形式で、いろいろな「仏像のみかた」を教えてくれる内容です。
単なる初心者向けの浅いものではなく、仏像の顔のパーツや作られ方など、内容はかなりディープ!私もそれなりに仏像本は読んできましたが、知らなかったことだらけでした。
半世紀以上前から第一線で仏像を研究してきた著者が、仏像のみかたや考え方を対話形式でやさしく解説。目、耳、表情、体型、衣、彩色……など、仏像をみるときのポイントや、時代ごとの特徴をイラストとともにわかりやすく説明しています。銘文や納入品、技法、仏師などについても詳しく紹介。さまざまな側面から仏像について語っています。これまでの仏像本とは一線を画す内容で、初心者にはもちろん、仏像に詳しい方にも楽しんでいただける一冊です。
「内容紹介」より
●序章 仏像って、どうみたらいいの?
・日本仏像史の時代区分
●第一章 まずは仏像の顔からみる
・顔の形と表情 ・目のかたちの変遷 ・耳のかたち ・口と頭髪
●第二章 少し離れて仏像の全体をみる
・体型と動き ・着衣
●第三章 もっと離れて仏像のまわりもみる
・台座 ・光背 ・天蓋 ・空間
●第四章 仏像がどうやってつくられたかを知る
・銅像 ・塑像 ・乾漆像 ・木彫 ・仏像の表面
●第五章 仏像のなかをのぞいてみる
・仏像の中に書かれた文字 ・仏像の中に納めたもの
●第六章 仏像をつくった人たちについて知る
・仏師
私自身、奈良県内を中心にたくさんの仏像にお会いしてきて、「この仏様はここが美しい」「造形が力強い」など、それなりにわかったつもりでいました。しかし、それはあくまでも素人の感想に過ぎず、体系化されたものではありません。本書は、より深く仏像を観察するための入口となってくれそうな内容でした。
第一章では、仏像のお顔について語られていますが、彫りの深いガンダーラの仏像が、東へ伝わるにつれて平べったいモンゴロイドの顔になっていくことが説明されています。雰囲気では理解していることですが、これは鼻の根本や鼻筋、目や頬の出っ張りなどのバランスによるものですが、その変遷が時代別に分類されて解説されていたりします。
目の形ひとつをとってもパターンはさまざまで、日本では一重まぶたのものがほとんどですが、法輪寺・薬師如来像は完全に二重で蒙古襞(上まぶたが目頭を覆う部分にある皮膚のひだ)があるとか。また、中宮寺・如意輪観音像はまぶたの線を彫り出しておらず、おそらく彩色で描いていたと考えられるが痕跡は残っていないそうです。
また、水野先生が発見されたという、耳による作者の判別法なども、とても興味深いものでした。耳の作り方は仏師それぞれの個性が出やすいのだとか。簡単な図入りで解説されていますが、実際にお寺で見比べてみたいですね。
また、仏像の体型の変遷の説明で、「実(じつ)の体型」と「虚(きょ)の体型」を用いて分類しているのも面白かったです。前者は、胸が厚くて前に張り出しお腹のほうが引っ込んでおり、後者は、胸が薄くて後ろに引けてお腹のほうが前に出ているもの。
日本の仏像は、法隆寺・救世観音像のように、当初は虚の体型が主流でしたが、唐の影響から7世紀後半の當麻寺の弥勒菩薩坐像のような実の体型へと移り、平安時代の定朝の時代くらいから貴族的な優しい姿が求められてきたため、また虚の体型へと戻る、というような流れがあるそうです。
というような、仏像の細かな特徴が丁寧に説明されているので、目から鱗が落ちまくりでした。また、奈良の仏さまを例に挙げて解説されることも多く、これも嬉しいポイントでした。
あらためて読み直したり、内容をまとめたりして、この知識を身につけたいと思います!