いじめられたお姫さま 中将姫物語
當麻曼荼羅を織り上げた中将姫の物語を分かりやすく。大人も子どもも楽しめます。
ロクリン社 (2018-05-09)
売り上げランキング: 709,084
古くから親しまれてきた「中将姫」の物語を、お子さんにも読みやすくまとめた一冊。絵巻や能、浄瑠璃などで演じられるたびに付け加えられてきたシーンも盛り込まれており、知っているようで知らなかった中将姫物語の世界が広がります。
「内容紹介」より
物語の舞台は、奈良時代の大和国。右大臣・藤原豊成を父に持つ中将姫は、継母に執拗にいじめられて毒まで盛られるなど、「白雪姫」のお話と似た展開をたどります。しかし、中将姫が當麻寺で出家し、蓮糸を使って一夜で「當麻曼荼羅」を織り上げ、若くして極楽浄土へ召される、という結末となります。
これ以降、世阿弥作の能・謡曲『當麻』『雲雀山』、近松門左衛門作の浄瑠璃『當麻中将姫』など、いくつかのシーンを付け加えられながらずっと親しまれてきました。
本書では、奈良在住の作家・寮美千子さんが文章を、下北山村在住のイラストレーター・上村恭子さんが作画を担当し、美しい世界を紡ぎあげています。完成した「當麻曼荼羅」のイラストなど本当に見事で、まじまじと見つめてしまったほどです(画像は掲載しません。ぜひ手にとって実物をご覧ください)。
なお、中将姫の物語に、これまでたくさんの人々の手で付け加えられてきたエピソードから、印象的な場面を再構成されているため、これまで知らなかった展開があったり、大人でも十分に楽しめました。
とはいえ、中将姫が実在したかどうかは不明です。一番古い記録は、鎌倉時代初めの『建久御巡礼記』で「横佩大納言(=藤原豊成)の娘」がて一夜で曼荼羅を織りあげ、若くして極楽往生をとげたことが書かれたのが最初だとか。
最後の解説文までしっかり読んでいくと、中将姫の概要が理解できます。中将姫の来迎のシーンが演じられる、當麻寺(葛城市)「聖衆来迎練供養会式」の前後などに、あらためて読み返したい内容でした。興味のある方はぜひ!