ドライブイン探訪
全国のドライブインを訪ね歩いて丹念に取材したルポルタージュ。内容が濃い!
昭和のモータリゼーションが急速に進んだ当時、日本全国に登場した「ドライブイン」。交通事情の変化などによって、今や絶滅に瀕した存在だといえます。そんなドライブインを守り続けている人にスポットを当て、当時の様子や家族の事情まで掘り下げたルポルタージュです。
筆者さんが発行していたリトルプレス『月刊ドライブイン』の内容をまとめたもので、写真は少なめ(ちょっと残念)、テキストが多め。かなり読み応えのある内容です。私のような、田舎町に生まれ育ちドライブインへのノスタルジーがある者にとっては、とても興味深かったです。
道路沿いにひっそりと佇むドライブイン。クルマ社会、外食産業の激変の荒波を受けながら、ドライバーたちに食事を提供し続けた人々の人生と思いに迫る傑作ルポ。
「内容紹介」より
本書で紹介されるドライブインは、全国の22ヶ所です。基本的には、地方で幹線道路が整備される際に、隣接した土地で「ドライブインってのがあるらしいからやってみるか」というノリで始めたところ、当時は他のお店も少なかったこともあり大繁盛。観光ブームに乗って大型バスまで乗り付けるようになり、寝る間もないほどの忙しさだった……というような時代があったことが語られます。
私は北陸の田舎育ちのため、国道8号線沿いにはたくさんのドライブインがあり、そこでラーメンを食べたり、時には卓上ガスコンロ(ホースでガス栓とつながったもの)で焼き肉を食べたりした記憶があります。変なゲーム機やジュークボックスなんかもありましたね。しかし、高速道路が開通し車の流れが変わってしまったこともあり、今ではほぼ姿を消してしまいました。
本書では、ドライブインを経営している人たちから丹念に話を伺うことで、そんな時代を浮き彫りにしています。全国のドライブインまで足を運び、取材にこぎつけるまで最低でも3回は通うというのですから、丁寧な仕事をなさってます。
とはいえ、決してマニアさんのような熱量の高さは感じられません。冷静にドライブインというものを見つめ、現在と過去を切り取っています。
ちなみに、奈良県からは、山添村にある「山添ドライブイン」さんが紹介されています。タイトルは「千日道路の今」。国道25号線(名阪国道)が自動車専用道路として、わずか千日という短期間で開通したことなどを踏まえ、この店を守るご夫婦の姿を映し出しています。奈良の一面を教えてくれた素敵な内容でした。興味のある方はぜひ!