2019-05-30

ドライブイン探訪

全国のドライブインを訪ね歩いて丹念に取材したルポルタージュ。内容が濃い!

ドライブイン探訪 (単行本)
橋本 倫史
筑摩書房
売り上げランキング: 5,816

昭和のモータリゼーションが急速に進んだ当時、日本全国に登場した「ドライブイン」。交通事情の変化などによって、今や絶滅に瀕した存在だといえます。そんなドライブインを守り続けている人にスポットを当て、当時の様子や家族の事情まで掘り下げたルポルタージュです。

筆者さんが発行していたリトルプレス『月刊ドライブイン』の内容をまとめたもので、写真は少なめ(ちょっと残念)、テキストが多め。かなり読み応えのある内容です。私のような、田舎町に生まれ育ちドライブインへのノスタルジーがある者にとっては、とても興味深かったです。



道路沿いにひっそりと佇むドライブイン。クルマ社会、外食産業の激変の荒波を受けながら、ドライバーたちに食事を提供し続けた人々の人生と思いに迫る傑作ルポ。

「内容紹介」より


本書で紹介されるドライブインは、全国の22ヶ所です。基本的には、地方で幹線道路が整備される際に、隣接した土地で「ドライブインってのがあるらしいからやってみるか」というノリで始めたところ、当時は他のお店も少なかったこともあり大繁盛。観光ブームに乗って大型バスまで乗り付けるようになり、寝る間もないほどの忙しさだった……というような時代があったことが語られます。

私は北陸の田舎育ちのため、国道8号線沿いにはたくさんのドライブインがあり、そこでラーメンを食べたり、時には卓上ガスコンロ(ホースでガス栓とつながったもの)で焼き肉を食べたりした記憶があります。変なゲーム機やジュークボックスなんかもありましたね。しかし、高速道路が開通し車の流れが変わってしまったこともあり、今ではほぼ姿を消してしまいました。

本書では、ドライブインを経営している人たちから丹念に話を伺うことで、そんな時代を浮き彫りにしています。全国のドライブインまで足を運び、取材にこぎつけるまで最低でも3回は通うというのですから、丁寧な仕事をなさってます。

とはいえ、決してマニアさんのような熱量の高さは感じられません。冷静にドライブインというものを見つめ、現在と過去を切り取っています。

ちなみに、奈良県からは、山添村にある「山添ドライブイン」さんが紹介されています。タイトルは「千日道路の今」。国道25号線(名阪国道)が自動車専用道路として、わずか千日という短期間で開通したことなどを踏まえ、この店を守るご夫婦の姿を映し出しています。奈良の一面を教えてくれた素敵な内容でした。興味のある方はぜひ!


【ドライブイン探訪】の関連記事

  • 『銭湯は、小さな美術館』~南フランス出身の銭湯ジャーナリストさんが、日本の銭湯文化を親しみやすく解説!~
  • 『旅先銭湯』~テーマは「わざわざ行きたい風呂屋のあるまち」。旅先で訪れたい銭湯多数!~
  • 『ドライブイン探訪』~全国のドライブインを訪ね歩いて丹念に取材したルポルタージュ。内容が濃い!~
  • 『遊廓に泊まる (とんぼの本) 』~全国の「泊まれる元遊郭建築」を紹介した一冊。ならまち「静観荘」さんも掲載に~
  • 『喫茶店の椅子とテーブル ~村田商會がつないだこと~』~閉店する喫茶店の椅子やテーブルを販売するユニークな企業のコレクションなど~
  • 『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』~キャバレーやダンスホールなどの写真集。消えゆく昭和の遺産、儚く美しいです~
  • 『団地の給水塔大図鑑』~全国の400もの給水塔を集めた1冊。県営橿原団地の「くぐれる給水塔」も注目!~
  • 『日本懐かし即席めん大全 (タツミムック)』~中華飯店、楊夫人、お湯かけて、クイックワンなど、懐かしブランドが続々!~
  • 『銭湯:「浮世の垢」も落とす庶民の社交場 (シリーズ・ニッポン再発見)』~銭湯の歴史、現在、これから進む道。ややお固めですが興味深い内容です~
  • 『昭和のレトロパッケージ』~昭和の「パッケージデザイン」を俯瞰。いま見ても古びない美しさです~
  • 『日本懐かしボードゲーム大全 (タツミムック)』~億万長者ゲームやおばけ屋敷ゲーム!昭和なゲームを網羅した一冊。懐かしい!~
  • 『レトロ銭湯へようこそ 関西版』~関西の47の名銭湯を集めた一冊。雰囲気バツグン!今すぐ行きたくなります!~


  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ