偽書「東日流外三郡誌」事件 (新人物文庫)
戦後最大の「偽書」事件を追ったルポルタージュ。推理小説より面白い!
新人物往来社
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戦後最大といわれる「偽書」事件を、取材にたずさわった地元新聞記者さんが丹念に追求したルポルタージュ。
それが社会的に表に出てきたのが1975年のこと。こんな科学が発達した現代で偽書などが成立するはずがない……と思いがちですが、町おこしブームの起爆剤として、またオカルトブームに乗って、意外と受け入れられたのだとか。そんな事件の全貌が丁寧に語られていて引き込まれました!
青森県津軽地方の農家の天井裏から“発見”された、膨大な数の古文書。正史に記されない驚愕の「失われた古代・中世史」の出現に、人々は熱狂した。しかし、一件の民事訴訟をきっかけに、文書の真贋をめぐって歴史・考古学界、メディアを巻き込んだ一大論争がはじまる――。
偽書追及の最先鋒として、文書群の「トンデモ」ぶりを検証、偽書事件の構造を徹底した取材で明らかにし、論争に終止符を打ったひとりの地元新聞記者の奮闘記に、後日譚を加えた文庫版。
なまじの推理小説よりはるかに面白い、傑作ルポルタージュ。
「内容紹介」より
その文章とは『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』(Wikipedia)という、なんと368巻からなるという膨大なもの。青森県の市浦村(現在は五所川原市)の民家の屋根裏に隠してあったという触れ込みで世に出ました。
そこに描かれていたのは「古代の津軽地方にはヤマト王権から弾圧された民族の文明が栄えていた」というもの。専門家からは、戦後に使用され始めた言葉が使われているなど、早くから偽書であると指摘されていました。しかし、江戸時代に書かれた原本ではなく、発見者の先祖によって明治時代以降に書き写された写本しか残っていない(という主張だった)ため、議論は複雑化。擁護派も少なくなかったそうです。
本書では、記者さんがこの事件に取り組むきっかけから、取材を進めて次第に外堀を埋めていく過程が丹念に描かれていて、迫力のドキュメントになっています。
私自身は当時こんなことが話題になっていたという記憶にありませんが、雑誌「ムー」のバックナンバーなどを探せばこのネタも扱われているんでしょう。わずか半世紀ほど前の日本にもこんな事件があったのかと、不思議な気分になります。
ちなみに、同じ東北で「旧石器捏造事件」(Wikipedia)が露見したのが、このちょっと後の2000年のこと。こちらも興味深い事件ですので、合わせてぜひ(紹介記事)。