2017-04-03

遣唐使 阿倍仲麻呂の夢 (角川選書)

阿倍仲麻呂の生涯に、万葉学者・上野先生が真っ向から挑んだ力作!

8世紀に日本から唐へわたり、千人にひとりといわれる難関試験「科挙」に及第し、玄宗皇帝に仕え、二度と日本の土を踏むことなく現地で亡くなった「阿倍仲麻呂」。その生涯に、万葉学者・上野誠さんが真っ向から挑んだ一冊です。

難解すぎて理解できなかった部分もありましたが、律令政治が始まったばかりの日本と唐との関係など、現代では感覚的に理解しづらいところもしっかりと解説されていて、見る目が変わりました。



日本を旅立ち、大帝国・唐の重臣閣僚となった男、阿倍仲麻呂。科挙を突破し、希有の昇進を遂げた非凡な才は、新生国家としての日本と、大宝律令の精神を体現する「知」そのものだった。唐を去る仲麻呂に大詩人・王維が捧げた荘厳なる送別詩。そしてただ一首だけ残された仲麻呂の有名な歌「天の原」が秘める謎―。伝説の遣唐使の苦難の生涯をつらぬく夢を、綿密な日唐交流史をふまえて鮮やかに描きだす。画期的評伝!

「内容紹介」より


遣唐使が派遣されていた当時の日本は、大国・唐に朝貢する辺境の国に過ぎませんでした。しかし、仲麻呂をふくむ遣唐使たちは、唐へついてすぐに孔子廟への参拝を願い出たり、経書の師を紹介してもらえるように依頼したり、想像以上に文明化されたところを見せて唐の人たちを驚かせたのだそうです。

また、朝貢している国でありながら、勝手に国号を「日本」に変更していたり、独自の元号を使用していたりした点は、謀反行為とみなされる恐れもある行為だったのだとか。

日本では、701年に大宝律令が施行され、制度的には唐の国と近いものが整備されていました。日本での位階などもそのまま唐で通用したのです。別の国の別の制度だから無関係なようにも思えますが、当時は唐の下にあった日本ですから、大宝律令によって国際社会へ堂々とデビューすることができた、ともいえるのかもしれません。

こうした制度にも助けられ、仲麻呂は無事に唐の大学に入り、そこで人的ネットワークを構築できました。それが出世への大きな足がかりとなったそうです。

唐で出世するものの、日本への望郷の念にかられて帰国しようとしたものの、船が難破してしまい、二度と故郷へは戻れなかった阿倍仲麻呂。ちなみに、有名な歌「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」については、当初は漢詩の形で日本へ伝わっていたと考えられるのだとか。ちょっと意外ですね。

とりとめのない感想文になりますが、本書からはこの当時に海を渡って、異国で立身出世を遂げた人物が、どのようなシステムの中でどう生きたのか、その過酷さとあふれんばかりの生命力が伝わってくるようでした。

第7章「阿倍仲麻呂と王維」では、仲麻呂の帰国の際に王維が送った長大な詩(の序文)についての解説を試みていますが、古典籍の知識がなければ何を意味しているのかすら理解できず、それらを知識として知っていることを前提として書かれています。解説がついていてもさっぱり意味が分からないほどで、ややこしい時代だったことがリアルに感じられるようでした(笑)

阿倍仲麻呂が遣唐使として船出したのは717年のこと。2017年は「阿倍仲麻呂“遣唐”1300年」といったイベントも行われます。奈良の関連の土地を歩いてみたり、こうした本でその生涯に思いを馳せてみたりしてください!


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