2016-10-14

正倉院文書の世界―よみがえる天平の時代 (中公新書)

行政から写経所の衣食住まで。正倉院文書をわかりやすく解説した良書

正倉院に保管されている「正倉院文書」について、わかりやすくその魅力を解説した一冊。


宝物が収められた正倉院に、なぜか大量の古文書が遺されており、まとめて「正倉院文書」と呼ばれています。そこからは当時の法律や行政など、地方行政レベルの重要文章があり、その裏面を再利用してまたこまごました文章が書かれていたりシます(役所内での欠勤届など)。

正倉院展で見たとしても、他のきらびやかな宝物と比べると見方も分かりづらいものですが、本書ではその楽しさが存分に伝わってきます。


説明文:「日本史の研究では、平安時代より奈良時代のほうがよくわかると言う。正倉院文書があるからである。美しく飾られた天皇や皇后の肉筆、戸籍などの公文書もあれば、下級役人の昇進嘆願書や盗まれた物を捜すための休暇願、待遇改善を訴えるメモも残されている。華やかな東大寺大仏開眼の模様、クーデターの内実、さらには庶民の衣食住まで、バラエティ豊かな文書から天平の息吹きを感じてみよう。あわせて流出した文書の謎も解明。」


●序章 正倉院文書の世界
●第一章 聖武天皇と光明皇后
●第ニ章 大仏開眼
●第三章 国家と百姓
●第四章 中央官制と地方行政
●第五章 造寺・造仏と写経─国家プロジェクト
●第六章 国家プロジェクトを支えた人々
●第七章 天平の国際交流
●終章 正倉院文書研究をめぐる環境


天平時代は紙は高級品でしたから、正倉院文書の表には当時のお役人たちが税収や戸籍などを記した正式な文章などが書かれています。それらは所定の期間だけ保管されると(戸籍の場合、6年ごとに作り直され、30年間の保存が義務付けられていたとか)、裏側を再利用されます。

それは払い下げられた反故紙ですから、役所内の事務的な文章に使われたりします。当時の写経所に働く人々の生活がリアルに伝わってくるような内容が残っていたりして、これがめっぽう面白いんですよね。

写経所に勤めていた人々は、現代で言うところの「首都の役場に勤務する臨時職員」というようなイメージなんだとか。サラリーマンの悲哀が伝わってきます。

とはいえ、第一章から第五章までは、やや硬めの内容が続きます。公的な文章から当時の様子を知る、というようなイメージですので、もっと手軽に読みたいかたは、序章→第六章という順番で読むと分かりやすいかもしれません。

発掘される木簡や、なぜか遺された古文書など、古代の人々のリアルな生活が伝わってくるものはわくわくしますね!興味のあるかたはぜひ!


【メモ】造石山寺の別当だった「安都雄足」という人物は、続日本紀などにはまったく登場しないものの、正倉院文書には何度も名前が見られるこの世界の有名人なのだとか。写経所の舎人だったり、越前の国に赴任したり、造東大寺司の主典、法華寺金堂の造営の別当などと出世しながら、個人的な経済活動(私出挙=高利貸し)もやっていたりしたとか。藤原仲麻呂に重用されたものの、滅びたあとは記録から見えなくなるそうです。とても興味深いので、また詳しく調べてみます!


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