孤鷹の天 (徳間文庫)
平城京にあった学問所・大学寮が舞台。歴史小説家・澤田瞳子さんのデビュー作!
徳間書店 (2013-09-06)
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歴史小説家・澤田瞳子さんのデビュー作。奈良時代の平城京にあった学問所・大学寮を舞台としています。この時代は資料が極端に少なくて書きづらいように思えますが、その様子を活き活きと描いています。興奮しました!
「内容紹介」より
先日、平城宮跡で開催された澤田瞳子さんのトークショーに参加してきたのですが、恥ずかしながら『孤鷹の天』は読んでおらず、慌てて読み始めました。とはいえ、上下巻で600ページを超えるボリュームなので、終わってからようやく読み終えました(笑)
澤田先生は、「人を描くというよりも、人を通して時代のシステムを描きたい」ということをおっしゃられていました。奈良時代というのは、まさに社会のシステムが構築された最初の時代です。奈良時代のお役人と学生たちの姿がリアルに描かれていたのも納得でした。
私自身、以前に弘法大師空海の足跡をたどった際に、若き日の空海が通った大学寮について調べました。しかし、それについて触れられた資料などはほぼ見当たらず、その様子を想像することすらできませんでした。その描写には小説的な部分も多々あるものの、かなりリアルに感じられましたし、さすがとしか言いようがありません。
また、藤原仲麻呂の乱の当時の雰囲気も、しっかりと描かれています。称徳天皇×藤原仲麻呂の対立は、同時に“仏教×儒教”の対立でもあります。私などは単純に(道鏡の評価はともかく)仏教が興隆した時代として考えていましたが、儒教などを学ぶ大学寮は仲麻呂に近く、天皇派とは対立状態にあったと描かれています。言われてみれば確かに。
後半には、小説的なフィクションとして、また別の戦闘シーンなども描かれます。一般的にはあまり人気のない渋い時代を舞台としていますが、エンターテインメント作品として成立していますね。古代好きな方はぜひ手にとって見てください。
余談ですが、澤田瞳子さんのトークショーでは「資料が少ない時代の方が書きやすいです」とも。「古代をテーマにした作品はずっと書き続けたい」「遡っても壬申の乱までかな?」などともおっしゃってましたので、これからも期待させていただきます!