![](http://small-life.com/images/logo/menu/120-120_entry.png)
龍華記
澤田瞳子さんの「南都焼討」がテーマの歴史小説。意外な展開に引き込まれます!
歴史小説家・澤田瞳子さんが、平家によって興福寺や東大寺が火の海に包まれた「南都焼討」を題材に描いた作品。南都焼討で、または平家滅亡でエンディングを迎えるような展開なのかと勝手に想像していましたが、完全に裏切られました。すごい構成ですね!
南都焼討──平家の業火が生む、憎しみと復讐。著者渾身の歴史小説。
高貴な生まれながら、興福寺の僧兵に身を置く、範長。
興福寺を守る使命を背負う範長の従兄弟、信円。
そして、南都焼討からの復興に奔走する仏師、運慶。
時は、平家が繁栄を極める平安末期。高貴な出自でありながら、悪僧(僧兵)として南都興福寺に身を置く範長は、都からやってくるという国検非違使別当らに危惧をいだいていた。検非違使が来るということは、興福寺がある南都をも、平家が支配するという目論みだからだ。検非違使の南都入りを阻止するため、仲間の僧兵たちとともに、般若坂へ向かう範長。だが、検非違使らとの小競り合いが思わぬ乱戦となってしまった。激しい戦いの最中、検非違使別当を殺めた範長は、己の犯した罪の大きさをまだ知らなかった──平家が南都を火の海にし、人々を憎しみの連鎖に巻き込もうとすることを。
「内容紹介」より
南都焼討の日の描写は、第一章で終わります。それ以降は、灰燼と化した南都の復興や、そこで繰り広げられる人間ドラマが描かれます。この視点自体が新鮮でした。
人々を救うべきお寺に籍を置きながら血も流す「僧兵」自体が、かなり矛盾した存在ですが、その生活ぶりがいきいきと描かれているのもいいですね。また、運慶など南都復興で活躍した仏師たちも登場し、仏師同志のいざこざなども含め、リアルに描かれます。
物語を読み進めても、どんな結末を迎えるのかまったく読めませんでしたが、なかなか考えさせられる展開でした。意外性もあって、私はこの結末は好きです!ぜひ驚いてみてください!