2020-02-13

彼岸の図書館: ぼくたちの「移住」のかたち

東吉野村の私設図書館オーナーご夫妻の移住生活。自分の居場所について考えさせられる良書です

彼岸の図書館: ぼくたちの「移住」のかたち
青木 真兵 青木 海青子
夕書房
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奈良県の山間部、東吉野村にある「人文系私設図書館 Lucha Libro(ルチャ・リブロ)」。オーナーご夫妻である青木真兵さん、海青子さんと、多彩なゲストの方々との対話を中心に、地方移住や人口減少、自分たちの居場所などについて考えさせられる一冊。

ルチャ・リブロさんにはまだお邪魔したことはなかったものの、その活動は興味深く遠目から眺めていました。小難しい内容なのでは……と、少し及び腰になりながら手に取りましたが、これからの地方に、また私たち個々人に起こりうる現象についての気づきがあり、読後は付箋紙だらけでした(笑)



命からがらたどり着いた奈良県東吉野村でぼくたちが始めたのは、自宅を図書館として開くことだった――「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」という「実験」のはじまりとこれから。

青木夫妻が移住を決意してから「ルチャ・リブロ」を立ち上げ、「土着人類学研究会」を開催しながら、現代社会の価値観に縛られない「異界」としての知の拠点を構築していくまでの「社会実験」の様子を、12の対話とエッセイで綴る、かつてない「闘う移住本」です。

「内容紹介」より一部抜粋


対談するお相手は、思想家の内田樹さん、東吉野村でコワーキングスペースなどを運営する合同会社オフィスキャンプ代表・坂本大祐さんなど12名。ご夫妻のエッセイ的な文章などもあり、肩肘張っていない言葉たちが読み手に染み込んできます。

詳しくは本書を手にとってご確認いただきたいのですが、中でも内田樹さんの言葉は重みがあり、それでいて分かりやすい。さすがですね。本書で心に触れた部分を個人的なメモ代わりに書き出しておきます。



●内田樹さん『おそらくこれから国は「里山の居住不能化」戦略というかたちで地方の切り捨てを進めてゆく。前にも言ったけれど、人口減と高齢化という状況でなお経済成長しようと思うなら、もう都市部に人口を集中させるしかないんだから。首都圏の狭いエリアに人口を集めれば、三十年、五十年後に人口が六〇〇〇万人、七〇〇〇万人というところまで減っても、なんとか経済は回せる。でも、それは首都圏以外の地域にこれまで投じていた行政コストをばっさり切り捨てるという形でしか実現できない。
別に成長なんかしなくていいから、みんなで幸せに暮らしましょう、というのなら全体に等しく資源を分配するということになるんだろうけれども、右肩上がりの経済成長を続けようと本気で思うなら、地方の「無住地化」以外に選択肢はない。』

彼岸の図書館 P135より



●内田樹さん『(対談相手の青木さんに対して)とにかく、君自身が自分の生き方を楽しんで、ニコニコしているというのが、いちばんたいせつなアピールなんだよ。こわばった顔をして、額に青筋立てながら「地方創生、頑張ろう!」とか言ってみてもダメなんだ。誰も来ない。青木くんの任務はとにかく機嫌良くいること。機嫌良くいれば人が集まってくるんだから。』

彼岸の図書館 P146より



●神吉さん『東さんって仕事と生活が不可分みたいな感じですよね?』
●東さん(耕さない農耕民)『不可分になればいいとは思うんですけど、現状では嫌々働いています。』
●青木さん『その「働く」は、お金を稼ぐってことだよね?」
●東さん『そうですね。嫌々ながら塾講師とか家庭教師とか材木屋とかして食ってます。米を作ってるだけでは食っていけない時代ですからね。主食作ってるのに生きていかれへんというのは不思議な話ですけど、「食っていく」っていう言葉の意味が違う。本当に「食べる」だけやったら今でもいける。だから今のところ、ぼくは仕事と稼ぐことが完全に分かれてますね。米づくりは働くことですけど、お金を稼げる仕事ではない。内山節が、昔の山里で暮らす人たちは「仕事」と「稼ぎ」を分けて考えていたって書いてたんですけど、ぼくも同じです。分けているぶん、山の仕事の純度を保つことができている。山の仕事で変に稼いでしまうと、余計なこともせなあかんじゃないですか。』

彼岸の図書館 P167より



●青木さん『お金って、やっぱりすごい万能ツールだなとは思います。それまで地縁血縁の中で根回しするとか気を遣わないと達成できなかったものが、一発で手に入ってしまうんだから。すごく全能感があって自由を感じるわけですが、お金を前提に社会が組み立てられてしまうと、万能ツールを持たない人は生きられなくなってしまうんですよね。』

●野村俊介さん(茶園経営)『これからの格差社会では、その万能ツールを過分に手にしているごく一部の人と手にできない多くの人とに分かれていきますからね。もちろん、お金で全部解決できる世界を享受できる人がいてもいいんだけど、ほとんどの人がそこに入れないのなら、面倒くさいながらも貨幣を介さない良さを楽しんで生きていけばいいんじゃないか。』

彼岸の図書館 P246~247より


人文系私設図書館 Lucha Libro(ルチャ・リブロ)
●版元のページ│彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち/青木真兵・海青子 | 夕書房 seki shobo


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