東大寺のなりたち (岩波新書)
東大寺前史からの歴史を平易に解説。知らなかった事柄も多く、もう一度読み直したい良書です!
東大寺の森本公誠長老のご著書。華厳宗大本山であり、奈良の大仏さまのおわす東大寺が、どのような経緯で創建され、どのような歴史を経てきたのかをわかりやすく解説されています。とくに東大寺となる前の解説が興味深かったです。
「内容紹介」より
第一章:東大寺前史を考える
第二章:責めは予一人にあり─聖武天皇の政治観
第三章:宗教共同体として
第四章:盧舎那大仏を世界に
第五章:政争のはざまで
第六章:新たな天皇大権の確立
第一章では東大寺の前史、山房・金鍾寺・福寿寺・大養徳国金光明寺などと呼ばれていた時代から、東大寺へと発展していく様子について語られています。この辺りは一般的な本ではほんの短い描写で片付けられてしまうことも多いため、初めて知った事実が多数ありました。
第二章と三章は、聖武天皇の思想について。盧舎那大仏の造立にこだわり政治を顧みなかった……という見方への疑問を呈しています。また、班田収授法や墾田永年私財法など、当時の政策と東大寺の関連を交えて解説されており、これも参考になります。
第四章の盧舎那大仏の開眼供養会の記述などは、あらためて詳細に解説されると感動がさらに増します。4月9日の開眼供養会に際して、聖武天皇と光明皇后は4月4日には平城京を発って東大寺へ行幸していたとか。わずかな距離ですから、当日でも間に合いそうなものですが、待ちきれなかったんでしょうか。愛らしいですね(笑)
第五章と六章は、藤原仲麻呂の乱や藤原種継暗殺事件など、奈良時代末期の政治的な動きが東大寺へ与えた影響について。廃された早良親王が東大寺と深い関わりがあったことなど、東大寺目線で時代を見ると、また違った発見がありますね。
855年に大仏さまの頭部が落下、861年に営まれた開眼供養のシーンで、本書は終わります。読み終わる頃には、付箋紙でいっぱいになっていたほど、知らなかった東大寺の歴史がたくさん見られました。おすすめです!