
怨霊とは何か - 菅原道真・平将門・崇徳院 (中公新書)
中世の人々にとって怨霊とはどういう存在だったのかをわかりやすく
平安時代以降、貴族たちを中心に日本中を恐怖に陥れた、菅原道真・平将門・崇徳院という三名の怨霊について、その経緯や騒動の内容などを記した一冊。中世の人々にとって怨霊とはどういう存在だったのか、わかりやすく解説されています。
この方のご著書は『跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史 (歴史文化ライブラリー)』を読んでいますが、そちらもかなり面白かったです。本書では、そこから長屋王や早良親王などは除外し、新書用にわかりやすく書き下ろしています。
説明文:「怨霊とは死後に落ち着くところのない霊魂である。古来、日本では怨霊が憑依することによって、個人的な祟りにとどまらず、疫病や天変地異など社会に甚大な被害がもたらされると信じられてきた。三大怨霊と称される菅原道真、平将門、崇徳院は死後、いかに人々を恐怖に陥れたのか。そして、どのように鎮魂がなされたのか。霊魂の存在から説き起こし、怨霊の誕生とその終焉、さらに近代の霊魂文化まで概観する。」
現代では、死者の魂は天国へ行く、星になるなどといわれますが、これはキリスト教の影響があるのだとか。それ以前は魂は山へ行くなど、人間と近い部分にとどまり、死と生はより近い存在でした。だからこそ、恨みを抱えて死を賜ったものは、人間に害をなす怨霊となると信じられていました。
取り上げられている三名は、まさに「日本三大怨霊」というべき方たちで、当時の人々の恐れ方は現代人からみると滑稽なほどです。しかし、それこそが当時の人たちのリアルですから、とても興味深いですね。
しかも、それは決して遠い過去のものではなく、18世紀にも「天皇家から武家に政権が移ったままなのは、保元の乱で流された崇徳天皇の怨霊が原因ではないか」という意見が出て、京都の白峯宮へと遷されています。
日本人と死者の関わり方の一端が知れる、とても興味深い内容でした。興味のあるかたはぜひ。