海街diary 1 蝉時雨のやむ頃
鎌倉を舞台にした家族の喪失と再生の漫画作品。四姉妹の距離感が絶妙な愛すべき物語です
『BANANA FISH』などで知られる漫画家・吉田秋生さんの作品。レンタルコミックで4巻まで読了しました(まだ連載は続いています)。一度読み終わった直後に、もう一度最初から読みなおしてしまったほどの素晴らしさでした!
鎌倉に住む香田三姉妹は、幼い頃に両親が離婚し、父と離れ離れになったばかりではなく、母親も家を出て没交渉になっているという、複雑な家庭に育ちました。しっかりものの長女(30歳)、酒飲みの次女、変わり者の三女のもとへ、遠方で再々婚していた父の訃報が届き、異母妹すず(13歳)と対面。後に鎌倉での同居生活が始まります。すずが通う学校とサッカークラブの話、チームメイトの難病や淡い恋などが語られるとともに、三姉妹それぞれの仕事や恋愛模様が描かれています。
全体的に淡々と冷静さが感じられるトーンで、四姉妹の生活を丁寧に描き、上質な映画を観ているようですね。設定からして昭和初期ごろの映画のようでもあります。
それぞれの性格付けがしっかりしていて、遠くから見守りたくなるような愛着すら感じさせます。ダメな大人も何人も登場しますが、そんな人たちまで愛したくなるほどの優しく愛おしい物語ですね。また、古都・鎌倉を舞台にしているのも、イメージが膨らむ大きな要因になっています。
個人的に、吉田秋生さんの作品はデビュー当時から大好きでした。残念ながら『BANANA FISH』の途中までしか読めていませんが、初期のオムニバス『夢見る頃を過ぎても』や、『吉祥天女』の妖しげな雰囲気も大好きです。今でも好きな漫画ベスト10を挙げろと言われれば、間違いなく『河よりも長くゆるやかに』を入れたいと思うほどです!そんな作者さんが、何年も後にこんな素晴らしい作品を描いているなんて、ちょっと感動的でした。
決して重すぎず軽すぎず、絶妙な距離感で「家族の喪失と再生のものがたり」を描いた作品ですので、普段はあまり漫画を読まない方にもオススメです!ぜひ手にとってみてください。