火の鳥 (1) (角川文庫)
巨匠・手塚治虫さんのライフワーク。古事記や壬申の乱を下敷きにした回は特に必見です!
巨匠・手塚治虫さんのライフワークであり、未完のまま終わってしまった大作『火の鳥』。手に入りやすい文庫版は全13巻で、歴史ありSFあり、壮大なストーリーが展開しています。
「その血を飲んだ者は不死の肉体を手に入れられる」とされる火の鳥を縦軸に、それを求める人間たちの姿が、様々なタッチで描かれていきます(Wikipedia)。
説明文:「不死の・火の鳥・を軸に、人間の愛と生、死を、壮大なスケールで描く。天才手塚治虫が遺した不滅のライフワーク。各巻カラーイラストの表紙・巻頭に十六頁カラー。(赤川次郎・景山民夫・竹宮惠子他)」
火の鳥のエピソードは、黎明編、未来編、ヤマト・異形編、鳳凰編、復活・羽衣編、望郷編、乱世編(上下)、宇宙・生命編、太陽編(上中下)、ギリシャ・ローマ編とあります。時代順も舞台も前後しますし、連続性はあるもののほぼ読み切りに近い形ですので、どこから読み始めても問題ありません。
源平の合戦が出てきたり、宇宙人が出てきたり、近未来のロボットたちが出てきたりと、良くいえばバラエティー豊か、悪くいえば雑多なストーリーの集まりですが、それも面白いんですよね。さすが一時代を築いた巨匠だけのことはあると感心してしまいました。
火の鳥は図書館などに所蔵されていることも多いですから、1巻から読みはじめるといいでしょう。また、私のように神話や古代史がお好きな方であれば、以下のものから読み始めても全く問題ありません。
●黎明編(文庫本1巻) -- 3世紀の日本。ヤマタイ国とクマソ国の争いを舞台に、運命に翻弄される人々の姿を描く。卑弥呼が火の鳥の血を欲したのが争いの原因に。
●ヤマト編(文庫本3巻) -- 古墳時代の日本。主人公のヤマト国の王子(ヤマトタケルがモデル)と、ヒロインのクマソ国の酋長・川上タケルの妹の哀しい愛の物語。
●鳳凰編(文庫本4巻) -- 奈良時代の仏師、茜丸と我王を主人公に、吉備真備や橘諸兄による奈良・東大寺の大仏建立を絡めて描いたもの
●太陽編(文庫本10巻・11巻・12巻) -- 白村江の戦いで敗れ、顔に狼の皮を被せられた百済の王族の血を引く青年が、百済救援のために派遣された将軍(阿部比羅夫)とともに日本に渡り、壬申の乱に巻き込まれてゆく。近未来のエピソードと平行して語られ、シンクロしていくのが見事です!
どれも下敷きとしたストーリーに独自の解釈を加えてあって、とても斬新ですね。特に大作となった「太陽編」は、日本古来の神々と新たに大陸からもたらされた仏教の仏たちとの争いなども描いており、切なくなります。
全部を読み通すには時間がかかりますが、それだけの価値はあります。手塚治虫さんの作品を手にしたことがない方も、ぜひ読んでみてください!