
蟲師 (1) アフタヌーンKC
精霊・妖怪に当たる「蟲」を鎮める蟲師を描いた大人のファンタジー!※グロくありません!
講談社漫画賞を受賞し、後にアニメ化・映画化もされた人気コミックス(Wikipedia)。全10巻です。タイトルからして「蟲(むし)」なんて言葉が入るため、グロい昆虫がたくさん出てきて大乱闘を繰り広げる作品なのかと思っていましたが、まったく違います。大人が読むべき不思議なファンタジーなんですね。
説明文:「第29回(2005年) 講談社漫画賞受賞。動物とも植物とも異なる、生命の原生体たるモノ──”蟲”。それらは時に人智を超えた現象を呼び、そしてヒトは初めてその妖しき存在を知る。ヒトと蟲とを繋ぐ存在、それが”蟲師”と呼ばれる者──。」
本作の「蟲」とは、いわゆる精霊・妖怪などにあたるもの。主人公のギンコは、普通の人には見えない蟲が見えるため、それを鎮めたり採集したりする旅の生活を送っています。一話完結の短編で構成され、色んな土地の色んな人々、そして蟲についてのエピソードが登場します。
その内容は、例えば神かくしであったり、狐憑きであったり、失語症に見える症状だったりさまざまですが、それらを引き起こしているのが、眼に見えないながらも至るところに生息している蟲たちなんですね。
私はこの作品を読んで、日本最古の説話集とされる「日本霊異記」(Wikipedia)に近いものを感じました。猛威を振るう自然、そこにおわす聖なるものが、人間の生活に身近にあった時代の雰囲気を感じます。
現実世界を描いたものではありませんが、主人公は洋装ですが、その他の登場人物は和装で描かれており、時代的なイメージとしては江戸時代末期ごろの雰囲気を感じさせるのも、物語の世界観にあっていていいですね。
個人的に好きな回をいくつか挙げてみます。
●重い実(おもいみ)--「天災に見舞われるたび、村人1人の命と引き換えに必ず豊作になる」という奇妙な村の話
●沖つ宮(おきつみや)--沖の島に、「生きているうちに沈んだ者を、望月の晩、命の種へ変えて吐き出す」という言い伝えがあり、吐き出された種を飲んだ女は、沈んだ命を生みなおすことができる
●天辺の糸(てんぺんのいと)--天から垂れた白い糸を掴んだ娘は、そのまま天高く虚空に消えて…
などなど。どれも味わい深くて、不思議な読後感が残る作品ばかりです。レンタルで借りてきましたが、いつか買い直して手元に置きたいと思いましたし、コミックで機会があればアニメ版もぜひ観てみたいですね。
とにかく、ほんの少しだけ蟲の姿が描かれることはありますが、気持ち悪くもグロテスクでもありません。そういうものが苦手だという方こそ夢中になれそうなお話ですから、いい大人の方にこそ読んで欲しいですね。オススメです!