
伝え方が9割
人の心に「刺さる言葉」の作り方。具体的なメソッドが紹介されていて実践的。必読です!
話題のビジネス書。著者は、博報堂でコピーライターとして活躍し(アジエンスのシリーズなどを手がけた方)、世界的に高い評価を受け、作詞家・大学の非常勤講師なども勤めていらっしゃるとか。そんな肩書きを抜きにしても、読んだ人間の胸に刺さるコピーライティングのコツが簡潔に示してあり、本当に面白かったです!
私もテキストを書く人間ですから、短いキャッチを作る楽しさと難しさは多少は経験しています。それを読んだ人間の欲を刺激してみたり、時には不安を再認識させてみたりと、言葉で人の心を動かす技術はいろいろとありますが、それらのテクニックが体系化されて、誰もが応用可能なメソッドが示してある点でこの本は優れています。
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説明文:「なぜ伝え方で結果が変わるのでしょう?
たとえば、好きな人がいるとします。でもその人は、あなたのことに少しも興味がないとき、何と言ってデートに誘いますか?
「デートしてください」
こう言ってみました。あなたのピュアな気持ちそのままですね。これだと断られる確率が高いですよね。ですが、コトバ次第で結果を変えることかができます。
「驚くほど旨いパスタの店があるのだけど、行かない?」
こう言ってみました。相手は行っていいかも、と思う確率がぐんと上がるコトバです。どちらにしても、実は「デートしませんか?」という同じ内容なのです。同じ内容なのに、伝え方で結果が変わってしまう。これは驚くべきことと思うかもしれません。ですが、あなたは今までの人生で、「伝え方で変わるのでは?」と、うすうす気づいているのではないでしょうか。」
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特に面白いのは、第2章の『「ノー」を「イエス」に変える技術」です。それぞれの言葉が刺さるように作られていますし、その発想方法が明かされているのもいいですね。ここでは7つの切り口が紹介されていますが、そのいくつかを簡単に引用しておきます。
●相手の好きなこと
× (ファストフード店にて)「4分ほどお待ちいただけますか?」
○ 「できたてをご用意します。4分ほどお待ちいただけますか?」
●嫌いなこと回避
× 「芝生に入らないで」
○ 「芝生に入ると、農薬の匂いがつきます」
× 「チカンに注意」
○ 「住民の皆さまのご協力で、チカンを逮捕できました。ありがとうございます。」
●認められたい欲
× 「残業お願いできる?」
○ 「きみの企画書が刺さるんだよ。お願いできない?」
●チームワーク化
× (お子さんに対して)「勉強しなさい」
○ 「一緒に勉強しよう」(親は隣で読書などをする)
ほんのちょっとした言い回しで、効果はガラリと変わるでしょう。いつの頃からか、コンビニのトイレで「トイレをキレイに使ってね」というお願いではなく、「トイレをキレイに使っていただき、ありがとうございます」という言い方に変わったのも、こうした効果があるからでしょう。
この他にも、第3章の『「強い言葉」を作る技術』なども実践的ですね。決してすべてが目新しいテクニックではありませんが、文章を書く人間であれば一度読んでおいても損はないでしょう。さすがは話題の一冊だけありますね。
なお、切り抜いて持ち歩ける「手帳にはさめる超短縮版『伝え方が9割』」というページも、巻頭についています。本を持ち歩かなくても、ノートにメモらなくても済みますので、面白いアイディアです。今回は図書館で借りましたが、買い直して手元に置いておこうと思います。