画題で読み解く日本の絵画
寒山拾得、竹林の七賢など、日本絵画によく描かれる画題を解説。分かりやすく面白い!
日本絵画に描かれることの多い50の画題について、そのテーマや背景などを分かりやすく解説した一冊。
何人もの絵師が手がけ、日本画でよく見かける特定の画題がありますが、それがどのような人物だったのか、実在しているのか空想の人物なのか、どんなイメージが込められているのかなど、目に見える以上のものを読み解く手助けをしてくれる内容です。
西洋絵画に比べて、日本画は身近な画題が多いだけに、何となく理解できたような気分になってしまいがちですが、時代によってその図が意味するところは大きく変化しています。現代の人間が、描かれた当時の時代性を少しでも正確に理解できるようになるのですから楽しいですね。
説明文:「なぞの2人組、エビをつまむ和尚、鯉にのる男、桃をもつ美女…案外わかりやすい日本美術の世界へようこそ!」
美術史の視点から名画への理解を助けてくれる『この絵、どこがすごいの?』(紹介記事)、西洋絵画に描かれたのアイテムから世界観を読み解く『アイテムで読み解く西洋名画』(紹介記事)など。
観たままの絵画世界のみではなく、その絵が描かれた時代性や文化的背景など、美術初心者に分かりやすく解説してくれる著作を発表している、美術ライターの佐藤晃子さんのご著書で、本書もその延長線上にあります。
取り上げているのは、テーマに沿った50の画題です。分かりやすいイラストを多めに用い、実際の絵画作品の画像はやや少なめです。
●基本の画題 寒山・拾得、布袋、琴棋書画、釈迦、達磨など
●中国の画題 蝦蟇・鉄拐、竹林の七賢、李白、呂洞賓など
●日本の画題 小野小町、大石良雄、西行、菅原道真など
●名所の画題 洛中洛外図、天橋立、富士山など
●動物の画題 猿、鴛鴦(おしどり)、鯉、竜虎など
ボサボサ髪で不気味な笑みを浮かべる男の二人組なら「寒山・拾得(かんざん・じっとく)」。曾我蕭白の作品などが有名です。彼らは中国の唐時代の隠者で、世俗から超越した人物として好まれました。
また、日本の「曽我物語」は有名な仇討ちのお話ですし、源頼光の鬼退治・土蜘蛛退治、伊勢物語や源氏物語の有名なシーンなど、たくさんの画家によって何度も描かれています。また、蓬莱山や武蔵野といった土地、猿や鹿といった動物など、それを画題とすることで、その当時の人々が共通して持っていたイメージを呼び起こしています。
こうした画題の背景は、知らなければ知らないでまったく問題はありません。「美しい」「気味悪い」など、観たそのままを楽しむのも美術館賞でしょう。しかし、画題そのものにも作者の意図があるということに気づくと、より楽しさは増してきます。
絵画鑑賞の初級者から中級者へ移るくらいの方にオススメしたい内容でした!