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北斎娘・応為栄女集
映画『百日紅』でも描かれた葛飾北斎の娘・お栄の作品集。夜の闇の描き方が見事です!
葛飾北斎の娘で、女浮世絵師として活躍した葛飾応為(お栄)の作品を紹介した一冊。発売は2015年4月。この親子を描いた杉浦日向子さんの漫画を原作とした映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』の公開に合わせて発売されたものでしょう。
お栄さんは、夜闇のぼやっと怪しげな光の世界を描いた作品に特徴があり、真筆と確認できる作品は少ないものの、父・北斎の落款を入れて自分の絵画を売っていたこともあるほど、確かな技術を持っていたとされます。
説明文:「稀代の浮世絵師葛飾北斎娘にして女浮世絵師葛飾応為。近年彼女が残した色彩感覚や濃淡陰影に特色がある浮世絵が注目を集めている。その作風は妖艶にして繊細、怜悧にして大胆で見るものを魅了してやまない。現在確認できる作品数は多くないが、本書では可能な限り作品を集める。その上で遺された史資料を駆使・検証し、応為の画業・生涯を探る。また、父北斎晩年には応為は父に寄り添い父子合作の可能性が指摘されている。本書は初紹介作品・特別掲載作品も含め、各作品の来歴を抑えると共に、父子の作風の類似点・相違点に注目し、新たな研究視点を提示する。」
作品点数は少ないものの、さまざまな画風を駆使した方で、夜の暗がりが印象的な「吉原格子先之図」「夜桜美人図」などは秀逸ですね。どこかモダンさすら感じさせる作品です。
また、北斎が描き(応為が描いた可能性も高い)、シーボルトが本国へ持ち帰ったとされる「端午の節句図」「商家図」「花見図」なども面白いですね。水彩画で落款も入っていませんが、本書ではその背景などについても詳しく言及されています。
作品の解説とともに、お栄さんの人となりを紹介する文章も興味深かったです。北斎の娘らしくかなりの変わり者であったとされ、絵師のもとに嫁いだあとも嫁らしいことは一切せず、すぐに離縁されたりしたとか。容姿については、顔がかなり四角張っていて、北斎から「アゴ」と呼ばれていた…など、あまり名誉ではないことが多く伝わっています(笑)
かなり興味深い絵師ですので、これからも作品が発見されたりすることに期待したいと思います。