2015-09-27
かわいい絵巻
絵巻物の「かわいい」を集めた一冊。真剣なのにゆるいものなど、日本人の伝統ですね!
鳥獣戯画や信貴山縁起絵巻などを筆頭に、古くから日本に伝わる絵巻物の中から、特に「かわいい」と思われるものを紹介していく、とても親しみやすい内容です。
こうした美術作品をかわいいの視点から捉えることでより身近にする、という試みは最近よく見かけますが、やはり楽しいですね。日本の美術作品のゆるさは際立っていて、あらためて現代の日本人の美意識と通じるところがあると実感します。
説明文:「有名な「鳥獣戯画」をはじめ、お姫様や動物たちが活躍する「かわいい」絵巻44点を若手学芸員が楽しく紹介。日本美術がぐっと身近になります。」
本書では「物語る絵だからかわいい」「想像力がかわいい」「小さいがかわいい」の3章にわけて、44点の絵巻物を紹介しています。その中には、東寺に伝わる「弘法大師行状絵巻」のように、しっかりと制作されたものの中に、幼いころの空海が足を投げ出して無邪気に眠る姿が描かれていたりして、現代にも通じるかわいさがあります。
また、白黒で描かれたクールでかわいい「稚児今参絵巻」「豊明絵草紙」や、ヘタウマの局地ともいうべき「浦島絵巻」など。ひと口に言い表せないほど多様なタイプの「かわいい」が紹介されています。この本で特に見識が深まったりもしないとは思いますが、気軽に楽しめる良書ですね。日本画の入門編として意外といいかもしれません。