すぐわかる日本の神像―あらわれた神々のすがたを読み解く
彫像や絵画などから見る「神像」のすべて。神と日本人、神と仏の関係が伝わります
神の姿を木彫や絵画などで表した「神像」について、総合的に俯瞰できる一冊。タイトルに「すぐわかる」とあるように、とても分かりやすい内容ですし、図版も豊富で決して初心者専用とは言えないだけの読み応えでした。神像系の本は、『神像の美―すがたなきものの、かたち。(別冊太陽)』『日本の神々 (とんぼの本)』などを読んできましたが、いずれとも遜色のない内容ですね。
冒頭から神像についての画像の連続で引きこまれます。第五章まであり、「僧侶姿の神々」「ヒコ神とヒメ神」「共存する神と仏」「神と仏が習合した形」「庶民に愛された神々」となってます。第一章~二章までは彫像作品を、それ以降は神仏習合が著しい曼荼羅絵なども含めて、神の姿がどうのように具現化されたのかが分かります。
神像は、仏像の技術で神さまを彫ったり描いたりしたものと考えられがちですが、もともとの成り立ちからして全く別のものだったとか。仏像やイエス像などが偶像として姿を模して作られるのに対して、神像は神が降臨して宿る「依代(よりしろ)」であり、それ自体がご神体でした。このため、その姿を完璧に写す必要はなく、荒々しいノミ跡を残したり、丸太にほんの少し手を加えるだけにとどめたりする、一見稚拙とも見える表現は、霊木が神の姿となる途中の段階を描いたとも考えられているそうです。
後半の図画をメインに紹介するコーナーも面白いですね。春日大社の俯瞰図の上に仏が浮かぶように描かれる「春日社寺曼荼羅」など、神と仏が区別なく拝まれている様子が伝わってきますし、同様のものは大きな社寺で見られたようです。
神像や神仏習合について興味のある方は、手にとって損はない内容でしょう。お値段1,800円と決してお安くはありませんが、それだけの価値がある一冊だと思います!