ボクは坊さん。
映画化された若いお坊さんのエッセイ本。初々しく新鮮。良書です!
映画化が決定して話題となっている、若いお坊さんのエッセイ本。筆者さんは、祖父であった先代住職の後を受けて、24歳で四国八十八ヶ所霊場の第五十七番札所・栄福寺の住職に就任した方。その活動や感じたことなどを、糸井重里さんの超人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」上で「坊さん――57番札所24歳住職7転8起の日々――」として連載し、本書はその内容をまとめたものだとか。
映画化うんぬんは別にして、現代の若手僧侶の日常や意思が伝わってくる内容で、とても興味深かったです。最後まで飽きること無く、一気に読了しました!
説明文:「仏教は「坊さん」だけが独占するには、あまりにもったいない。24歳、突然住職に。笑いあり、涙あり、不思議感溢れる坊さんワールド。」
本書では、著者さんが坊さんになるまで、突然住職になってから、悩み、これからの仏教についてなど、平易な文体で語られています。宗派は高野山真言宗ですが、四国八十八ヶ所霊場の札所というお寺ですから、他の一般的なところとはだいぶ様子が違うのかもしれませんが、素人目に見るととても不思議で面白いですね。
高野山大学在学中のエピソードや、いいバリカンを購入する話、草野球チームの背番号を自身のお寺の札所番号と同じにする話など、小さなネタも効いてます。また、初めて檀家さんの葬儀を執り行う際の緊張感、戒名をつける際の思考の流れ(故人の人柄からイメージしていくのだとか。当たり前だけどリアルです)など、具体的には知らなかったこともたくさん含まれていました。
そして、こうした日常のエッセイ的な文章の中に、若手僧侶の新たな宗教観のような文言も散りばめられています。人々の生活から仏教色が薄れていき、地方のお寺の衰退が叫ばれる中、今からお寺の住職となる方たちはどんな覚悟を持っているのか。まだ夢も希望も失っていませんし、しっかりとした未来像も見えているようです。
「(大般若経の転読に加わって)今に生きる人たちの”信仰”が、確固とした確信をもたない曖昧なものであっても、決して軽く見ることのできない大切ななにかを、たしかに運んできていると感じていた。そして同時に、どんな”自分”をそこに加えていくことができるのか、そんなことを考えていた。(中略)仏教には「いいもの」がたくさん残っている。そこに耳を澄ませながらも「続き」を語ることだって、それと同じくらい大事なことだと思う。仏教は「宗教」であるかぎり、古い形を伝えるだけのものではなく、本質的で現在進行形のライフスタイルのはずだ。」(P85)
「宗教を若いエネルギーを抱えたまま切実なものとして考えてみたい、という思いもあった。見るからに穏やかな老僧になって「私もこの歳になってくると、欲望を抑えることの重要さがやっとわかってきました」とにこやかに微笑むのも、ひとつの僧侶の姿かもしれないけど、僕にとっての宗教はもっとリアルで、生々しい生きる術であってほしかった。」(P159)
続編に当たる『坊さん、父になる。』も発売になったとか。必ず読んでみたいと思います!