2014-10-05

体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)

金峯山寺・田中執行長が「修験道」を分かりやすく解説した一冊。一気に読了しました!

修験道の聖地である吉野山に建つ、世界遺産寺院「金峯山寺」。その執行長でもある田中利典さんが、「修験道」の歴史や山伏の修行、現代の生活への活かし方など、一般人にも分かりやすく解説したご著書です。

私なども、修験道の創始者「役行者」の生まれ故郷(御所市)や修行の地(葛城山)の近くに住みながら、詳しいことはまったく知りませんでしたが、本書はとても読みやすく、最後まで引き込まれるように読了しました。


説明文:「富士登山のルーツはここにあった!心の乱れがすーっと消える。吉野・金峯山寺の修験者が伝える生き抜くための智慧。」


修験道(しゅげんどう)とは、神仏和合の山の宗教であり、大自然と一体になった日本らしい宗教です。他の仏教の仏さまはみなインドや中国から来ているのに比べて、修験道のご本尊の蔵王権現さまは純日本製というのも特徴的です。開祖とされる役行者も、あとの時代にその言葉がまとめられたりしたものの、著作などは残しておらず、当初から「自らの身体を使って修行して験を得る」ことを重視していました。

少し前までは、優婆塞(うばそく。在家の宗教者)が中心となり、山伏は日本人の身近な存在でした。しかし、明治維新後の神仏分離令により大ダメージを受け、1872年には「修験道廃止令」まで出されます。この時に、17万人もの山伏が職を失ったとされています。吉野奥千本の安禅寺など多くの寺院が廃絶し、本来は一体だった金峯山寺と大峯山寺(山上本堂)が別の寺院となったりしました。

第一章で修験道の歴史などが解説され、第二章の「山伏ってなにするの?」では、「山の行と里の行」「山修行の実感と体験」「キーワードでみる山伏の精神」という章立てで、山伏の修行方法や霊験について語られています。

山伏たちは、山の厳しい修行で行力・法力を高め、里で加持祈祷を行うなど、人々の悩みを解決していくのです。

こうした山の修行は、一般の方たちにも門戸が開かれています。本書では、あえて非日常の「ハレ」を体験するための山修行まで勧められています。日帰りや一泊二日で体験できるものもあれば、1週間も山中を歩き続ける厳しい修行もあり、行の体験者の方のリアルな声が紹介されています。

山の中をひたすら歩き続けることで得られるものは大きいでしょう。近年の登山ブームなどでもその効能に気付いた方も多いでしょうし、それが集団で霊地を歩くとなると、また個人での山歩きとはまったく違う、特別な体験になることは間違いありません。私もいつかは……と思っています。

第三章「現代社会と修験の心」では、「自然現象による気づき」「ニッポンの連続と断裂」「脱・グローバル社会と修験道ルネッサンス」など、東日本大震災にも触れ、これからの修験道の有り様や、日本人の行く末の話題なども語られています。

修験道を分かりやすく、幅広く概略した内容のため、短文では紹介しきれませんが、山伏や修験道、吉野山、山岳修行などのキーワードに興味がある方は、ぜひご一読ください。とても読みやすく、最適の入門書になってくれるでしょう。

最後に、役行者のものとして紹介されていた言葉をメモ代わりに。

「身の苦によって心乱れざれば証果(しょうか)おのずから至る」
(身体にどれだけ苦痛があっても、心が乱れなければ、悟りはおのずから得られる)


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