
霊能動物館
社寺に祀られる動物たちをオカルト的・民俗学的に考察。知らない歴史がいっぱいで面白い!
古くから身近に存在していた動物たち。寺院や神社の中にも普通に祀られ始めたのはいつから?どんな理由があるのか?
作家・加門七海さんが、そんな動物たちの霊性について、オカルト的、民俗学的、文献学的に考察した一冊。図書館の新刊棚に並んでいて偶然手にとっただけでしたが、興味深い考察の連続で、ぐっと引きこまれました!
説明文:「狼、狐、猫、狸、馬…etc.日本に古くから存在する彼らの起源に、霊能的観点から迫る。あなたが見た動物は―妖怪?それとも精霊?加門七海が辿る、数々の史料や体験談に残された動物達の足跡。」
本書で取り上げられる動物たちは、狼・狐・竜蛇・狸・鳥・憑きもの・猫・人魚。身近に存在するかどうかは別として、いずれも社寺ではよくある造形として取り込まれています。こうした行為はずっと古くから続いているような思い込みがありますが、じつは意外と歴史の浅いものなのだとか。
例えば、全国に稲荷社が存在し、そこで祀られている「きつね」。
日本書紀などから狐に関する記述はありますが(石見国で白狐が見つかったなど)、当時はまだ化けるものではなかったとか。女に化けた最初は平安時代の「日本霊異記」で、神の使いとなるのは室町時代の「十二類合戦絵巻」などから。伏見稲荷でたくさんの狐像が見られるようになるのは幕末以降のことだとか。
瑞祥や災厄を表すシンボルであった狐は、いつしか神の眷属として祀られていくようになったのです。さらに、狐が取り憑く「きつねづき」などもまことしやかに語られ、ますます怪しげな存在となっていきます。
最初の章で語られる「狼」を祀る、秩父山中の三峯神社の記述などもとても興味深いですし、狼のイメージが、犬や狐、猫などと混濁していく過程も触れられていて、とても面白いですね。
使い魔の気配を感じたとか、霊的なものを観たとか、オカルト的な記述もありますが、それを時代遅れの迷信だと笑えなくなるほど、本書で紹介される人々の言葉は重いですし、よく文献にあたっていて読み物として成立しています。
民俗学的な視点から動物を捉え直してみると、また信仰や宗教の違った面が見えてきます。とても楽しく読めましたので、興味のある方はぜひ!