2014-09-25

山伏ノート ~自然と人をつなぐ知恵を武器に~ (生きる技術! 叢書)

山伏になって聖なる山へ入ることで見つけたこと、感じたこと。色々と考えさせられます

本職はイラストレーター、出羽三山を拠点とする山伏となった著者・坂本大三郎さんが、聖なる山へ踏み入ったことで見つけたこと、感じたことを綴ったもの。なぜ山伏になったのかなど、経緯を記した著作『山伏と僕』の続編のようなもので、山伏の歴史から民俗学、哲学的な内容にまで触れており、読み応えのある内容でした。


説明文:「自然と人の中間的な存在であった山伏が、原初から寄り添ってきた社会、文化を辿ることで、もう一つの日本の姿が浮かび上がる。自然との関係性が急速に失われつつある現代から未来への新しい通路をつなぐ、立体的・山伏の文化誌。」


現代社会では、ほとんど身近に存在しなくなった山伏たち。そのルーツは「日知り」(「聖」は鎌倉時代の僧侶が言い始めた)という言葉だったとか。天体の運行を知り、暦の知識を活かして農耕や灌漑作業などの計画を立てていました。さらに、芸能に通じ、一般人が立ち入らなかった山へ入ることが出来るなど、共同体の中心から、その周辺部に普通に存在するような人々でした。

激しい山岳修行によって、超常的な験力を得た山伏もいますが、筆者自身は特に信仰に篤いということもなく、自然とはなにか?という疑問や、生きる上でのヒントを求めるため、山伏として修行し、活動しているそうです。

何度も山へ入り、山にいるカエルやヘビなどを捕まえて食べ、山で野糞をし、雨を避けながら寝る。そんな生活を行うことで見えてくることもあるのでしょう。

本書を読んで好感を持ったのは、決して単なる「自分探し」の内容ではないことです。悩みに悩んだ末に山伏となった方もいらっしゃると思いますが、そうした肩に力が入った雰囲気はなく、だからこそ普遍性を感じます。現代人が日常生活で疑問に思ったり、不安に思ったりすることのヒントを得ようとしたらこういう世界に出会った、そういう姿勢に共感できますね。

生と死、農耕と狩猟、肉食と菜食など、色んな視点から山伏の文化が語られ、やや難しい表現もありますが、歴史や概念など、とても参考になりました。奈良には吉野山を中心として山伏として活動なさっている方はたくさんいらっしゃいます。これまであまり知識はありませんでしたが、少しずつ調べていこうと思います。



【山伏ノート ~自然と人をつなぐ知恵を武器に~ (生きる技術! 叢書)】の関連記事

  • 『鳥居大図鑑』~全国57の美しい鳥居、変わった鳥居を紹介。観察・分類することの楽しさよ!~
  • 『教えて、お坊さん! 「さとり」ってなんですか』~キーワードは「さとり」。仏教の教えの奥深さと包容力が感じられる良書~
  • 『源信さん 浄土教の祖』~当麻出身の源信の絵詞伝が絵本に。奈良博の特別展の予習用にいいかも~
  • 『天平期の僧侶と天皇―僧道鏡試論』~悪評が伝わる「道鏡」について、鑑真や良弁、行基ら奈良仏教史から考察した一冊~
  • 『百寺巡礼 第一巻 奈良 (講談社文庫)』~作家・五木寛之さんの名シリーズ。奈良の古刹で色んな思いを馳せられます~
  • 『ボクは坊さん。』~映画化された若いお坊さんのエッセイ本。初々しく新鮮。良書です!~
  • 『身体と心が美しくなる禅の作法―だれでもできる一日一禅』~初心者向けの座禅入門本。栗山千明さんが登場したり、わかりやすく柔らかい内容です~
  • 『アマテラス―最高神の知られざる秘史 (学研新書)』~古代から近代まで、最高神アマテラス祀られ方や性格の変貌ぶりを追った一冊。面白い!~
  • 『霊能動物館』~社寺に祀られる動物たちをオカルト的・民俗学的に考察。知らない歴史がいっぱいで面白い!~
  • 『京都・奈良ご朱印めぐり旅乙女の寺社案内』~御朱印の掲載点数は少なめですが、参拝ガイドとして便利。お寺巡り初心者さんに役立つ一冊~
  • 『体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)』~金峯山寺・田中執行長が「修験道」を分かりやすく解説した一冊。一気に読了しました!~
  • 『山伏ノート ~自然と人をつなぐ知恵を武器に~ (生きる技術! 叢書)』~山伏になって聖なる山へ入ることで見つけたこと、感じたこと。色々と考えさせられます~


  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ